歌ってみない
学校から帰って、机に向かい勉強をした。
参考書ばかり見ていたので、目が疲れ、眉間を指で揉む。
とそこで、スマホが振動。画面を見ると、LINEの通知が入っていた。石田からだ。
そこそこキリのいいところまで進んだし、ラインでもしてみるか。――と思ったのが間違いでした。
ライングループにいって、そこにナデ子先輩もいて、VTuberのあり方とか配信のネタとか喋っていると、彼女がとんでもない爆弾を落としてきたのだ。
「そういえば二人は『歌ってみた』をやっていないよね? やった方がいいと思うのですよ」
何気ない一言だと分かっている。だが、それだけでフリーズしてしまった。
何故ならオレは超絶音痴だからだ。
「い、いや、その……ナデ子先輩。歌ってみたとか、著作権が大変かなーと思いまして……」
取り敢えず苦しいいい訳してみる。
「あ、その辺は殆ど大丈夫だよー。著作権管理団体と動画配信会社が包括契約しているから。それより問題なのはオフボーカルのカラオケ音源の方かなー。それについては、原盤権ってのがあってですねー」
「はぁ。その辺はCDとかダウンロード購入した歌についているカラオケを使えば問題ないんですか?」
「ブブー。それは駄目なのです。あくまで音源を使ってもいいよっていう使用許可ないと駄目です。その辺ことを解説してあるサイトのアドレスを送ってあげるから、勉強するといいよ」
「済みません、ナデ子先輩。宜しくお願いします」
恐縮していると、なんかチョコラという奴が煽ってきた。
「ぷーくすくす。上杉さんはそんなことも知らなかったんだー。ダサ」
「やってなかったんだから、仕方ないだろ。――って、待てよ。なぁ、チョコラちゃん。なんか君も歌ってないよね?」
「え、ええ!? そ、そうだったかしら?」
「そうだって。なんなら動画サイトに行って、君のチャンネルの動画をチェックしてきてみる?」
「あ、いえ、いいです。考えてみれば、歌ってないかもですね……」
「なんで歌ってないの? 君の芸能事務所なら、原盤権どころかバックバンドに演奏さちゃうことすら出来るでしょ?」
「あ、うん。ま、まぁ、そうなんだけどさ」
「じゃあなんでやってないの?」
「う、うるさいわね。このチョコラが歌ったら、美声過ぎてファンが失神しかねないからよ」
「美声なら、普通にスパチャで披露すればいいじゃん。その方がファンも喜ぶしさ」
「あ、用事。急用が入ったわ。それじゃあね、上杉さんにナデ子先輩。またね」
と言い置き、チョコラはとっとといなくなってしまった。
まぁ、彼女に特段大問題が起こったような様子でもなかったので、それからはナデ子先輩と他愛もない話を暫くしてから、スマホの電源を落とした。
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