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中二病ノート

 ぐるっとクラス全体を見回してみる。えっと、1年の時の同級生は、と。


 まず、女子グループ3人いるが、地味っぽいかんじなので問題ない。どちらかといえば、腐女子に属するグループだ。堂々と薄い本を教室に持ってきて、キャッキャと言っている。


 もう一人は、大矢武人、か。アイツはオレと同じくボクシング部の仲間だったな。まぁ、アイツは硬派を気取っているのか、寡黙なタイプだから問題なかろう。


 つまるところ、このクラスの中で、高1まで普通に高校生活をエンジョイしていたオレのことを吹聴する奴などいない。


 オレはこのクラスでは、陰キャ。下手に目立つより、それでいいんだよ、それで。


 まぁ、友達を作って、一緒に騒ぎたい気持ちもあるが、今はオレがVTuberの上杉信玄だと知れ渡る方が怖いからな。


 いちいち空気だの地味男だの言われるのはしゃくだが、身バレすることの方がマズいので、致し方ないところだろう。


 昼休み。ぼっち飯を食いながら、そんな風に周りを観察していた。

 今日は母さんが夜勤だったので、購買でパンを買い、それを食している。


 パンを食べ終えてから、一冊のノートを取り出した。実のところ、最近、小説的なものを書き始めたのだ。


 理由は至ってシンプルで、「TRPGを配信の中でやってみてはどうだろうか?」と思い付いたからだ。そんな訳で、ファンタジーゲームの序盤を書き出しているうち、少しハマってきたところだ。


 けど、我ながら文才ねーな。なんだよ、スライムが降ってきてって。スライムが空を飛ぶとか聞いたことがねーよ。


 小説書くくらい楽勝だと思っていた時期がオレにもありました……


「ねぇねぇ、山田。なに書いているの?」


 振り返ると石田が興味津々といった顔をしていた。


「書き取りです。現国で足引っ張ってはマズいからな」

「フムフム、成程ねー」


 石田はノートを覗き込む。


「ウエストレイク歴1400年。王都から遙か離れた寂れた村で、一人の若者が一心不乱に剣を振るっていた。その若者の名前はハガネ。後に英雄となる者の名前だった、と」

「覗き見るなーーー!」

「アレでしょ、それ。終いには、主人公の剣が真っ赤に燃えて『踊れ炎よ。喰らえ、我が必殺の刃。闇よ滅せよ、バーニングブラッド!』とかなるんでしょ? はい、中二病きましたー。ゲラゲラ」

「うっせぇな。悪いかよ」


 笑い転げる石田に対し、舌打ちをした。


「どうしたん、美鈴? 話の途中で山田なんかに絡んでさ」

「あ、悪い、真弓。――で、なんの話だっけ?」

「つかさ、なんで美鈴が地味男君の山田と喋ってんの? 最近、しょっちょうだよね?」


 ギャルっぽい派手目な米沢真弓さんは、嫌悪感満載な顔でこちらを見た。


「ああ、それいえてるー。あれあれ? ひょっとして、美鈴ってば、地味男のことが気になっているんじゃないのー」


 石田の友達である秋朱音さんも話に乗っかってくる。この子も派手なネイルとかしている。

 石田を頂点として、その次の地位にギャル達と陽キャ軍団がいる。あとは、普通、陰キャというクラスのヒエラルキー。ありがちな構図だ。


「んなことないって、朱音」

「へー、美鈴が地味男君をねー。チョー意外。だけど美鈴、こんな空気みたいなヤツ、気にかけてもしゃーないって。それよりさ、他校から合コンの話きてんだよねー。のってみる?」


 なんか石田が身体を震わせている。

 と思った次の瞬間、バンと机を叩き、立ち上がった。

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