get to know 3
終バスの時間が、と美緒が言いだして、お開きにすることにした。美緒と鈴森に二千円ずつ出させ、残りを龍太郎と藤原で割り勘する。駅まで一緒に歩き、美緒が地下鉄の入口に入る前に龍太郎は呼びとめた。
「あのね、今度はふたりで会ってみたいんだけど。ダメ?」
はっきり主張しないと気がつかない、と鈴森のアドバイスに従ったのである。美緒と同じ路線の鈴森が、割って入る。
「ダメじゃないですっ!全然!松坊だけ誘ってやってください!」
それだけ言うと、美緒をひきずって地下鉄の階段を下りていった。
「なんで鈴森が返事するのー?」
「何?篠田さんがイヤなの?」
「そうじゃないけど、なんか意味合いがわかんなくて」
鈴森は溜息をついた。
「現時点で意味なんかない。ふたりで会って、どんな人だか確認しないと話がはじまらないでしょうが。生理的に受け付けないタイプならいざ知らず、顔も見たくないんじゃないでしょ?学生さんみたいに毎日会ってる内に気になってー、なんてのなら社内恋愛しかないわよ」
「社内でそう思う人なんていないもん」
鈴森は美緒に顔を寄せた。
「今のスタンスだと、あんた八十になっても処女よ」
八十の処女?そんなバカな。
「とりあえず誘われてみ?悪い人じゃなさそうだし、初心者向き」
「何の初心者?」
「いいから、言うこと聞きなさいっ!」
迫力の言葉に、思わず返事をする。
ま、いいか。別に会うくらい。
「今日は付き合わせちゃって悪かったな」
駅の上にあるビルに入った店で、龍太郎は藤原に礼を言った。もう一杯だけ飲んでいこうか、と寄ったのだ。
「いや、女の子たちはそこそこ可愛かったし、楽しかったわ。松山さん、手強そうだけど」
「んー・・・ちょっとわかんない子だよね。ま、ぼちぼちと行ってみるよ」
願わくば、容姿について何も言われませんように。
龍太郎君よりも背が高いから、ヒールが履けない。龍太郎君を弟と間違われるから。お化粧したら私よりも綺麗なんじゃないかって言われた。腕も足も私より細いじゃない。サラサラの髪、女の子みたい。指輪のサイズがメンズじゃないんだね。服を一緒に選びたくても、売っている店が見つからないんだもん。
全部、俺のせいじゃない。高いヒールを履いちゃイヤだなんて言ったことはないし、細い髪だって伸ばしたことなんかないんだ。