星野さん、星野さん
緑野原少年を読んでいた。
ストーリーはさることながら、この画力!ワクワクする。
星野架名さんは亡くなった。でも、こうして作品は残っている。
「星野さん、星野さん」
?
「誰?」
「架名です」
どしえー!
「架名さんがどうしてここに?」
「もっといっぱい描きたかった」
「そうですよね」
「続きを、あなた描いて」
「無理無理無理。絵は全く描けないです」
「小説で彼方と弘樹を書いて」
「……できません」
「どうして?」
「あの世界は続いているけれど、ある意味完結しているんです。それに手を加えるなんて大それたことできません」
「続いているけど完結している、か」
「あなたの全身全霊を賭けた一大傑作なんですよ。誰が穢すことができましょう?」
「じゃあ、同じ創作の神様に魅入られたあなたに、このくらい面白いエンターティメントをやってもらえないかしら?」
「それも、できません」
「なぜ?」
「私は、今、何もかもに自信がないんです」
「いろんな作品に触れて。そうして心を磨いて」
「はい。……はい」
もう一度、やってみようか?
「星野さん、星野さん」
私は呪文のように呟く。星野さん、って。