第39話 ただの門番、人妻ロリバアアエルフと温泉にはいる
『あとはお二人でごゆっくり』
キルリはそう言いのこして、去って行った。
英雄の間には、俺とメメナだけ。
他二人は別室だ。
タタミにあぐらをかきながら静謐な空気に浸っていると、メメナが女の子座りしながら、嬉しそうに頬を緩ませる。
「ふふっ……この歳になって求められるのも悪くないのぅ。
うむうむ、精一杯励むでな。兄様も期待するといいぞ♪」
この歳になって求められる?
……もしかして、子供には負担のかかる解呪方法なのか?
「俺、無理させてないか……?」
「? 無理とはなんじゃ?」
「そりゃだって……メメナはまだ子供だし……」
「ああ、兄様はまだ勘違い……」
「勘違い?」
「い、いやいや、子供だからと遠慮することはないんじゃよ。ワシは理解があるほうじゃ」
「だ、だけど負担になるのなら……」
「そうじゃなー、あまり激しすぎるとワシは壊れてしまうかもしれんが……」
やっぱり負担のかかる術なのか⁉
俺が心配そうにしていると、メメナは膝をぽんぽんと叩いた。
母親のような慈愛の笑みで俺を待っている。
俺がどうしたものか迷っていたが、「はようおいで」とメメナが言うので近づいていくと、ころんと転がされた。
「わっ」
俺の頭はメメナの膝にぽてんと着地する。
すぐ目の前に、少女の綺麗な顔があった。
幼い少女の膝で俺は居心地のよさを感じていると、メメナが囁くように語りかける。
「ワシはな。兄様に感謝してもしきれんのじゃよ」
「俺、なにかしたっけ?」
メメナはくすりと笑う。
「ワシの……ワシたちビビット族の運命を変えてくれたじゃろう?」
「? 精霊王は勝手にいなくなったわけだし、ビビット族が独立したのも彼らの強い意思によるものだろう。
俺は門番として見ていたからわかるよ。俺は、特になにもしてない」
「……門番としてか。兄様はそーやって皆を見てくれるのじゃな」
メメナが俺の頭を優しく撫でてくる。
こそばゆくて気恥ずかしいが、逆らうことはしなかった。
「その視線が嬉しかったのじゃよ。
人種の垣根を越えて、ワシたちを守ろうとしてくれた兄様に嬉しくなったのじゃ」
メメナが俺の瞳をのぞきこむ。
少女の吐息が俺の鼻をくすぐった。
もうすこしで唇が触れあいそうで、俺は幼い少女だとわかっているのに心臓が高鳴った。メメナのこうした大人びた仕草には、よく惹きこまれる。
「兄様がワシを求めるのなら、応えない道理はなかろう」
「メメナ……」
「それとじゃが……。ちょ、ちょっと激しいぐらいが好きじゃよ。ワ、ワシ」
メメナは照れながら言った。
いつも飄々しているが、頼られるのは恥ずかしいようだ。
「わかった。メメナ、お願いするよ」
「う、うむ。そう面と向かって言われると、身体が火照るのぅ」
メメナの身体はぽかぽかと温かい。
汗ばんでもいるみたいだが、どうしたんだろう。
「それでは兄様、温泉でまずは身体を清めようか」
〇
部屋に備えつけの温泉。
俺はこじんまりしたものかと思っていたが、なかなかに広かった。
脱衣所を抜けた先は、部屋より広々とした浴場になっていて、湯船からは階下の竹林を眺めることができる。
俺は身体を洗い流してから、湯船に浸かる。
じんわりと身体の芯から温まってくる……。
カコーンと音が鳴った。このカコーンっていったいなんだろな。
快適だ。
驚くほど快適だ。
じんわりと身体が温まりつつも、涼しい風が頭を冷やす。竹林が風でザアアッとゆれるたびに、心が和む。
もしかして、本当にただの癒しの温泉宿なのか?
俺が勘違いしているだけじゃ……。
「いやいや、油断するなよ。俺っ」
「なんのことじゃ?」
俺の隣で声がした。
タオルで前を隠したメメナが、ちゃぷりと湯船に入ってくる。
メメナは湯船に肩までつかると、気持ちよさそうに足を伸ばした。
「はふー、良い湯じゃのう……」
「あ、ああ……」
相手が子供とはいえ、さすがに目のやり場に困るというか……。
メメナの身体はところどころ大人っぽい。
胸はぺーたんと子供だが、尻とか太ももは肉付きが良い。艶がある。うーんと両腕を伸ばして見えた脇、うっすらと浮かぶあばら骨には、視線が誘導されてしまう。
素肌に張りついたスケスケタオルは……なんというか。なんというかだ。
相手が子供だとわかっていてもだっ。
いかんいかんいかんっ!
メメナは解呪方法を試すためにも、一番怪しいこの風呂に入ってくれたようなんだ。
よこしまな考えは捨てろ! 破ッ!
「兄様。ええ湯じゃのー」
「お、おう……」
旅に出かける前、性欲減退の術を魔術師に施してもらってはいる。
なぜなら冒険では、ムラムラが厄介だからだ。
たとえばムラムラしてしまったとき、集中力の欠如や意識が散漫につながる。
男女混合のパーティーにおいても、トラブルの原因は大半がムラムラだ。
ダレソレが野営中に勤しみ、その隙をモンスターに襲われたなんてよくある話。
恋愛沙汰でパーティー崩壊なんてしょっちゅう聞く。
だから冒険で遠征するとき、性欲減退の魔術はわりと必須だったりする。
ただ、我が槍がしばらくご起立しなくなるわけだから、まあまあ勇気がいるが……。
「しかし兄様のは夫より大きそうじゃのう」
メメナがボツリと言った。
オット?
誰のことだ。
「メメナ、ところで解呪はどうやってるするんだ……?」
メメナにしか伝わらないよう小声で告げる。
「…………解呪?」
「ああ、俺たちの意識に働きかけている術を解呪するんだろ。
術者も探っているんだよな?」
「なんじゃそれ?」
「? 俺たちが勇者級の強さなんてありえないじゃないか。
あの女神、絶対俺たちを騙しているよな?」
「あー……。兄様、そーゆー勘違いを……」
メメナは、ちょっとガッカリした表情になる。
「え……? お、俺、なにか勘違いしていたか……?」
するとメメメは目を細めたあとで、妖しく微笑んだ。
「いーや。勘違いなどしておらんぞ♪ そうじゃのう。サクラノやハミィは術が効いておるようじゃから、ワシら……兄様がなんとかする必要があるかものぅ♪」
面白いことを思いついたみたいに、メメナはほくそ笑んだ。
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