デカい借り
それからどうにかこうにか配信を終えた。スマホのレビューした後、いつも通りレトロゲーム初見プレーをした。
大好評とはいかないまでも、そこそこの反応があったのは喜ばしい限りである。
特に石田が送ってくれた風景写真をワイプして披露したのが好評だった。アイツ、カメラの腕前までもいいかんじだな。
そして今、先程まで配信しながら弄っていたスマホが、机の上で鎮座している。
散々いじくり倒してからアレだが、やっぱりこれはチョコラ――いや、石田に返すことにしよう。
うう、ヌルヌル動いて気持ちよかったなー。惜しいなー。
石田の写真を見るに、広角とか超広角とか、3つのレンズは素直にスゲェわ。
そう心で嘆きながら、スマホを丹念に拭いた。液晶画面は専用のクリーナーで吹く念の入れよう。
そうしてピカピカのスマホを丹念に箱に詰める。それこそ、新品同様に。
翌日の放課後。
石田とほぼ同じタイミングで教室を出て、玄関口の先のグランドを横切り、校門を出た。
石田の後をコソコソと付けていき、友達と別れ、彼女が一人きりになったところを見計らい、背後から声をかけた。
「う、うっす」
「よっ、山田。昨日の配信、なかなか良かったじゃない」
「ああ、それもこれも石田から借りたスマホのお陰だ。で、考えたんだけどさ」
「なに?」
「ゴメン、やっぱスマホは受け取れません。そこまで甘える訳にいかないっていうか」
ショルダーバッグを開け、スマホを箱ごと石田に差し出した。
「キモ。そのスマホ、もう変な汁とかついているんじゃないの?」
「んなことないって。配信中に弄っただけだし。変な汁とかつく間もないっての」
「兎に角、中古の返品は受け付けませーん」
「え? じゃ、じゃあ、どうしたら……新品を買って返せと?」
そこで石田は踵を返し、こちらに向き直った。
「うーん、そうねー。じゃあ、そのスマホの代わりに、やっぱ対価は受け取ろうかなー」
「あ、ああ。そうしてくれると助かる。どうすればいいかな?」
「じゃあ、上杉信玄様が、あたし――じゃなくて、モモに甘い声をかけて頂戴。それが、そのスマホの報酬ってことで」
「え? そんなんで……けど、それだけじゃあ、スマホ代なんかと釣り合わないじゃないか」
「いいから、いいから。私にとって、上杉信玄様から甘い言葉を囁かれるとか、最高のことなの。それこそ、スマホくらいじゃ追っつかないことなのよ」
うーんと唸ってしまう。だが、ここで石田に無理矢理スマホを返そうとして悶着してもスマートじゃないよな……ならば、石田の好意に甘えるしかないか。
「……一応了解した。スマホ、有り難く頂くことにするよ。どうもありがとう」
「うんうん、それでいいのよ、それで。素直に受け取っておきなさいよね」
「で、なんだ……信玄が甘い台詞を言って、その音声ファイルを送ればいいのか?」
「そう、それでお願い。そうねー、この前は3つほど甘い台詞を頂いたから、今回は5個で」
この前、3つ石田のリクエスト通りの台詞を録音したが、アレはアレで結構恥ずかしかった。それが今回は5個か……
意外と難儀だな。
難しい顔をしていると、石田がオレの肩を叩き、軽やかに横をすり抜けていく。
「じゃあねー、山田。また明日-」
そう言って、石田は走しっていく。
また石田にデカい借りが出来てしまったと思いつつ、駅までの道をゆっくり歩くことにした。
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