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お、お前は……

 そして、日曜日。


 電車に揺られ、駅に着く。電車を降り、パスモでゲートを通過し、モヤイ像前へ。

 こっち側はハチ公前のほぼ逆で、あちらより混雑はない。――といっても、繁華街の待ち合わせ場所だけあり、そこそこの人混みはある。


 さて、チョコラにナデ子先輩は何処に。

 うーん、事前に顔写真を送って貰えば良かったな。そしたら、スムーズだったのに。


 まぁ、お互いの電話番号交換したし、かけてみるか。


 スマホをポケットから出したところで、会いたくない奴が目に入った。クラスメートの石田美鈴が側にいたのだ。


 彼女はオレに気付いたらしく、近寄ってきた。


「あら、山田じゃない?」

「うっ、石田かよ……」

「そんな露骨に嫌な顔をしなさんさ。私はアンタなんか、眼中にないのだから。だって、今からあの上杉信玄様と。キャっ!」

「はい?」

「い、いやなんでも。兎に角、今はアンタみたいな地味男君に構っている暇はないのよ。しっし」


 なんだろう……どうにも嫌な予感しかしないのだが……


 不安な気持ちを抱えつつ、この前教えてもらったチョコラの電話番号にスマホで連絡する。

 すると、目の前にいる石田が持っているポーチからスマホを取り出した。


 おい、待て。なんなんだ、この流れは……


「はい、もしもし。あ、上杉さん。約束通り来てあげたわよ。どこ?」

「目の前じゃね?」

「え?」


 石田は目を張ってオレを見た。


「山田は山田だが、上杉信玄であるかもね……」

「はい?」

「そ、それじゃあ、チョコラさん。オレはこの辺で」


 スマホをタップし、通話を切り上げ、とっとと石田の前から逃走しようとしたが、もう遅い。


「どういうことなのよ? 説明しなさいよね?」


 石田はオレのシャツの袖を摘まみ、目を剥く。

 どうにも、この前プレーしたバイオで、悪鬼に豹変した恋人かのように石田が見えた。


 美人さんだけに、余計怖いものがあった。

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