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17 まずい


「いや、今まで食べて来た中でダントツで一番おいしいです」

「そう言ってもらえるとうれしいです」

「いや、本当に絶品だよ」


そう言うと嬉しそうな顔をしていた依織は俯いてしまった。

どうしたんだ? 俺の褒め方が悪かったのか? 言葉が嘘くさかったのか?


「いや本当に美味しいよ。十七年の人生の中で一番だよ」

「…………はい」


依織の作ってくれた料理が衝撃的に美味しいのでこの感動をどうにか伝えたいが、俺の語彙能力不足でうまく伝えられそうにない。

続いて味噌汁に口をつけるが、これまた美味しい。俺が手伝ったとは思えない味だ。おふくろの味など完全に飛び越えている。この優しい味わいが堪らない。


「うん美味しいよ。本当に美味しい。いったことないけど料亭の味以上だよ」

「はい………もう……わかりました」


依織の声が 段々小さくなってしまった。


「依織は本当に料理上手なんだね。おどろいたよ」

「いえ、味噌汁は睦月さんが」

「いや、俺はちょっと手伝っただけだし、俺じゃあこんな味にはならないよ。やっぱり依織ってすごいよ」


やはり人にこの感動を伝えるのは難しいのかもしれない。

でも依織のご飯は本当に美味しい。

これから、しばらくの間このご飯を三食食べることができるのか?

依織が記憶を取り戻したら俺、元に生活に戻れるだろうか?

依織の作ってくれたご飯の想像を超えるおいしさに、初日にして未来の自分が心配になってしまった。

絶品の依織の料理を完食して大満足だ。

生煮えも覚悟していたのに依織がこれほど料理が上手いとは思わなかった。

ほぼ中学生迄の記憶しかないのに、これほどの料理が作れるとは、もしかしたら記憶の無い期間も経験値として依織の中にしっかりと残っているのかもしれない。


「ごちそうさまでした。久しぶりにこんな美味しいご飯食べたな〜」

「はい、お口にあったみたいです。よかったです」

「でも明日から、大変だったらもっと手抜き料理でもいいんだよ」

「そんな、全然大変じゃないです。睦月さんも手伝ってくれましたし」


食べ終わってからも、しばらく依織の料理がおいしすぎて余韻に浸ってしまった。

食後一息ついて、この後する事は入浴か………

この事はずっと病院でも考えていたが、風呂に入らないわけにはいかないので覚悟を決めるしか無い。


「あ、あの……依織。お風呂なんだけどどうする? 少し早いけど用意してこようか?」

「わ、わたしはどちらでも大丈夫です」

「それじゃあ、お風呂入れて来るよ」

「睦月さん、それは私の役目なので座っていてください」

「あ、ああ、ありがとう」


そう言うと、すっと依織がお風呂場に行ってお湯を張る準備をしてくれた。


「あ、あの、お風呂なんだけど、どっちがいいかな。依織が先に入る?」

「私はどちらでもいいんですけど、私が先に入った方が睦月さんがゆっくり出来ますね。それじゃあ先にお風呂をいただきますね」

「あ、ああ、うん」


十分程でお風呂が沸いたので依織が用意をして入る事となったがここで大きな問題に直面してしまった。

今まで俺以外の人間がここの風呂に入った事は無かったので気にした事すら無かったが、音が……音が聞こえてくる。

よく考えるといくらセパレートタイプとはいえワンルームのユニットバスにそれほど防音機能が備わっているはずもなく、依織がお風呂に入っている様子が音で伝わって来てしまう。


「まずい………」

依織への変な感情は全く無い。寧ろ純粋に守ってあげたい支えてあげたいと思っているが、俺も高校2年生の健全な男だ。これは予想もしていなかったが刺激が強すぎる。

お湯の動く音など今まで気にした事もなかったが音により依織の動きが想像できてしまう。

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