カラオケ
放課後になり、メッセンジャーバックを肩にかけ、とっとと教室を後にする。正直、音痴なのが知れ渡り、クラスに益々居場所がなくなった感すらある。
グランドを駆け抜け、校門のところで佇み、石田を待つ。
それから、大体10分くらい経過した頃、石田が駆けてきた。
「ゴメン、待った?」
「いや、大して」
「それじゃあ、行きましょうか?」
「何処に?」
「カラオケボックスよ。こうなったら、二人で特訓しましょ?」
「え、嫌だよ。石田の歌声酷いじゃん。ジャXアンリサイタルじゃん」
「なんですって!?」
石田が怒髪天を衝くかんじになったので、オレは恐れをなし、「い、いや。やっぱ一緒に行こうか」と嫌々感満載な声を出す。
石田はニコリともせず、歩き出したので、その後に続く。これは……まったく誰も得しない展開になりそうだな。
とまぁ、カラオケやにやって来て、さっさとカウンターで受付し、さっさと割り振られた部屋に入った。
石田がメニューを差し出してきたので、取り敢えずポテトを注文し、廊下へ。フリードリンクなので、コップに炭酸飲料を注ぎ、部屋に戻った。
「はーい、チョコラちゃん、上杉君、どうもー」
唐突にナデ子先輩の声が聞こえたので驚いたが、スマホからだった。石田がチャットソフト立ち上げ、スピーカーから声を出しているんだな、これ。
「チョコラちゃん、なんなのこれ?」
「上杉さん、これはリモートよ」
「はい?」
「こうしてナデ子先輩から私達の歌を聴いて貰って、先輩からアドバイスを貰うの。リモートでコーチしてもらうってわけ」
ふむ、成程。それは悪くないアイディア。
実際、ナデ子先輩の「歌ってみた」は、上手いからな。彼女の歌唱力には、一目置いていたので、いいコーチになりそうだ。
得心し、頷いた。
「石田、ドリンクは?」
「それより今は選曲よ。ああ、もう。ちょっと話しかけないでよ」
「……ほなら、取り敢えず君の分のウーロン茶でも取ってきます」
なんか石田が目を血ばらせながら、リモコンで選曲したので、彼女の分のドリンクを注ぐため廊下に出た。
ドリンク・マシーンからウーロン茶を注いで部屋に戻ると、実に耳障りな歌声が部屋に響いていた。石田先生のリサイタルは、それはそれはヤバいかんじである。
音程が外れているのは、まだ分かる。それが音痴の所以なのだしな。だが、リズム感まで皆無。字幕と歌声がさっぱりシンクロしてないぞ……
一曲歌い終えた石田はこちらを向き「どうだった? 大分良くなっていたでしょ?」と質してきたので、「せ、せやな……」と曖昧に頷いておいた。
さて、次はオレが曲を入れるか。ここはアニソンを一曲。
というわけで、ワイ君も1曲歌い上げた。うむ、いい感じじゃね? そもそも、学校では合唱曲だから駄目だったんだよ。アニソンなら問題ないんだって。
歌って爽やかな汗をかいて、実に心地いいな。
とか思っていたら、スマホから声がした。
「うーん、二人とも駄目だねぇ。音痴だねぇ」
な、なんだと?
ナデ子先輩の声に固まってしまう。いやいや、石田はともかく、オレはイケてたでしょ?
「えっとねー、二人ともまず音程がサッパリ合ってないから。まずはオリジナルの曲をもう一度聴いてみてね。それからもう一回歌ってみて。次は演奏の音をよーく聴きながら、歌ってみてね。カラオケはボーカルメロディーも演奏されるから、それをよーく聴いてね」
「はい……」
「う、ウッス」
石田とオレは素直にそう返し、互いにスマホで曲を聴いた。
2,3回オリジナルの曲を聴いて、把握したぜ。今度こそ大丈夫。
そう意気込んで、もう一度同じ曲を歌ってみるが、またしてもナデ子先輩からダメ出しをされた。
いや、しかし。確かにカラオケなら、ボーカルのメロディーラインが聞こえるな。あれに沿って歌えばイケるかも。
ボーカルメロディーを意識しながら、2,3回歌うと、ナデ子先輩が拍手をしてくれた。
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