表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/76

get nervous 3

 パニック顔で下を向いた美緒の顔を、龍太郎は覗きこむ。それなりに手応えがあると思ったのは、間違いだったのだろうかと不安になってくる。こんなに悩ませるようなことなんだろうか。

「聞いていいですか」

 注意深く龍太郎の視線と絡まないように顔をあげた美緒は、混乱した顔のままである。

「つきあうってどういうことなんでしょう?このまま仲良くなったらいけない?」

 本当は、それが良いと思っていた。けれど半日一緒にいただけで、「友達からはじめる」が龍太郎にとって、難しいことだと自覚してしまった。友達と恋人は、違う。


「俺と一緒にいるのは、イヤ?」

「楽しいです。でも、具体的に『つきあう』のイメージがわからなくて」

 男とつきあったことがないのだろうか?美緒の顔には戸惑いばかりが浮かんでいる。それとも、断わる言葉を捜しているのか。

「イヤだったらイヤだって言ってくれても」

「そうじゃないの。何か定義があるのかな、と」

 定義と来たか。


 龍太郎の顔がふっと美緒に寄せられ、頬骨のあたりを唇がかすった。避ける暇も与えられず、美緒はそのまま大きく目を見開いた。

「日常的にこういうことがしたいってことです。独占権付きで」

 ずいぶん遅れて上半身を思い切り引いた美緒は、両手に顔を埋めて呻いた。本当に免疫がないのだと、考えるまでもない反応だ。

「いきなりそういうこと、する人だったんですか?」

 キスなんて、はじめてじゃない。ただ驚いただけだと自分に言い聞かす。

「そういうことする人なんです。おイヤでしょうか?」

 こうなると、ペースを掴んだほうの勝ちだ。

「イヤとかそんなんじゃなくて」

「じゃ、決定」

「決定なんですか?」

「イヤじゃないんでしょ?」

「ずるい」

「イヤじゃないって言ったでしょ?」


 上手く誘導された気がすると美緒が思っているうちに、龍太郎は空いた缶を持ってゴミ箱に向かっていた。

「ライトアップ見たら、池袋まで出て、メシにしよ」

 美緒は、頷くことしかできない。

「さっきのも試用期間のうちなんですか」

「さっきのって?」

 だから、頬へのキスだってば・・・それも、言えない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ