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44 彼女は人魚?


少しでも早く依織の記憶が戻って欲しいけど、冬になる頃には俺の、俺と依織の関係はどうなっているだろう。

考えてみても、俺の望むような未来は見えてこないので、切り替えて今は水族館を楽しむことにする。

それにしても、水槽の中の魚のように海で自由に泳いでいる依織か。

もう、そうなったら完全に人魚の世界だ。

いや、依織の風貌からすると水の精霊の方が近いかも。

海に依織が映えすぎるかもしれない。


「睦月さんどうかしましたか?」

「あ、ああ、ごめん。依織が海を泳いでる姿を想像してた」

「……恥ずかしいです」


依織の顔が徐々に赤くなっているのがわかる。

やばい、変な風に思われた。


「そうじゃなくて、海を泳ぐ依織は、水に精霊とか人魚みたいだろうな〜って考えてたんだ」

「…………そう、ですか」


あ、やってしまった。

依織の顔が今までにないほどに真っ赤に染まってしまった。


「変な意味じゃないよ。いい意味でだよ。いい意味で」

「……わかりました。ありがとうございます」


わかってもらえてよかった。別に邪な考えや変な風に想像してたわけじゃない。


「じゃあ次に行こうか」

「はい。……睦月さん、人魚……」

「え、なにか言った?」

「い、いえ。なんでもないです。次にいきましょう」


夏休みなので、水族館にはそれなりに人が来ていて小学生が特に多いようだ。


「走っちゃダメ!」


後方から女の人の声が聞こえてきた。

後方から、パタパタと子供が走るような音が聞こえてくる。

既視感を覚えて後ろに振り向くと、男の子が俺に向かって走って来ているが、こちらが見えてないように見えた。


「あぶない!」


咄嗟に声を上げると、男の子は寸前で反応して俺を避けようとして依織の方へとぶつかってきてしまった。

後方からぶつかられてしまった依織が、よろけて倒れてしまいそうになるのを、必死に右腕で掴んで引き起こして、抱き抱える。

危なかった。

歩道橋では助けることができなかったけど、今度は間に合った。


「すいません。すいません。子供がぶつかってしまって。大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫です」


先程声にしたお母さんらしき人が、俺たちに謝ってくる。

それにしても、そうそう子供にぶつかられてしまうことはないと思うのにこの短期間に2回もあるとは。


「わたしも大丈夫です」

「本当にすいません。ほら、彰人も謝りなさい」

「ごめんなさい」

「ああ、水族館の中では、走らないようにな」

「はい」


そう言うと親子は、その場から去って、水槽の展示へと戻っていった。

俺はともかく、実際にぶつかられてしまった依織は本当に大丈夫なのか?

依織の表情をうかがうが、顔が真っ赤だ。


「依織、大丈夫だった? 顔が赤いけどどこか痛めたのか?」

「い、いえ、そういうんじゃないです」

「え、だけど、本当に大丈夫?」

「睦月さん、距離が……」

「距離がどうかしたのか?」

「睦月さん、抱き合って……」

「抱き合って?」


依織の様子がおかしいので心配で声をかけたが、返ってきた答えで現状を理解できてしまった。

必死で依織のことを引き寄せたせいで、ずっと俺の腕の中に抱き寄せるような形となってしまっていた。


「あ、ああ、これは、そうじゃなくて」


あまりのことにうまく言葉が出ない。すぐに離れないといけないのに、動転してしまい身体が動かない。


「わかってます」

「そう、ああ、うん」


思考の止まってしまった頭と固まってしまった身体を無理やり動かして、依織に回した手を解き離れる。

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