ゲームで勝負よ!
翌朝、教室に石田がいたので、思い切って「文芸部は廃部にしないで、今後は図書室で活動すればいいんじゃないだろうか? その線で、お前の親父さんに話してみてくれないかな?」と相談してみた。
石田はハーッと大きく嘆息し、オレを見据えた。
「まぁ、その提案自体は悪くないわよ。私も実績はないけれども、歴史の長い文芸部を廃部しちゃうのは、どことなく気が引けていたしさ。けど――」
「けど?」
「この前のことで、パパと対立したばかりなのに、その私が文芸部のことにまで口を挟むのもどうなんだろ? 正直、厄介な事になると思うんだよね」
あー、うん。やっぱりそうだよなぁ……石田とオレは、彼女の親父さんと、チョコラがVを続けるかで揉めたばかりだしだなぁ。
眉間に皺を寄せつつ、彼女に文芸部の同人誌を手渡してみる。
「なにこれ?」
「あー、文芸部の合同誌的な本。部員で金を出し合って、作ったんだってさ」
「へー、こんな活動をしていたんだー。随分と熱意あるじゃない」
石田はパラパラと頁を捲った。
「まぁ、読んでみて。それから、石田なりの結論を出してくれよ」
「そうね、分かったわ」
そう言い置くと、石田は始めの頁から本を読み始めた。――のはいいのだが、あのバカ、授業中にも関わらず、熱心に読んでやがる。
なんか、数学の先生がそのことに気付いたのだが、スルーしちゃうし。家に帰って読むとか、ちょっと自重したらどうなんでしょうかね。
終業のチャイムが鳴り、放課後となった。なんだか石田は目を輝かせている。
「読んだ、読んだ。中野小町さんの作品、メッチャ良かったわー」
「だろ?」
「確かに、これだけの筆力ある人がいるのに、廃部は勿体ない。勿体ないんだけど……」
「けど?」
「やっぱり、私からパパに廃部撤回を提案するのは、リスキーよね」
「……だよなぁ。なら、正攻法だけど、生徒会でこの議題を取り扱ってもらうようにするかー」
「いや、チョイ待ち。誰も提案しないとは言ってない。リスキーと言っただけよ」
「ん? つまり?」
「私だけリスクを背負うのもなんだし、ゲームで勝負しない?」
「というと?」
「貴方が勝ったら、私はパパに文芸部の件を提案してみる。逆に負けたら、私はパパに何も言わない。それでどうかしら?」
「のった!」
机をバンと叩く。だが、瞬時に、それは無謀だと気付いた。
相手は神ゲーマーのチョコラ。チョコラ、イコール石田なのだ。単純に石田も神。オレの敵う相手じゃないし、実際、これまでも勝ったことがない。タロウ鉄道を除いて……
「おーほほほほ。随分、自信満々みたいじゃない。ならばいいでしょう。この勝負、受けてあげるわ」
石田はどっかの少女漫画のキャラみたいな高笑いした。正直、ムカつく。この勝負、負けられない。サムライブルーを舐めるなよ。




