Encounters you 4
―先刻は、ご馳走様でした。
龍太郎の携帯電話が震えたのは、洗濯機が洗濯終了のブザーを鳴らした時だった。一週間分溜めた洗濯物は、主に下着だ。
―こちらこそ。
そう打ち込んだ後、ちょっと考えてから付け足した。
―今度は、飲みに行きましょう。
少し置いてから、返信が来る。
―お酒、強くないんです。それでも良ければ。
返事としては、そこはかとなく微妙である。
返信をした美緒の顔も、実は微妙だ。
「ふたりで飲みに行きましょう」なんて誘われたら、どうしよ。
イヤな訳ではない。美緒だって誘われることはあるし、露骨な下心にはパスもする。短大時代、友達に何度か男の子を紹介されたこともあった。ただ「この人が好きで、つきあってみたい」と思う相手がいなかっただけだ。だから一度お茶を飲んだだけで「つきあっちゃおうか」なんて言われたら、とてもバカにされた気がするのだが。
「つきあってみなくちゃ、好きになるかどうかわからないでしょ!」
何度友達にそう言われたことか。相手を限定してしまってから好きか嫌いか考えるなんておかしいと、美緒は頑固に考えていたりするのだ。
「えー?ご飯食べに行ったの?次の約束とかしたー?」
月曜日の朝、鈴森に土曜日の話をした美緒は、興味津々のツッコミを受けた。
「約束はしてないけど、今度は飲みに行きましょうってメールがあった」
「いいじゃん!行っちゃえ!顔いいじゃん。背、低すぎだけど」
「いやだから、背が低いのは本人の責任じゃないし。太っている人は痩せられるけど、身長は自分の意思じゃないでしょう」
「松坊が気にしないんなら、問題ない。つきあっちゃえ」
話が棒高跳び。まだちゃんと誘われてもいないのに、なんでそこまで飛躍するの?
美緒は心の中で溜息をついた。