逃げた神々と迎撃魔王 現世編 〜おしかけ異世界転移して来た、怪力金髪美女と変態金髪美女。俺の人生のパートナーは、身に覚えのない娘からの贈りものだった〜 後編
「俺の答えはノーだ」
お宝はあった。イエスと答えて大量の金貨を手に入れれば、いわゆる勝ち組になれた。サンドラもリエラも俺を好いてくれている。
でも、たとえガウツという男の元が俺でも、やはりサンドラ達の惚れたガウツと今の俺は別の人間だ。
いろいろ不思議なことが体験出来たし楽しかったよ。たぶんここと、彼女達の世界は繋がっているんだろうな。
俺を連れ出す、返答のためだけに娘が創り出した疑惑さえある。
だが、あえて言わせてもらう。底辺から脱出出来る機会を思いがけず得られる絶好のチャンスだったとしても、それは違う、と。
楽はしたい、まったくの別人というわけじゃないから、いいじゃないかと思う。何より、目の前のサンドラは綺麗な上に強くて優しい。
本当の俺ではなくても構わないとさえ言ってくれる。こちらが嫌ならあちらの世界でサンドラやリエラ、それに娘達と幸せに暮らす事も可能だ。でも、俺は断る。馬鹿だ。大馬鹿だと自分でも思う。
何度も選択をせまられたけれど、やはり俺は俺だ。記憶を見せられた限り、娘とやらの力を考えると、きっと二人は放っておいても元の世界に戻れる。
俺はガウツではない。だから添い遂げてやることなんて出来ないからもう元の世界に帰って欲しい。
そもそも時間軸をずらしてやって来れたのなら、ガウツが生きている時代に戻ればいいだろうに。
不意に俺の身体にサンドラが重なる。考える間もなく口唇を塞がれ、俺はただ驚く。
「な、なにを」
怪力金髪女子のサンドラの力は、記憶の中の俺とは違ってあがらえない。リエラがニタニタしながら拘束された俺の顔を両手で取る。
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どうも俺が最終的に何て答えるかで決めていたらしい。いや、嬉しいけれど、恥ずかしい。どういう娘なのかは、記憶の中でも良くわかった。
こんな心のまっすぐな女性に対して、何もしてない罪悪感がなければ、惚れてもらえて嬉しくないわけがないだろう。
「レーナの言い方だとさ、あんたの魂に、心の有り様に惚れたんだからもう離しはしないよ。リエラ、あんたは帰っていいよ」
「うっわぁ、最低。口づけどころか手も握れなかったくせに、御膳立てしてやったの忘れて調子こいてんじゃねぇそ、ゴラぁ!」
やばい、また喧嘩が始まった。というか、俺の腕を持ったまま耳元で罵りあうのはやめてくれ。それに、リエラが恐い。こいつ、チンピラみたいな口調でサンドラを牽制しながら、いろいろ触らせようとしてくる。
「どっちを選ぶか決まったの?」
不意に頭に声が響いた。二人はまだギャアギャアと騒いでいる。リエラには悪いが俺はサンドラが好きだ。
俺のろくでもなかった人生を、俺であったもののかわりに捧げたって惜しくはない女性だ。
「二人とも引き取る選択もあるんだよ」
小悪魔のように微笑んでいそうな声の主。たぶん娘だよな、これ。仮にもお父さんと呼ぶ存在にをからかうんじゃない。
リエラには本当に済まないが、綺麗で美しい娘という以外の思いがない。残酷だよな、でも無理だ。
「いいんだよ、それで。仕方ないからリエラはこちらに戻すね」
本当に戻すのは嫌だったみたいだな。あっちで◯んでくれれば良かったのにと聞こえたぞ。
「リエラ、あたしはこっちでガウツと仲良くやるから、あんたはレーナの面倒頼んだよ」
ボロボロ涙を流して悔し泣きをするリエラを、サンドラは容赦なく煽る。でも、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔を抱きしめてサンドラも涙を流した。
「ありがとう、リエラ。あんたもあたしにとっては大事な娘だよ」
そうか、そういうことなのか。リエラの恋心は、サンドラに出会った瞬間にあっけなく終わっていたのだ。
ただ再会してみればレーナという娘はいたものの、サンドラは独り身を貫いていた。
選ばれなかったから泣いたんじゃないんだな。本当にサンドラの幸せを願って、それが叶って嬉しかったんだな。
光の粒となってリエラは消えた。俺はいつの間にかサンドラと抱き合っていた。こんな洞穴の奥底だけど、俺の人生で初めての伴侶が見つかった。
職は失ったが、最高の恋人と大量の金貨を手にした俺は、これから人生楽勝モードに入るかと思われたが、世の中そんなに甘くはなかった。
それはもうしばらく後の話しで、後にまた語られることがあるかもしれない。
苦労するにせよ、サンドラがいる限り、この世界でも俺は幸せだったと自分の人生を誇ることが出来るだろう。
三編の短いお話しでしたが、お読みいただきありがとうございました。
逃げた神々と迎撃魔王のおまけの番外編、女商人リエラの外伝は、完結となります。
リエラさんのその後は、現在連載中の作品【錬生術師、星を造る】にて登場します。
ガウツとサンドラさんの後日譚はいつか書けたらいいな、と思います。
※ シリーズ外伝にて、ガウツとサンドラさんに関わる物語を掲載しました。
【転生しても女子高生だったあたし〜でもね、三人のおじじのおまけつきで毎日うるさいんだよ〜ぅ゙】