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Unconscious act 4

 午後二時を過ぎても、龍太郎からのメールはなかった。溜まったアイロンがけをしながら、美緒の目は携帯に向いたままだ。すべて済ませた三時過ぎ、クローゼットに仕事を終えた服を納め終わった頃に携帯が震えた。通話ではないのに、慌てて開く。

―すっかり二日酔いしてます。来週の晩、仕事が早く終わりそうな時に連絡します。

 あ、やっぱり三次会に行ったんだ。あのピンクのコートと。女の子女の子してて、男の子に人気のあるタイプだよね。

今しがた開いたばかりのクローゼットの中身を思い浮かべる。色味もそうだが、全体的にあっさりしすぎな気もする。フレアのスカートやモヘアのニット、レースのカーディガン、それは美緒のワードローブに含まれていない。「性に合わない」と退けていたから。


 美緒は上着を羽織りリュックを背負って、車庫から自転車を引っ張り出す。

「美緒ちゃん、どこ行くの?」

妹からの問いかけに「ボックスヒル!」と駅ビルであるファッションビルの名を言う。何が買いたいのか自分でもわからないが、自分のワードローブがひどく不足している気がした。


「何、松山さんにメール?」

 コタツの天板に顎を乗せたまま、藤原は龍太郎に話しかけた。んん、と龍太郎は曖昧に頷く。

「昨日、三浦に対抗してたもんねえ。三浦もいい加減、相手にされてないの気がつけばいいのに」

 それに対しては、答えないでおく。三浦から直接的な言葉をかけられたのは研修の時だけで、その後は横をウロウロしているだけなのだ。

「松山さんって確かにかわいいけどさ、色気に欠けるっていうか女っぽくないっていうか」

「放っとけ。フジが去年つきあってた女だって、色っぽいのは身体つきだけだったじゃん」

「巨乳はいいぞお。三浦の胸も捨てがたい」

 捨てがたいんなら、拾ってもいいぞ?


 美緒からの返信はすぐに来た。

―今週中なら、前日に言っていただければ時間を空けます。

 三浦に対抗したのか、ただ虫の居所が悪かっただけなのか、とりあえず了承の言葉だ。年末に時間のやりくりは難しいが、どうにかしなくては。

 だって、やられちゃったから。


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