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20 ベッドはひとつ


「そ、それはダメだよ。依織はベッドで寝てください。お願いします」

「そ、それじゃあ、睦月さんもベッドで寝ましょう」


一瞬依織の言っていることの意味が理解できなかった。


「へ? な、な、何を言ってるんだ。無理無理無理」

「睦月さん、無理ってそんなに私と一緒に寝るのが嫌なのですか?」

「はぇ? いや、そんなはずないじゃないか、そうじゃない」

「そうですか、それではどうぞ」

「どうぞ? いやいや、無理無理」

「嫌で無理なのですね………」

「そうじゃないそうじゃないんだ」

「じゃあどうぞ」

「……………l


一緒にベッドで寝るって、そのベッドシングルベッドだぞ?

依織ってこんな強引キャラだった……のか?

もしかして記憶がなくなってキャラ変してしまったのか?


「どうぞ」

「はい………」


だめだまともな判断が出来ない。

部屋にベッドが一台しかないのだから仕方がない。

ベッドが一台で寝るのは二人。

ベッド一台に二人で寝る。

依織と一緒に寝る。

そう、問題ない………はず。

思考が麻痺してしまったのか、依織に促されるまま床から起き上がって背を向けてベッドにはいる。

強引に押し切られ、なぜか俺もベッドで寝ることになってしまったが、今日一日色々ありすぎてまとも考えることができなくなっていたのかもしれない。

硬い床から柔らかいベッドへと移ったことで、あっさりと意識を手放してしまった。

思った以上に心身が消耗していたんだと思う。

そうでなければ、依織と同じベッドで寝るとかありえない。


「う、う〜ん。もう朝か」


翌朝目を覚ますとベッドには俺ひとりで寝ていた。

あれ? 依織は……夢か?

寝起きで意識がはっきりしない。

依織と寝ていたはずだけど、全部夢だった?

ボ〜ッとしながらそんなふうに考えていると、キッチンからいい匂いがしてきて意識が覚醒した。

キッチンを見ると依織が料理している姿が映った。


「夢じゃなかった……」

「睦月さん目が覚めましたか? おはようございます」


俺の呟きに反応して依織が朝の挨拶をしてくれる。


「おはよう」

「朝ごはんを作ったので食べてくださいね」

「あ、うん」


そうか、朝ごはんを作ってくれていたのか。

もう長い間、朝ごはんを食べる習慣がなくなっていたので、一瞬依織の言葉に反応が遅れてしまった。

朝ごはんは卵焼きに味噌汁と納豆だった。

シンプルだが、おいしい。


「睦月さんは和食で大丈夫ですか? それとも洋食の方が好きですか?」

「俺はどっちでも大丈夫だけど」

「それじゃあ、交互に作りますね」

「あ、うん。お願いします」


朝起きて依織とこんな会話をしている自分に現実感がない。

まだ夢の中の妄想の出来事なんじゃないかと疑ってしまいそうになるが、さすがにここまで鮮明な夢はない。

ご飯を食べ終わって身支度を整えることにする。


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