第35話 激闘!勇者VS魔王①
フードエリアにいた俺は、メッガミーランドの異変を感じる。
メメナのおかげでテーマパークは優しい光に満ちあふれていたのに、魔性の気配が濃くなっている。死霊もザワザワと騒がしい。
そして、まっ白いメッガミー城が暗黒に染まっていたことに気づいた。
「メッガミー城が⁉」
いつぞやのドスケベ神殿みたいな外観だ!
まさかドスケベたちの復活か⁉ それにしては禍々しいぞ!
俺は大慌てでメッガミー城前の広間まで駆けていく。
「師匠!」「兄様!」「先輩!」
セーラー服姿の三人娘と合流する。
暗黒化した城を見あげながら、俺はメメナに聞いた。
「メメナ! これは死霊の仕業なのか⁉」
「いや! ありえんことじゃが、何者かがメッガミー城に根付いていた概念をのっとったようじゃ!」
「殺人デスピエロみたいに⁉ 城の概念ってことは……女神さま⁉」
メメナは真剣な表情でうなずいた。
けど女神さまの気配がこんなに邪悪なわけがないぞ!
俺たちが暗黒メッガミー城を見あげていると、闇の塊がテラスから飛んでくる。
いや……闇の塊じゃない、人だ!
クオンが紫色のオーラをほとばせながら地面に悠然と降りたつ。
「やあ、宿敵たち。滅ぼしにきたよ」
彼女の側には、ガイコツのぬいぐるみが浮かんでいた。
何者だと俺が思っていると、ガイコツのぬいぐるみが口をひらく。
「クハハッ! 驚きのあまり口がひらけないようだな! 貴様――」
「みんなに出会えたことが奇跡の証明‼‼‼」
とりあえず闇の気配が濃すぎるので光っておこう!
ぺかーっと俺からまばゆい光が放たれて、園内を照らしてく。
「め、目があああああああああああああ!」
お。効果抜群みたいだな。
そーれピカーーーーーー。
「し、師匠! そ、その光! 死霊にも効果あるようです!」
「え⁉ あ⁉ ごめん!」
俺は慌てて光を消したが、死霊たちがパニック気味に慌てふためていていた。
いや、死霊はクオンたちに怯えているようにも見える。サクラノは一応仲間判定していたのか、クオンに襲いかからずにいたが……。
ガイコツのぬいぐるみは怒りでかプルプルとふるえた。
「おのえええ蛮族ども! 話を聞くことをしらんのか!」
「……俺も対話は大事だとは思っているんだよ」
「ならば聞け! なっ⁉」
「敵の話を聞いて得だったことがないし」
「今の状況がしりたくないのか⁉」
無視をしたかったが、クオンが気になるのでうなずいた。
「ふんっ、最初から素直にそうすればよいのだ。よいか、貴様たちは――」
「ボクは魔王クオン=ヴァルボロス」
「名乗りが早い‼‼‼」
「ヴァルはここから話が長いし……」
「めんどくさそうにするでないわ⁉」
クオンとガイコツがわーわーと言い争っている。
冗長的な雰囲気に、場の空気がだんだんとゆるみはじめていると、ガイコツが「見世物でないぞ!」と怒鳴ってきた。
これ……俺が話を進めなきゃダメみたいだな……。
「えーっと……クオンが魔王化したってことか?」
「そ、そうだ! クハハッ! ついに魔王へと覚醒したのだ! 驚いたであろう!」
「驚いたは驚いけど……」
俺は仲間に視線をやる。
サクラノたちも動揺しているが『あ、そうなんだ』みたいな顔でいた。俺も邪悪な気配は感じていたしなあ。
「普段の態度的に、別にそこまでは」
「クオン‼ お前がつまみ食いなどするから! かようにゆるい空気になるのだ!」
「えー……そこー……」
クオンはぶーたれた顔でガイコツの説教を聞いていた。
ゆっるゆるーな雰囲気……だけど、クオンからは禍々しいオーラを感じる。
油断はしないよう仲間に目配せして、隙あらば攻撃の準備は整えておこう。
「でさ、お前は何者なんだ? ただのガイコツのぬいぐるみじゃないんだろう」
「クハハッ! よくぞ聞いた!」
「聞くしかなかったし」
「や、やかましい! よいか! 聞いて泣き叫ぶがよい! 我は魔王ヴァルボロス! 魔王ヴァルボロスの断片だったものだ! お前に滅ぼされた本体の恨み、今こそ晴らしてやるわ!」
ガイコツのぬいぐるみは因縁バリバリだぞと俺に殺気を飛ばしてくる。
ん??????
「俺、魔王なんて倒してないぞ。分身体は倒したけど」
「……そこからか」
「そこから?」
「いいか! お前は勘違いしていたが、本物のヴァルボロスを倒したのだ!」
「いやだから、一般兵士に倒される魔王なんていないって」
「いいからそうしておけ! いっこうに話が進まん‼‼‼」
ガイコツのぬいぐるみ、もとい本物らしき魔王ヴァルボロスの断片は言った。
……ややこしいな。魔王ヴァルボロス(暫定)にしておこう。
サクラノたちも『今はそうしたほうがいいですー』みたいな顔でいるし。
「つまりクオンには魔王ヴァルボロスの断片が宿っていて、そしてメッガミー城の女神の概念をのとったことで魔王として完全覚醒したんだな」
「ようやく理解したか! さあ、死にたくなければ無様に抗うがよい!」
「……この空気で戦うのか?」
俺もサクラノたちも、緊張感がしぼんでいる。ゆっるゆるのゆるゆるだ。
なんなら今から、お茶しながら和やかに終われるとも思っていた。
しかしヴァルボロス(暫定)は一言つぶやく。
「クオン」
「魔王絶対障壁」
クオンがまとっていた紫色のオーラがさらに濃くなる。
っ⁉⁉⁉ 俺たちをすりつぶしてしまいそうな圧を感じる!
死霊たちも恐怖にあまり逃げまわっているぞ!
「これは……シリアス展開の術か⁉」
「違うわ‼ お前たちがいかに阿呆であっても! 圧倒的な魔を前には、ただただ怯えるしか………………ないのだ!」
今の間!
妙な圧で、ひらひらに舞ったセーラー服を強引に無視したな!
ちょっとえっちな空気になりかけたもな! なんかゆるゆるの空気に持っていけそう!
シューガクリョコウ感を信じろ!
しかしクオンはマイペースにシリアス空気を放つ。
「ボクは魔王クオン=ヴァルボロスとして勇者ダンを殺すよ」
「だーかーらー! 俺はただの門番だって!」
「魔王尖槍!」
クオンは暗黒の槍を背後に展開して、チュンチュンと飛ばしてくる。
俺たちそれぞれに散って、攻撃を避けた。
「師匠! クオンから本気の殺意を感じます!」
「ああ、もうっ! これだからシリアスを押しとおすタイプはさ!」
なんか苦手だ!
俺は周りに目を配る。スルは悪魔族と死霊の避難誘導をしている。女神キルリは……そうだよっ、本物の神さまがここにいるじゃん!
俺がなんとかしてくれ視線を送ると、女神キルリは親指をぐっと立てた。
「私、受肉体ですので!」
「……わかりましたっ‼」
戦えないんだな⁉
ちくしょう‼ やるだけやってみるさ!
サクラノたちは武器を抜いていた(ハミィは素手)が、クオンの絶対障壁を前に二の足をふんでいる。
「まずは俺が障壁を壊す! 話はそれからだ!」
「クハハッ! そんなオンボロソードでなにができる!」
ヴァルボロス(暫定)は馬鹿にしたように笑う。
オンボロソードだなんて……そのとおりだけど! 兵士の配給品(お古)だけど!
だけどこのオンボロソードで、仲間たちと苦難の旅を一緒に駆け抜けてきたのだ!
ただのオンボロソードなんかじゃない!
思い出のオンボロソードだ!
俺は暗黒の槍を避けながら距離をつめて、クオンの障壁を破壊しにいく。
「門番斬りーーーーーーー!」
ガキンと障壁で火花が散る。
いっけーーーーオンボロソードーーーーーーーーー!
ぽきりと、オンボロソードが根元から折れた。




