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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

他とは違う男

作者: かつき

季節は春 新学期の季節

浮かれた顔をして入学式に向かう同級生を背に

若干憂鬱な気分になりながら1人仕事に向かう1年前のあの日から狂った俺の人生は、

アブノーマル。

しばらく歩くと見えてくる、若干小洒落た

カフェに到着。


注文を聞きにきたウェイターに

「ハンバーガー肉抜きで」

と注文する。

意味のわからないこの注文には意味がある。

ウェイターは注文を聞いたあとハッとした顔で

俺を一番奥の個室に案内する。


席に着きしばらく待っていると

髭を蓄えたダンディーな男が現れた

こいつがこの店の店長

表向きの話だが…


「今日の仕事はこいつだ」


店長が渡してきた紙には

まるまると太ったたぬきのような中年の

男が写っていた。


俺は今から、この紙に映る男を


殺さないといけない


1年前のとある事件をきっかけに狂った俺は

今や殺し屋

この店長の裏の顔は俺の雇い主

渡された指示書を確認して、

思わず嫌な笑みがこぼれる。


「おいおいなんの冗談だよ…」


指示書に書いてあったのは


「高校に生徒として潜入し

女子生徒を食い物にする

悪徳校長を討伐せよ」


だった。


店長はニヤニヤしながら答える

「よかったじゃないか また学生生活が出来るぞ」


「勘弁してくれよ… 今更学校なんかいきたくないよ」


「いやいや 本当だったらお前も高校生の年齢だろ?」


「いやまあそうだけど…」


「何が嫌なんだ? 他にも学校に潜入する仕事はあっただろ?」


「この学校 俺が行くはずの高校だったんだ…」




「はぁ〜こんな仕事受けるんじゃなかったぜ」


あれから何度かの押し問答があったが

結局押しに負け仕事を受けることになった。


校門の前に立ち学校の様子を観察する。

みんな笑顔で楽しそうに登校している


「あれは… 美里?」


その中には中学の時好きだった女の子もいた。

美里は小中ずっと一緒だった幼馴染

あんな事件がなければいずれは付き合って

結婚していたかもしれない

そんなありもしない妄想をしていると

美里の横に遅れてやってきたイケメンが現れた


「あいつは太田?」


太田は中学から仲良くなった親友

イケメンだがオタク趣味な所もあり、

よく2人でアニメの話で盛り上がったもんだ


太田と美里 あと俺の3人で仲良く遊んだ

あの頃を思い出し鑑賞に浸っていると


「なあ美里 今日家に行っていいか?」


「え?… 今日 いいよ 親いない」


そんな会話が聞こえてきた


まさか あの2人付き合っているのか?

嘘だありえない!

精神が崩壊しそうになる。


しかしある点に気づく

心なしか美里の顔に元気がない

そうか!俺がいなくなって美里を

守ってやれないから無理やり太田と付き合ってるんだ!

そうに違いない

この仕事が終わったら、また美里に会いに行こう

それで告白するんだ。


仕事のやる気が湧いてきたところで俺は潜入の準備をする。

さあやるぞ 今日も仕事だ。



授業が始まる時間になり人がすくなった時間に

俺は校舎の裏側にいた。

周りに人がいないことを確認し

屋上に向けワイヤーを発射する。

うまくワイヤーが絡まり、ワイヤーを伝って

屋上に行く、屋上に登り終えたところで奥の方から笑い声が聞こえ、急いで物陰に隠れる。


笑い声が聞こえた方を観察すると

陽キャ集団が授業をサボって飯を食べていた。


「俺この前パチで3万負けてよ〜」


「は? お前えぐいてwww」


くだらない… いいなこいつらは

こんなくだらないことで笑えて

俺は1年前のあの事件から笑うことすら出来ないのに…

そんな事を思っていると、また会話が聞こえてきた。


「そういえばお前この学校のやばい噂知ってる?」


「え?何?」


「実は校長に弱みを握られた女生徒が大量に居て金払うとやらせて貰えるらしいよ」


「マジで えぐいてwwww」


「風俗じゃんw」


指示書に書いてた通りだ… ゲスめ

許せない。

今すぐにでも殺さないといけない。


俺はそのまま、あいつらに見つからないように

ゆっくりと移動し屋上から校舎内に潜入した。

校長室は屋上から降りて、廊下を歩いてすぐの

角の部屋だ。

バレないように移動し、校長室の前まで来ると

話し声が聞こえてきた。


「なあ いつまで嫌がってんるだ?」


絶賛行為中か ゲスが… 今すぐにでも殺りたい

しかしタイミング的に誰かと話している

またないと


「すみません 私でも… 初めてはあの人がいいって」


嘘だろ… この声は 美里?

しかも初めてはって太田ともやってない?

それに、あの人って俺のことなんじゃないか?

そうに違いない 太田ともやってないってことは俺に決まってる そうだ そうに違いない


「じゃあいいんだな この写真をばら撒いたらお前の人生おしまいだぞ?」


許せない 今すぐやるしかない

それで仕事が終わったら、美里に全てを

打ち明けよう 美里なら分かってくれる!

覚悟を決めた俺は、ドアを蹴破り

銃を構える。


「おい!誰だ貴様は! 警察! 警察呼ぶぞ!」


「警察を呼ばれたら困るのはお前だろ?

それに無駄だぞ? 警報システムはすでに

壊しておいた」


「なんだ? 金か? 女か? 安心しろ 

お前の望むもの全部やる! だから命だけは勘弁してくれ!!!」


小物を体現したような態度と言動を見て

思わず笑いそうになる


「お前みたいな奴今まで散々見てきたぜ じゃあな」 


俺はお前に構ってる暇はない お前を殺して

俺は美里と結ばれる

バンバンバン!!!

一思いに引き金を引き、校長を殺す


「うわああああ」バタ!


校長が死んだのを確認し


奥で震えている美里に声をかける

「助けに来たよ 美里」


「ありがとうございます… え かつきさん…?」


「そうだよ お前を助けにきた 美里」


「会いたかった!」


涙目になりながら美里が俺に抱きついてきて

熱いキスをしてきた

俺はやっと手に入れたしあわせを噛み締めながら意識は途絶えた



意識が戻るとそこは取調室だった。

そうか 俺は捕まったのか

目の前にはガタイのいい刑事がいた


「お前取り調べ中に居眠りとはいい度胸じゃねーか」


「悪いことしたと思ってねーからな」


と俺は不的な笑みで答える


「言うじゃねーか」


と刑事は嫌な笑顔で脅してくる


実際そうだ 俺は1人の女の子を救ったんだ


「どうしてこんなことをしたんだ?」


そう聞かれた時一つの案を思いつく

そうだ!

何も分かってない刑事に全てを話そう

そうすれば俺の刑も軽くなるはずだ

そして俺は今まで起こったことの全てを話し始めた。


すると刑事はますます分からないという顔をして答える


「校長? 悪事? 美里を守った?

何言っているんだ? 」


その言葉を聞いて腹が立ち反論する

そういえば美里は? 

美里に聞けばこいつも分かるはずだ


「いや!実際に起こってるんだ!刑事さん!美里にも話を聞いてくれ」


「美里なんて人間は今ここにいないし」


と刑事は怪訝な顔をながら答える


「それに俺は刑事じゃなくて 医者だ」


え…?


「何でまた脱走する真似なんてしたんだ?」


脱走…?


「それにお前は高校生ではなくて

35歳だろ いい加減目を覚ませ」


その一言で目の前がぐにゃりと変形し

病室に景色が移り変わった


そこで夢から覚めたかのように

気づいた

そうか俺はそうなのか?

いや違う!俺は違う!そうじゃない!


その葛藤で頭を抱えうずくまっていると

そのまま看護師たちに連れてかれ

病室の中に入れられた


どっちが真実か分からない

自問自答を繰り返している中

ふと

薄暗い部屋の中で1人

「美里 どこにいるの?」

と呟くと

「ここにいるよ」

と声が返ってきた


それで分かった

そうか…

今までの光景は全部妄想

美里も何かも全て頭の中の物語

現実はあっちか


と結論づけるも

そんな現実に耐えられない


ならば妄想の世界に逃げよう

今日も俺は内に籠る

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― 新着の感想 ―
[一言] 途中で判明する事実にびっくり、特に取調室以降の展開がスピーディーで面白かったです。 ひどい目に遭わされている女の子がいないのは救いですが……(´・ω・`) ラスト、ビターな感じで終わるところ…
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