Encounters you 6
誘いのメールを打つこともなく、二週間が過ぎた。十一月も半ばである。そろそろ作業着の上に防寒ジャンパーが必要になる。
「おはようございまーす」
「毎日、朝から元気だね」
「それじゃ、毎日何の悩みもないみたいじゃないですか」
「あるの?」
「そりゃ、ありますって!カラ元気なんですよう。じゃ、お先にー!」
相変わらず早足で歩いていく美緒は、龍太郎と一緒に出勤する気はないらしい。律儀に挨拶を寄越すので、嫌われてはいないな、と判断できるのだが。
やっぱり、積極的に誘うしかない。
龍太郎は小さく気合を入れた。
美緒がロッカールームで着替えている時に、携帯が鳴った。発信者は「篠田龍太郎」だ。
―今晩、飲みませんか。
ランチを一緒にとった後、何回かメールは来たが、誘われたことはなかった。
まさか、ふたりでって意味じゃないよね。
予定は何もないので、とりあえずその部分を確認する。
―都合は悪くないです。何人で行くんですか?
すぐに返信が来た。
―じゃ、もうひとり連れて行きます。詳細は後程。
―それでは、こちらも誘ってみます。
龍太郎が盛大にコケたのは、言うまでもない。
「篠ちゃん、朝から何がっかりしてんの」
「フジ、今晩おヒマ?」
「あら?夜のお誘い?あたし、オークラのスイートじゃないと行かないわ」
「おまえとなんか、金もらったって行かねえ。今晩女の子と飲むんだけど」
「行く」
気持ち良いくらいの即答だ。
ガードされてんのかな、俺とふたりだけじゃイヤだとかって。
美緒にガードしている気がないことは、龍太郎には見当はつかない。