get nervous 2
お子様向けの乗り物には、いくつか乗った。アーケードゲームでも盛り上がった。ミラーハウスで迷子になって遊んだ。でも遊園地と言えば、やっぱり――
「一回だけ、ジェットコースターかフライングカーペットに乗らない?」
「やだっ!充分楽しいもん。乗るんなら、あたし、下で待ってる」
美緒の口調も、ずいぶんと馴染んできている。
「下で待ってられたら、俺が落ち着かないでしょ。一回だけ。そんなに激しくないヤツ」
龍太郎は小首を傾げて、こんな時しか使えない顔をする。
これはずるい。こんな顔されたら、断わるあたしが悪人じゃない!
「一回だけですよ。それ以上は身が持たない」
善は急げ、と早速乗り場に向かう龍太郎のあとを、美緒はしぶしぶついて行く。しかし龍太郎が並ぼうとした先にあるものを目に留めて、足が竦んだ。宙返りしている。
「あれは絶対にやだっ!」
すでに涙目である。龍太郎は笑いを含んだ溜息をついた。走るように歩いたり重い荷物を担いだりする姿と、その表情は全然マッチしない。ヘンな子。
「じゃ、やめときましょ。貸しにしとく」
「借りときます」
ひとしきり遊ぶと、陽が傾いてくる時間になった。クリスマスのライトアップがはじまる。
「エルドラド、行く?」
古いメリーゴーランドは上下運動しないが、暗くなりはじめた園内の中で暖かい光を放つ。アールヌーボーの装飾も美しい。嬉しそうに馬車に腰掛けた美緒の向かいに、龍太郎も腰掛ける。
「馬じゃなくていいの?」
「スカートだもん。残念」
スカートの裾から覗く膝に、思わず目が行く。視線に気がついた美緒が慌てて裾を整えて、上目になった。
「ずいぶん慣れてきた」
「何ですか?」
「俺に」
懐いた、とは言い難い。けれど、もう「知り合い程度」ではない。天井の絵をうっとりと見上げる美緒を、龍太郎は見ていた。
確定、だ。
メリーゴーランドを降りて、自動販売機で缶コーヒーを買って座る。ライトアップに人が集まり、園内のベンチは静かだ。
「美緒ちゃん、ちゃんと言っとくね。俺は美緒ちゃんとこれからつきあいたいと思ってるんだけど」
がちっと音がするほど、美緒が固まった。
「えっとね、イヤじゃなければ、当面試用期間ってことで」
えーっとえーっと。この場合、なんて答えればいいんだろう。試用期間ってことは、本採用じゃなくって!で、それの線引きって何なの!