表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/59

元気なしの石田

「ウッス、石田」


 朝、昇降口で石田と出くわしたので軽い挨拶をする。


「お早う、山田」

「昨日の配信見たよ。また好評だったな」


 互いにVをやっていることは秘密なので、そこは声を潜めた。


「あ、うん。ありがと」


 石田がそう応えるも、なんとなしに声に張りがない。どうしたんだろうかと彼女を見ると、伏し目がちであった。心なしか落ち込んでいるように見える。


 いつも元気一杯の彼女とは、どことなく違う印象を受ける。

 とはいえ、人間誰でも悩み事の一つや二つあるもので、それが思春期なら尚更。一人で考えたい事もあるだろうし、こういう時は放っておいた方がいいかもしれない。


 だが……


「なんかあった?」


 ついつい訊いてしまう。

 ああ、「余計なお節介しないでよね!」とか言われそう。

 そう思って身構えたが、石田は視線を落としたままだった。


 靴を上履きに履き替え、二人で廊下を歩く。すると、たどたどしく石田が声を発した。


「あのね、山田」

「お、おう」

「い、いや。やっぱ何でもない」

「そうか……けど、石田さ」

「なに?」

「なんかさ。些細な事でもいいから、困ったことがあったら相談してくれよ。普段はお前から助けられてばかりだから、力になりたいんだよ、オレ」

「うん、ありがと。けど、もうちょっとだけ自分でなんとかしてみるから」

「……分かった。だけど、無理はするなよ。もし、オレに頼りたくなったら、いつでも相談してくれ」

「うん」


 話しているうち教室に着いたが、石田は目を伏せたままだった。元気者の彼女がそんな調子だと、どうにも気になってしまう。




 そうこうしているうち昼休みになったので、教室を出て、人気のない体育館裏へと行った。

 ポケットからスマホを取り出し、トークアプリでナデ子先輩を呼び出してみる。


「もしもーし。どうしたの、上杉君?」

「もしもし。あの、ナデ子先輩。単刀直入に伺っても宜しいでしょうか?」

「んーと。それは話題によるねぇ」

「えっと……実は石田のやつ、妙に元気がなくてですね。ナデ子先輩なら、その辺の事情、知っているかもと思いまして」

「ああ、うん。知ってるよー」

「本当ですか? 石田になにか問題でも起きたのですか?」

「問題って言えば、まぁそうかな。上杉信玄君が秘密厳守してくれれば、喋ってもいいけど、約束出来る?」

「はい、勿論です。この会話は、自分の胸の中に閉まっておきますので、どうか」

「分かりました。あのね、上杉君。織田ヨシモト君って知っているかな?」

「はい、知っています。チョコラとナデ子先輩と同じ事務所のVTuberですよね? イケメンキャラで人気の」

「そう、それ。で、その織田ヨシモト君が、チョコラ――というか、石田美鈴ちゃんをいたく気に入ってしまってですねぇ、激しくアプローチしているのですよ。『今度、デートしようよ』とか『飲みに行こう』とかってね」

「そんなことが? それで石田はなんて?」

「正直迷惑に思っているみたい。でも、V同士だし、同じハコにいるしで、石田ちゃんは強く言えなくてさ」


 そうだったのか。だから、石田のやつ元気なかったんだな。

 どうにかしてあげたいが、今回の件について介入することなど無理そうだ。そもそもオレは、チョコラがいるハコに所属している訳でもなく、単なる外野でしかないからな……


 難題が湧いて出てきたせいか、眉間に皺が寄ってしまう。


「ねぇ、上杉君。石田ちゃんから聞いたんだけど、貴方、同じ学校に通っているんでしょ。この件は、貴方が直接どうこう出来る話じゃないんだけど、せめて石田ちゃんが学校にいる間は優しく接してくれないかな?」

「分かりました。オレ、少しでも石田の力になりたいんで、なるべくアイツのケアに回ることにします」

「ふむふむ。そっかー。いやー、上杉君は漢だねぇ。まっ、そんな訳だから、石田ちゃんのこと宜しくね」

「了解です。それじゃあナデ子先輩、失礼します」

「はーい」


 そこで画面をタップし、通話を切り上げた。うーん、あの石田がそんなことに巻き込まれていただなんて。……まぁ、素は美少女だし、当然男子から言い寄られることもあるか。

 けど、他の事務所の問題だし、オレはタッチ出来ない。なら、せめて石田に優しくしてみよう。


 そう考えをまとめ、教室に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ