伝説になることを禁じます、登録作業が面倒なので
※1000文字以下の短編企画『なろうラジオ大賞2』参加作品です。
選択キーワード:『伝説』
「伝説の魔獣を討伐しました!
『伝説名鑑』への登録お願いします!」
ギルドの受付にて。
「お名前は?」
「佐藤タロウです」
「では『佐藤タロウ九郎』で登録しておきますね」
「く、九郎……?」
「9人目! 佐藤タロウはあなたで9人目なの!」
受付嬢のアイリスは憤る。
「あの、もう少し何とか……」
「使った武器は?」
「聖剣エクスカリバーです」
「では、『佐藤タロウ(聖剣使い。100人目くらい?)』
で登録しておきますね」
「佐藤タロウ九郎で良いです」
伝説名鑑への登録者数は今や900人を超える。
そのほとんどは、異世界転移でやってきた日本人。
特に、この街での登録者数は多い。
登録作業を兼任するアイリスにとっては、たまったものではない。
「アイリスさん、伝説の魔王軍幹部の討伐クエストに行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい。
ん? ちょっと待って4人で行くの?」
「はい! 聖剣使いに弓使い、盾役とヒーラー。
この4人なら絶対勝てますよ!」
「伝説の勇者の登録作業は大変なのよ!?
せめて1人で何か上手いこと倒してよ!」
「そ、そんな無茶な……」
「仕方ないわね、ヨウ・チューバーを呼んで!」
「アイリス様、ご用命でしょうか?」
「伝説の配信者としてあなたも同行して!
私がここから指示を出すから!」
◇◇
魔王軍幹部のアジト。
『良い? やり合うのは1人だけ。
他の3人は裏方に徹すること!』
「「イエス、マム」」
「ん? 何だお前達は? 伝説の勇者か?」
「いえ、滅相もございません!
わたくしどもは『勇者を倒す魔剣』の訪問販売をしておりまして!」
「ふむ、神々しい光を放っているようだが?」
「だからこそ、です!
聖なる光で油断しているところを、ほらこの通り!」
なるべく痛くないようにバッサリと斬られた盾役を、ヒーラーが必死に手当てする。
「弓矢で狙われても安心!
なんと自動で切り落とします!」
「ほう!」
ガキーン。
脅威的な反射神経により、間一髪で切り落とす。
ほっと胸をなで下ろす弓使い。
「この魔剣が、今なら盾付きで50%引き!」
「買った!!」
目を見開いて興奮した幹部の、一瞬の隙。
見逃さなかった聖剣使いの一撃が貫いた。
「勝った……1人で……」
『よくやったわ!
伝説の話術士として登録してあげる!』
◇◇
「なあ知ってるか、あの街?
“伝説の受付嬢”がいるってもっぱらの噂だぜ」
「おもしれぇ、俺の伝説の槍さばきを披露してやろう」
1週間後、伝説名鑑への登録者数が1000を突破した。
お読み下さりありがとうございました。
アイリスは何だかんだで受付嬢の仕事を楽しんでいるようです。
下部のほうに他の「なろうラジオ大賞2」参加作品のリンクを貼っておりますので、ご興味がありましたらぜひ。