一件落着
午後9時。ゲーム機を起動し、ヘッドセットを着用する。
「さて、なんのゲームでケリをつけるの?」
石田が問い掛けてくる。
「格ゲー。スパ5でいこう」
どうだ、石田。流石のお前も、格ゲーなんかやり込んでいまい。ならば、この勝負、やり込んでいるオレの勝ちだな。勝って、高笑いするのは、オレの方だぜ。
と、思っていた時期がオレにもありました。
しょーりゅーけん。
石田にすかされ、虚しく空を切る。そこを上手く掴まれ、スクリュードライバーを決められた。
立ちスクリューだと……
結果、ストレート負け。
石田のヤツ、格ゲーまで上手いのかよ。この分じゃ、スト5からスマブラに変更しても、ボコられる未来しか見えねぇ。
「くぅ、ならば石田はホンダをやれ。オレはゴーキさんでいくぜ」
「はいはいー」
ホンダさんになら、いくらなんでも勝てるだろ。と、ゲームを開始するも、なんか鯖折りを決められ、オレのゴーキが苦しそうに喘いでいる。
またまた負けた。
その後も石田に挑むが、19連敗した。が、20戦目で奇跡が起きたのだ。
なんとオレが操るチュンリーが、石田のザンギに勝ってしまった。
「ふぅ、いい戦いだったわ。それじゃ、そろそろ切り上げよっか」
「ああ、そうだな……負けたけどスッキリしたよ。文芸部の件は、明日、生徒会室に行って、相談することにするよ」
「なに言ってんのよ、山田。そんなことする必要ナッシング。だって、貴方が勝ったのだから」
「勝ったもなにも、1勝19敗なんですけど……」
「でも、私のザンギから1つでも勝てるなんて、やるじゃない。そもそも、山田が勝ったら、私がパパに提案してみる約束なのだし、実行するね」
「いいのか?」
「うん。私もパパの言いなりになってばかりじゃ、悔しいしさ。言うだけ言ってみる」
「そうか。有り難うな、石田。けど、Vの一件もあったし、親父さんが怒り出したら、そこで撤退しろよ?」
「うん、そうするね。じゃ、お休みー」
そこで会話が途切れた。
時計を見たら11時に差し掛かっていた。
オレは1時まで勉強してから、ベッドに潜り込んだ。
そして3日が過ぎた。
校舎の廊下を歩いていると、後ろから肩を叩かれた。何事かと振り向くと、笑顔を浮かべた中野がいた。この様子だと、いいカンジになったみたいだな。
石田が親父さんにちゃんと掛け合ってくれたんだな。
「あのね、山田君。聞いて、聞いて。図書室でだけど、文芸部が活動を続けてもいいことになったんだー。昼休みに顧問の先生からそう伝えられて、私、嬉しくって」
「それはなにより。良かったな、中野」
「うん、ありがとう。でも、どうしてだろ? なんで部活存続が、急に認められたのかな。山田君、なにか心当たりない?」
「さぁ、わかんね。なんにせよ、いい話には違いないじゃないか、中野。まぁ、執筆は程々にして、試験勉強も頑張れよ」
「ですねー」
中野は照れ臭そうに笑った。それを見て、オレもつられて笑顔になった。
これで一件落着といったところか。
しかし、今回も石田に世話になってしまったな。いつかまた、恩を返さなきゃな。
その様に心に決め、中野と談笑しながら、廊下を歩いていった。




