分からせてやる
それから1時間ほど経過したであろうか。スマホから呼び出し音。嫌々画面を覗いてみると、やはりチョコラから。アイツのライン通知が入っていた。
仕方ねーな、やれやれとラインを立ち上げる。
「観た? あたしの神プレイ連発を」
「あー、はいはい。良かったですよ。勉強中ですので、それじゃ!」
「ちょっと待ちなさい。チャットしましょ、チャット。志那ナデ子先輩も招待してさ」
「嫌だよ」
「いいから、ディスコード開いて。はよ!」
そこでラインでのやり取りが途切れた。そのままブッチしたい気持ちで一杯になったが、そんなことをしたら、明日、学校でなにをされるか分かったもんじゃない。
いやーな気持ちのまま、チャットのアプリを立ち上げた。
「はーい、チョコラちゃん、上杉くーん。今晩はー」
ナデ子先輩は、今日も元気一杯ッスね。とてもいいことだと思います(棒)
「ナデ子先輩、今晩は」
「はーい、上杉くーん」
「ナデ子先輩、今晩はー。で、いきなりでなんですけど」
「はい、チョコラちゃん、どうぞ!」
「今日はマるオRTAで、上杉なんちゃらとかを軽く捻っちゃって、もうやり甲斐がないっていうかー」
なんだとチョコラ。テメッ、喧嘩売ってんのかよ?
と言いたかったが、なにかと怖いので、心の中で声にする。
「フムフム。すると、チョコラちゃん。ゲーマーとして、物足りなさが残っちゃったのね?」
「そうなんですよー、先輩。そこでですねぇ、一つ提案があるのですが……」
「はい、続けてどうぞ」
「今度は別のゲームで、上杉さんと対戦してみたいなーなんて。たとえばー、FPSとか」
「いいだろう、のった! FPSで圧倒的なキルレの差を見せつけてやるよ!」
しまった、話に乗っかってしまった。後先考えず、チョコラと勝負しようとか、無謀にも程がある。
「えーと……したいのは、山々なのですが、何分、自分は高三です。学生の本分は勉学にあります。じゃあ、自分は勉強中だったので、これで失礼します。いやー、本当はFPSでチョコラちゃんと対戦してみたかったなー。あは、あはははー」
「そっかー、上杉君は受験生だったんだねー。じゃあ、勉強で忙しいよねー」
「はい、そうなんです」
「じゃあ、勉強で疲れただろうから、これから1時間だけゲームして息抜きしたらどうかな?」
「え、はい?」
「うんうん。そうかー、やっぱり息抜きしたかったのかー。じゃあ、ナデ子も付き合うよー。なんのゲームにするー」
出た、ナデ子先輩必殺の「人の話を聞かずに、勝手に話を進める」戦法。これ、断るとエライ目に遭うやつだよね?
なんか額に嫌な汗が浮かんできた。こうなったら、断れないのキタねコレ。
「……分かりましたよ。但し、本当に一時間だけですからね!」
「オッケーだよー。チョコラちゃんもそれでいい?」
「オッケーでーす。うふっ」
なんなのコレ。なんかの陰謀なのコレ。ねぇコレ、共謀罪とか適用になるヤツじゃね?
「じゃあチョコラちゃん。なんのゲームやる?」
「APXXで」
「はい、持っていません」
「PUXGも?」
「あ、それはPX4版なら持っています」
「それじゃあそれで決まりね。じゃあ対戦しましょ。うふふっ」
チョコラの提案に「嫌でーす。負けたくないので」と拒否したいところであるが、ナデ子先輩がいてはそうはいかない。最早、逃走不可能。
こうなったら、やるしかない。
手榴弾で巻き添え爆発してやるー。自爆テロじゃー。
とまぁ、嫌々ながら対戦する羽目になった。
コイツとの初対戦はスプラだった。あの時はボコボコされた。そして、あの腕前から察するに、今回もボコボコされる。
うう、嫌だー。やりたくねー。なんか卑怯な手を使ってチョコラに勝てないかなー。
と、頭を抱えている間にゲームスタート。
「こうなったら、やってやるよ。吠え面かくなよ、二人とも。キエーーー!」
と威勢のいい掛け声を発したその一時間後。
ワイ君、無事死亡。チョコラのドン勝となった。予想の範疇過ぎて、もう笑えねぇよ……
「あーあ、スッキリしたー。それじゃあね、上杉君。バイバイー」
チャット越しにチョコラがそう言って、とっととオチた。
「う、ぐぬ、あの性悪VTuberめ。いつかお前を分からせてやるからな!」
とひとりごちるも、その声は部屋の中で虚しく響くのみであった。
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