戦闘
あいつかなりやばい奴だ。あまりの急展開に冷汗が滴り落ちる。イグニス。生意気な奴だったが何もしてないやつをあんなにあっさりと殺せるなんて。
「死ね」
そう一言だけ言いドーシスが神の胸に剣を突き刺そうとする。
しかし、神は指で剣を挟むとドーシスごと持ち上げた。
「皆どうしたの?固まっちゃってやる気あるのドーシスだけなの?」
「そんなことはない!」
剣を挟んでいる方の腕をサクスムが殴りつける。
骨の折れる音と共に奴の腕は変形した。
衝撃でドーシスは振り落とされた。
「なかなかやるね。サクスム。君にはこれはどうかな?」
神の折れていないほうの腕が何倍にも膨れ上がりサクスムに殴り掛かった。
それを受け止めるようにサクスムも拳を放つ。
鼓膜を揺らす轟音が響いた。
奴とサクスムの拳がぶつかりあう。
互いの力が拮抗しているのか押しては押されてを繰り返している。
「おい、僕を忘れるなよ」
そう言うと床に倒れていたドーシスが神の両足を串刺しにするように剣を刺した。
今だ!奴の足が固定された。
俺は奴の首目がけて走り始める。
そして飛ぶと奴の首に剣を振り下ろす。
決まった。
そう思ったが、俺の剣は奴の硬い歯に挟まれていた。
そうする奴の顔面に拳が直撃した。
拳の方を見ると、フローラだ。よかった。彼女もしっかり戦ってくれるんだな。
「皆ちょっとー、こんなか弱い老人を若者が寄ってたかってひどいよー」
そう言うと神の体が風船のように膨らみ始めた。
なんかやばそうだ逃げないと。
だが、奴の方が早かった。
奴の体は一瞬にして十倍ほどの大きさになると、爆発した。
衝撃で体が吹き飛ばされた。
なんとか受け身を取るが他の皆は大丈夫か?
「皆大丈夫か?」
一応確認を取る。
「大丈夫だ」「大丈夫です」「僕も」
よかった。みんな無事だったようだ。
しかし、黒煙で視界が悪く他の皆、そして奴の位置状況が分からない。
「皆大丈夫なんだ。流石だね。じゃあそろそろもう一人」
すると黒煙の中で何かが煌めいた。
「なんだ!」
ドーシスの悲鳴が空間に響いた。
「どうした、大丈夫か!」
......
俺の呼びかけに返事はなかった。
警戒をしながら黒煙が晴れるのを待つ。
しばらくして黒煙が晴れると元の場に立ち尽くす神、俺と同じように警戒をしているサクスムとフローラの姿、そして胸に剣が突き刺さり仰向けに倒れるドーシスの姿があった。
「次はドーシスが脱落だね」
神が飄々と言う。
「貴様!」
サクスムが怒りを全開にしながら殴り掛かった。
しかし、神の前に透明の壁でもあるかのようにサクスムは後ろに跳ね返された。
「落ち着け。何故貴様を残したのか分かっておるのか?貴様もああなりたいか?」
神はドーシス、イグニスの方を見る。
サクスムは何も言わず、動かなかった。
「お前たちを何故残したのか?それは心まで勇者として成っているからだ。サクスムが最初に言った通りに勇者として悪だけを滅する志。素晴らしい」
「それが何だっていうんだ」
サクスムが落ち着きを装って言う。
「この世界の主たるわしを殺すに相応しいということだ」
「どういうことだ?」
思考と同時に口から疑問が出た。
「わしは死にたい」




