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バカやるし、スプラもやる

 電子音がかしましく鳴っている。オレは目を覚まし、上半身を起こした。いつの間にか寝入ってしまったか。

 鳴っているのはスマホであった。時計を見ると、10時半になっていた。チョコラの配信が終わってから2時間経ったのか。


 ちょっと寝ぼけ気味ではあるが、スマホを手に取り、応答する。


「はい、もしもし」

「夜分にゴメン。えっと、石田だけど、今いいかな?」

「ああ、構わないよ。どうした?」

「今日のチョコラの配信見た?」

「まぁね。でも、風邪でお休みとかねぇ……」

「うん。ちょっとズル休みしちゃったんだ」

「なにがあったんだ?」

「あ、うん。その、うちらのハコでさ、ちょっと……」

「うちらのハコ? ああ、チョコラの事務所の方か」


 ナデ子先輩から事情を既に聞いていたが、わざと知らないふりをしておく。


「うん、そう。で、さっきナデ子先輩が心配して電話かけてきてくれてさ。そしたら彼女、お昼に山田から電話をもらって、今回のことある程度話ちゃったって。そう聞いてさ」


 おいおい。なんだバレてるじゃねーかよ。

 ならばと惚けるフリは止めにした。


「ああ、まぁね。織田ヨシモトのこと、聞いたよ。で、実際のとこ、どんなカンジなんだ?」

「あのね……なんかいつの間にか、織田ヨシモトと園田チョコラが出来ているって噂が仲間うちにひろがっちゃって。で、その噂話、パパの芸能プロダクションの知るところになっちゃって。それで、パパの耳にも入っちゃってさ」

「なんだって!? じゃあ、ひょっとして……」

「ひょっとして、なによ?」

「その織田ヨシモトと本当にデキていたとか?」

「んな訳ないじゃん! あたしは上杉信玄様一筋だっての!」


 そこで石田はしまったと思ったのか、息を呑んだ。そして、コホンと咳払い。


「ま、まぁ、上杉はナカナカよね、なかなか。でも、決して最高とか、イケてるとか思ってないんだから。分かっている、そこんとこ?」

「んなこと分かってるっての。で、その織田ヨシモトとやらがどうしたって?」

「なんかアイツの仲良しグループみたいのなのがあって、どうやらそこが噂の火元みたいなの。それに、その噂話がパパの耳にも入っちゃって、もうVなんか辞めさせるってカンカンだし、最悪。したら気持ちも沈んでいっちゃってさ……」

「うん」

「それでも、ライブ配信の時間も来ちゃって。もうどうしていいか分からなくなって。それで配信をあんなかたちにしちゃってさ。苦しい言い訳なんかしてさ。ファンの皆に申し訳ないよ……」

「うん」


 うう、ぐすぐすと、スマホの向こうから聞こえてきた。

 石田が嗚咽を漏らしている。こんな時、どう声をかけるべきなのだろうか。その術をオレは知らない。だけど……


「なぁ石田。久々にスプラやるか?」

「今はそんな気分じゃない」

「いいからいいから。やってみようぜ。オレを倒せば、少しは気が晴れるんじゃね?」

「いや、低レベルプレイヤーのアンタを倒してもさ……」

「とにかく切るぞ。ほんでログインしてこい。どうしても嫌なら来なくってもいい。けど、オレは待ってる。待ってるからな」

「ちょ……」


 そこで通話を切った。ベッドから起き上がり、テレビの前に座って、ゲーム機の電源を入れる。

 そして、石田を待った。



 それから3ゲームほど消化したが、アイツはまだログインしてこない。寝てしまったのだろうか、或いはゲームする気力もないのだろうか。それでもオレはアイツが来るのを待っている。


「ったく、しょうがないなー。久し振りにアンタをコテンパンにしてあげるから、覚悟してよね」


 ヘッドセットから石田の声。オレはそれを聞き、口の端を上げた。


「それはこっちの台詞だっての」


 そう告げ、ギュッとコントローラーを握った。


 明日、学校で石田と顔を合わせたら、どう対処するべきか真剣に話してみよう。けど、今この時は、バカみたいにスプラをやって、騒いでみよう。


 そんな風に思った。

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