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今日も、精霊と魔法日和  作者: July
第4章 火のランタンと夜の迷子
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3

 サラと別れたあと、ルアとミレイアは静かな夜道を歩いていた。

 風は穏やかで、先ほどまで暴れようとしていた火の精霊の焦げた気配はもうない。


「……助かったね、サラ」


 ルアが呟くと、ミレイアは微かに笑った。


「あなたがいたからです。あの子の願いはとても脆くて、触れたら壊れてしまいそうなほど細かった。でも――あなたは壊さなかった」


 ルアは肩をすくめ、冗談まじりに返す。


「壊れた魔道具を直すのが僕の仕事だからね」


 ミレイアは小さく首を振る。


「違います。あなたは魔道具を直しているのではありません。人と精霊の心を繋ぎ直しているのです」


 その言葉は夜の空気に溶け――

 まるで霜夜に灯る灯火のように静かに残った。



 路地裏の店へ戻ると、店内に風がざわめいた。

 棚や机に眠る魔道具たちが、まるで何かを感じ取ったように震えている。


 ――来る。


 ミレイアは扉の前に立ち、目を閉じた。


「……気をつけてください。

 精霊たちの“呼び声”は収まっていません。

 いえ――むしろ今、世界がひとつに向かおうとしています」


「ひとつに?」


「はい。

 すべての精霊の意識が――“ある場所”へ向かっている」


 ルアは静かに息を呑む。


(……そうか。とうとう……)


 ミレイアが扉に手を添える。


「――精霊たちは集結し始めています。

 あなたを迎えるために。」


 



 扉の音とともに、冷たい夜風が吹き込む。

 その風はただの夜気ではなく――精霊の意志を帯びていた。


 遠くの空に、淡い光が灯る。

 まるで星が降りはじめたかのように、精霊たちの光が夜の上空に集まっていく。


 ルアは静かに目を閉じ、そして――ゆっくりと開いた。


「……分かったよ。

 ここから先は、ただの“店主”ではいられないみたいだね」


 ミレイアは深く頷いた。


「ええ。

 ――最終の地へ行きましょう。

 そこにいる“あの精霊”が、すべての揺らぎの中心です」


 



 ルアは棚に眠る魔道具へ視線を向け、静かに告げる。


「僕が戻るまで……店を頼むよ」


 風精霊が瓶の中でそよぎ、火精霊が柔らかく灯り、水鏡が微かに光った。


 それは**「いってらっしゃい」**という、静かな見送りだった。


 ルアはミレイアと共に、夜の街へ歩み出した。

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