表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/59

ダークデモンズ

 例の事件から1週間過ぎた。

 イケボの人気Vである織田ヨシモトが、昨夜突然引退発表をしたのだ。この件は、あの石田の親父さんが絶対絡んでいるんだろうと察し、背筋が寒くなった。


 大きな権力と大人の事情。そんなものに巻き込まれれば、オレなどただの木っ端でしかない。だが、ガキはガキなりに精々抗うのみ。


 そんな事を思いながら、購買で買ったパンを頬張る。いやー、昼下がりのぼっち飯っていいよねー。


 学校の屋上に設置してあるベンチに独りして座り、昼飯を食っていると、石田がやって来た。


 彼女は「ここ空いているかしら?」と尋ねる訳でもなし、当然の如くオレの隣に座る。

 コイツ、遠慮というものを知らんのかと感じつつも、とあることを思い出したので、訊いてみることにした。


「あのさ石田。ちょっと訊きたいんだけど、いいかな?」

「何の話かによるけど」

「ゲーム実況でさ、プロムソフトのゲームしようかと思ってさ。ダークデモンズってやつ」

「いいじゃない! いいじゃないのよ、ソレ。是非やりなさいよ! あのゲームはマジ名作だから!」

「ああ、ゲームの評判がいいのは知っている。たださ……」

「なによ?」

「すんごく死にゲーだって話なんだけど。そんな難易度高そうなゲーム、初見で実況するのってどうなのかーって」

「そこがいいんじゃない。何事もトライアンドエラーだって」


 うーん、確かに一理ある。特にコイツは、一流の腕を持つゲーマーな訳で、その言葉に妙な説得力があった。だが、それでもダークデモンズをプレーしてみることに戸惑ってしまう。


「今ならストアでセールしてるから、お手頃価格で入手出来るし。そしたらもうやるしかないでしょ。今っしょ!」

「お、おぅ……」

「それでも」

「それでも?」

「どーしてもアンタが不安だったら、私がヘッドセット越しにナビゲートしてあげるからさ。大船に乗ったつもりで、私にまーかせなさーい」

「お、おぅ。神ゲーマーのナビとか、心強いな。んじゃあ、思い切ってダークデモンズ買って、初見プレー頑張ってみるか」

「うんうん。それがいいよ」


 石田は満面の笑みを浮かべている。

 だが、何故だろう。その笑顔には、どうしようもない程の邪気が含まれている気がしてならなかった。


「ところでさ。あの……織田ヨシモトさんとパパの一件は、本当に感謝して……」

「あの一件はとっくに片がついた。もう話すのも、礼も不要だって、5日前に告げたはずだが?」


 石田の声を遮るようにして、不機嫌な調子で口にした。


「……そだね。ゴメン」

「どうしてもお礼をしたいなら、ダークデモンズのナビで頼む」

「……だよね。ゲーマーならゲームで恩を返す。それでいいんだよね?」

「おうよ」


 そう応じると、石田は心底嬉しそうな顔をした。うん、やっぱコイツは、弾けるような笑顔が似合う。明るさを取り戻してくれて、何よりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ