No.1 転生したら若返った。
あー疲れた。
転生系でおなじみのブラック企業に務める俺、杉浜隼人は今年で55、転生する平均年齢は20歳くらいで遅くても30には転生する決まりだ。
くそぉ、転生したくて童貞を守ってた俺がバカらしいわ、
「こんなことならもっと女の子の返事しとくべきだったなぁ」
こう見えてもモテてたんだけどなぁ。
...厨二さえなければ。
「ただいま。」
俺には家族がいる。拾い猫の、ピトである。
ニャーと言って俺にすり寄る。
俺の唯一の癒しである。
「おーよしよし。待っててな。すぐにご飯にするから。」
うわっ!炊飯器スイッチ入れるの忘れてた。
キャットフードをボウルに入れてピトにあげる。
こうして俺の一日はおわった。
あー疲れた。
今日はやけにピトが冷たかった。
体が冷たいわけじゃない。終始そっぽを向いていた。
なんだか体がだるい。
早く家に帰ろう。ピトの癒しがあればなんとかなるさ。
「ただいま。」
やけに静かだ。胸がザワザワする。
「ピト?」
いない。どこにも。
「ピト!!」
「すいません。猫知りませんか?首輪に鈴がついてる...」
「あー知らない知らない。忙しいから、気をつけて帰りなさいよ」
くそ!どこなんだ!
「ピトー!!」
フアァァン!!!!
─おじさん!大丈夫か!?
─早く止血を!
─心肺が...
「うぅ、、ここは?」
「お目覚めですか、」
「...エルフ?」
俺は、たしか。あぁ、ピトを探して。車に引かれたんだ。
「えっと。ここは?」
そのエルフは少し動揺していた。
「ここはエルフの里でございます。
...あの、人族なのに怖くないのですか?」
「食べないでしょ?俺の事。」
「ええ。でも昔旅に出た時人族は私たちを忌み嫌っておりました。」
すごく綺麗なエルフだな。
それにしても。
「あの、鏡はありますか?」
「カガミ。あぁエルファタの恵のことですか。分かりました。お持ちしますよ。」
この声のかんじ。俺の息子はついている。とすれば。
「若い。俺。」
そこに写った姿は、ざっと20代の顔立ちだった。
「あ、名乗り忘れてました。俺の名前はすg...」
いや、まて。ここで変な名前判定されたらのちのち面倒だ。慎重に考えて、
「すみません記憶が曖昧で。」
「まぁ、そうでございますか。私は二二=ライム・セイナと申します。二二とお呼びください。」
「あの、色々記憶がちぐはぐで、俺は何故ここに?」
「さて、それが私達も分からないのです。とりあえず里に近づいてくる反応を検知したので駆けつけてみれば、あなたが倒れていたのです。起きた時に事情を聞こうと思いまして。」
とりあえず、衰えてはいるが、若い頃の厨二を整理しよう。
ひとつ、この世界に既に存在する人間に魂が入り込んだ説。
ふたつ、俺の肉体が変形した(若くなり、顔の形が変わった)説。
みっつ、転生したからなんでもあり説。
そしてそれらの場合大抵は特殊能力が備わる。
「あの、この...エルファタの恵?のこの四角はなんですか?」
「鏡で問題ないですよ。それは能力鑑定です。触れてみてください。」
タイミングよすぎぃ!これってフラグ?
「えーと?」
それは、俺にふたつの事実を教えてくれた
『魔力2000 固有魔法 常時回復』
『スキル:厨二病』
なんだ?この魔力値とスキルと魔法。
「え、ちょっとお待ちください?魔力2000?
勇者より強いんじゃ...」
!!?ゆうしゃ!?それより強い!?
やべぇわ。厨二がザワつく。この歳...いや、第2の人生では、夢だった異世界で。夢だった無双が出来るかもしれない。
にゃあ...
森の中で1匹。目を覚ました。