バイオなハザード
生物災害。つまるところ、バイオなハザード。
今日はこれの7をプレーし、実況配信する。
ウチのチャンネル的には、レトロゲーの初見プレーを主に配信している。この前これの2を実況したばかりだし。
だが、たまには意表を突いてみるのもいいだろうと考え、新しい7をすることにした。オレ氏、中々の策士。
その証拠に、同接の人が増えている。普段、オレはレトロゲーばかりしているから、物珍しさもあったのだろう。
さぁ皆、ガンガンオレに投げ銭してくださいね。
だが、障害があった。それはあの花園チョコラもライブ配信していたのだ。うっかり時間が被ってしまった。
やはりアイツの方のライブ配信も気になるので、そっちの音声は消して、チョコラの配信を見ながら配信するという訳の分からないことをしている。
「皆、今晩は~。元気してる?」
陽気に手を振ると、スパチャの文字がガンガン下から上へとスクロール。
「上杉さん、イケボ。今日も楽しみにしています」との文字と共に、早くも高額な投げ銭をしてくれるファンがいてくれて有り難い限りである。
「あ、メロンパンさん、いつもありがとうございますー。でも、オレってそんなにイケボかな?」
投げ銭してくれたユーザーさんには、ちゃんと構う。これはスパチャの鉄則っぽい。
「それじゃあ、早速ゲームをプレーしちゃうよ。今日はバイオな7。これ、メッチャ怖いらしいねー。でも、初見ノーデス・クリアを目指しまーす」
と陽気な声を出すと、隣のモニターで、チョコラがバイオな4のパッケージを取り出していた。
ゲッ、アイツも生物災害かよ!? また被った。
悶絶しながらぶっ倒れそうになったが、そこはプロ根性。
チョコラの配信などチラ見してない。そういった素振りを見せないよう努める。
それはそれでゲームスタート。
林道を車で行き、行き止まりでプレーヤーが降りる。そこから少し行くと、どう見ても怪しげな洋館が……
内心ビビりが入りつつ、進めていく。
なんか洋館の中に下水的な濁った水地帯があって、水中からいきなり死体が上がってきた。
「ぎぃやあああああ!」
マジに絶叫すると、スパチャの欄が草だらけになった。「ビビりすぎでしょw」とか。
……だが、見てろよ皆。ノーデスでクリアしてやるからな。
とかゲームを進行させると、主人公の行方不明となった彼女が出てきた。彼女なのに、何故か悪鬼の表情を見せながら襲いかかってくる。コエーよ。
どうやら、彼女を銃で撃退しないと話が進まないらしい。銃の照準を定めるも、ミスってしまう。そして、般若の顔をした彼女が襲いかかってきて、確実にダメージを喰らった。
ヤバい、ヤバい、ヤバい。画面の縁が赤くなった。次の攻撃喰らったら死ぬー。
焦ったのか、上手く照準を合わせられない。その間に彼女が突進してきて、ゲームオーバー。
はい、死んだー。早くも死んだー。
何回かリトライして、どうにか彼女を倒したが、今度はどっかのおっさんが襲撃してくる。おっさんに追い回され、ガレージでまた死亡。
ひぃひぃ言いながら、おっさんを倒したら、今度はヘドロみたいな化け物に襲撃され、またゲームオーバー。メッチャ死んでいる。なにがノーデスクリアだよ……
死んでいる間、ロード画面になり、チラリと隣のモニターを見ると、イケメンの金髪お兄さんが、ナイフでゾンビを次々に殺害していた。
バXオでナイフプレーしながら無双するとか、どんだけ上手いんだよ、花園チョコラめ。鬼か、コイツは?
こっちが、おっさん第二戦に突入しようとしたところで、ライブ配信終了の時間が来た。
「はい、どうも。オレの勇猛果敢な戦いっぷりはどうだったかな、皆?」
ヘッドセットのマイクで喋ると、チャット欄が「ビビり過ぎて草」やら「ノーデスクリア宣言とはなんだったのでしょう?」やら「死にすぎて草」とかの文字が並び、オレは項垂れた。
「今日は生物災害7の実況プレーでしたー。皆、また見てねー。シーユー・アゲイン」
陽気に喋りながら、放送を打ち切った。それと同時に、自分の腕前のダメダメさにがっくりと肩を落とす。