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私が悪役令嬢にならないと人間が滅亡するらしいので  作者: 西玉


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70 魔王の本性

 さらに7日が経過した。

 リーゼは暇さえあれば持ち込んだロマンス小説を読み込み、悪役令嬢としていの立ち振る舞いを学んだ。

 リーゼが居丈高に振る舞うほど、魔王はリーゼにのめり込んでいくようだった。


 光の聖女だったカレンは首輪で繋がれ、リーゼに奴隷として与えられた。

 魔王は語った。

 魔王軍全軍が、臨戦体制で魔王城に集結している。

 魔王が号令を発すれば、人間の最後の都市を滅ぼしに向かう。


 人間を滅ぼすことに、魔王は迷いなどない。

 ただ、魔王はリーゼと一時でも離れるのが辛いために、最後の命令を出せないでいる。

 人間を滅ぼす最後の戦いに、魔王が陣頭指揮を取らないわけにはいかないからだ。


 魔王は、リーゼと離れ難いと言いながらも、部屋から出て戻らないことも多かった。

 そんな時、リーゼはエリザともにロマンス小説を読み直すのだ。


「リーゼ、どうして平気なの? パパ……いえ、魔王が、部屋を出て何をしているのか知っているの?」


 リーゼが分厚い騎士道物語から悪役令嬢の出番を探している時、鎖で繋がれて床から五十センチ以上の高さに頭を上げられないカレンが言った。

 リーゼは本から視線を上げた。


「人間を殺しに行っているの?」

「はっ! リーゼは、魔族をわかっていない。魔族は、人間よりも遥かに強い体を持ち、怪我もしなければ寿命も長い。子どもはできにくいから、性交渉は奨励される。そんま一族の王が、若返った肉体で、人間の女ひとりで満足すると思っているの?」


「魔族の女性がお好みなら、どうして魔王は、人間の女を妻にするの? 800年前も、今回も」

「寿命が短くて、すぐに死ぬからじゃないか? あまり長い間、ひとりの女に縛られたくはないだろう。ぐぇっ」


 リーゼが思わず、カレンの首に繋がっている縄を引っ張ったため、カレンの首が締まった。


「そう。なら、これはチャンスかもしれないわ。エリザ」

「ここにおります、奥様」


 かつてはリーゼのことを『お嬢様』と呼んでいたエリザは、現在ではすっかり『奥様』と呼ぶのが定番になっている。


「行くわよ」

「奥様、どちらへ?」

「カレンの言うとおりなら、いい機会だわ」

「『いい機会』って、なんですか? 夫婦円満の秘訣は、互いの秘密を暴かないことではありませんか?」


 リーゼはエリザに微笑みかけた。

 エリザは、ロマンス小説の世界に入り込んでも、現実を忘れない。

 リーゼには好ましく感じられた。

 リーゼは、カレンを蹴飛ばす。

 悪態をつくカレンに本を投げつけ、リーゼは言った。


「円満でいるより、倦怠期の打破よ」

「倦怠期って奥様……旦那様と奥様は、ずっと仲睦まじいではありませんか」

「ずっと、仲睦まじい。それが問題なのよ。いずれ飽きられる。その時、捨てられるては困るのよ。最低でも、後7日はね」


 かつて、夢の中で白い世界の存在が言った。

 人間が1人残らず死に絶える。

 その予言された時まで、7日となっていた。


「お嬢様、私は……」

「来なくていいわ。その子に、おトイレの使い方を教えておいて」

「知っているよ! この、悪役令嬢が!」


 リーゼに指さされたカレンが喚く。


「おーほっほっほっほっほっ! ありがとう。行ってくるわ。シャギィ」

「ここに」


 リーゼが向かっていた扉が開き、元の大きさ近くまで成長した魔族の侍女シャギィが跪いていた。


 ※


 リーゼが魔王城の中を歩くと、魔族たちが避けた。

 まるで腫れ物のようである。

 リーゼはシャギィに尋ねた。


「私を避けているようだけど、魔王が何かしたのかしら?」

「いえ。陛下がリーゼ様を溺愛しているので、恐れ多くて近寄らないようにしているのでしょう」


 シャギィは当然のことのように言った。

 リーゼは歩きながら尋ねる。

 魔王城は広く、部屋数も多い。


「私が『溺愛されているから近寄らない』って、どういうこと?」

「リーゼ様は魅力的ですから、魔族の男たちはリーゼ様に懸想しています。でも、それが陛下に知られると、殺されます」


「私が魅力的? 魔族から見てですって? ありえないでしょう。魔族の女性は、男性の魔族と殴り合えるほど逞しいのに」

「だからです」

「でも、ならどうして魔族は、人間を滅ぼそうとするの? 人間の女を妻に迎えようとはしないの?」


「人間の女性を妻に迎えるのは、魔王様の特権です。人間の女性は、どんなに素敵でも寿命が短く、簡単に死にます。かつて、魔族が娶った人間の女性が、魔族の女性に大量に殺されてから、娘を嫁がせた人間たちが、魔族に対して宣戦布告しました。それが、千年前のことだと聞いています」


 リーゼは天を仰いだ。

 見上げたことで、苔むした天井が見えた。

 魔王城は不潔ではないが、いきとどかない部分も多い。

 住んでいる場所が苔むしていても、病気になどならないのが魔族なのだ。


「まさか……人間と魔族が戦争を始めたきっかけが、人間の女を娶ったことだとはね」


 リーゼは幾度めかの角を曲がった。


「ここより先の立ち入りはご遠慮ください」


 角を曲がったところで、青い肌の痩身だが筋肉質の肉体をした魔族の男が立ち塞がった。


「私が入れない場所は、この魔王城にはないわ。魔王陛下からそう言われているのよ」

「しかし、この先はダメです」

「リーゼ様、引き返しませんか?」


 男性魔族に、シャギィが味方をした。

 リーゼは理解した。


「おーほっほっほっほっほっ! 陛下、ここにいますのね? レジィ将軍、あなたの部下が、私を誘惑しましてよ」

「なっ! 俺は、そのようなこと……」


 魔族の男が動揺する。

 動揺した魔族をかわし、リーゼが奥に進んだ。

 魔族が追おうとした。

 リーゼが足を止める。


「私に触れれば、さっきの言葉が本当になるわ。あなたがレジィの部下だってことは、わかっているのよ」


 リーゼは、魔族に見覚えがあった。

 レジィがドラゴンを引き連れてリーゼを迎えにきた時、レジィに従っていた1人だ。

 魔族が足を止める。

 リーゼがまっすぐに進んだ。シャギィも追ってこない。


 リーゼは、声が聞こえた扉の前で足を止めた。

 扉の取っ手を掴み、引き開けた。

 大きな部屋とベッドの上で、絡み合っている魔族がいた。


 リーゼの親友である魔族将軍レジィと、逞しい肉体を取り戻した魔王だった。

 全裸だった。

 2人の肉体が、密着していた。


「お楽しみですわね。陛下」


 リーゼの微笑みに、魔王と将軍が揃って固まった。


 人間の滅亡予告日まで7日

 魔族が滅びるまで17日

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