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22 担任


「依織、ここが俺達の通っている学校だ」

「知ってますよ」

「え? 憶えてるのか?」

「いえ、受験の時に一度だけ来たことがあるので」

「ああ……」


やはり学校での記憶がある訳では無いようだが全く知らないよりは良かったのかもしれない。


「それじゃあ俺たちの教室に行ってみようか」


俺達の教室は二階にある二年三組だ。


「ここが、教室で、依織の席はあそこだよ」

「睦月さんの席はどちらですか?」

「え? 俺はそこだけど」

「遠いですね………」


依織が寂しそうな顔でそう呟いたので、


「新学期始まったらすぐ席替えだろ」

「そうですか。睦月さんの近くになるといいな……」


依織の記憶の中には俺しか知り合いがいないので、不安から俺の近くの席が良いのは分かるが、単純な俺はその言葉に心臓が思いっきり跳ねてしまった。

やばい………顔が熱い。


「それじゃあ、案内するから学校の中を見てみようか」

「はい、お願いします」


その後、依織に学校の案内を一通りしたが、夏休みのこの時間には構内に知った顔を見る事は無かった。


「依織、俺達の担任なんだけど岡林先生って言う先生なんだけど依織の事情を説明しておかないか? やっぱりこれから先生とかのサポートがあった方がいいと思うんだ」


「そうですね。睦月さんがそう言うならお願いします。私は岡林先生がわからないので」

「分かった。俺が説明するから一緒に行こうか」


突然思いついた事だが、学校では俺がサポート出来ない事も出てくるだろうから担任である岡林先生に事情を話しておく事は必要な事だと思えたのだ。

俺は依織を連れて職員室に向かう事にした。


「失礼しま〜す」


俺は依織を連れて職員室に入ったが、授業がある時よりも先生の人数が少ない気がする。

岡林先生は………

奥の机で何かデスクワークをしているようだ。


「岡林先生」

「お、珍しい組み合わせだな。高嶺と草薙か。高嶺、その腕どうしたんだ?」

「それなんですけどちょっと今いいですか?」

「お、おお。何だ? 何か問題でもあったか?」

「はい、実は………………」


俺は俺と依織に起こった出来事を岡林先生に順を追って話していった。


「……………大変だったな。草薙、俺の事もわからない……のか?」

「すいません」

「そうか。それは仕方のない事だから謝る事じゃない。それより草薙のご両親はフランスだったと思うが、今も一人で暮らしてるのか?」

「いえ……」


依織がこちらに目線を向けて来たので俺が話す。


「いえ、今は俺と住んでいます。依織のご両親が今は帰国出来ないので、依織のママと相談して昨日から俺の所で一緒に暮らしています」

「…………それは、草薙の親御さんも了承しているという事か?」

「はい、そうです」

「まあ、事情が事情だからな〜。すまんが一度草薙の親御さんに確認を取らせてもらってもいいか?」

「はい。依織いいよな」

「勿論です。時差があるので出るかどうかわかりませんが電話してみますね」

「ああ、すまんな」


依織がスマホで電話をかけるとしばらくして依織のママが出た。


「ごめんね。うん………先生に…………。睦月さんも一緒に……………そう、じゃあ代わるね。先生、母です、お願いします」

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