タダ者じゃねぇ
翌日、登校すると机の中に白地のノートが一枚入っていた。
なんだこれはと思いつつ、その4つ折りに畳まれたノートを開く。
今日のチョコラの配信、絶対見なさいよね。
と書かれてあった。
後ろを振り向くと、石田がさっと顔を逸らす。
なんだかこれは碌な事が起きない。どうにも嫌な予感しかないのだが。きっとこれはなにかある。きっとある。
もわっとした釈然としない心持ちのまま、授業が終わった。
そして、そのままとっとと帰宅する。
夕飯を平らげ、部屋の中に入り、タブレットを立ち上げた。動画サイトのアイコンをクリックし、チャンネル登録している一覧を見て、チョコラのチャンネルを選択。
丁度アイツのライブ配信が始まるところだった。
「はーい、皆。今晩はー。えっと、今日はねー。マイクラやるつもりだったんだけど、予定変更です。スーパーマるオRTAしまーす。皆、チョコラのこと、応援よろしくね♡」
ハートマークじゃねーよ。それになんだよ、いきなりマるオRTAとか? 当て付けか? 昨日、見事に玉砕したオレへの当て付けなのかよ? このドS女めっ。
と憤ってみたのの、よく考えれば、チョコラが必ずしもいいタイムを叩き出すとは限らない。RTAを謳いつつ、バンバン死んでクリア出来ないとかもあり得るしな。そしたら、オレの二の舞いだ。ククククっ。
よーし、いいだろう。チョコラのマるオRTAとやらをじっくりと見物してやろうじゃないの。この目でじっくりとなぁ。
ニヤリと口角を上げる。チョコラよ、お前も苦戦し、そして惨敗するのだ。ガハハハ。
――などと40分前はそう思っていました。甘かったです。
チョコラは見事ノーミスで完全制覇。クリアタイムは、昨日観たマるオRTAの人に及ばず、39分だったものの誇れるタイムです。
ワイ氏、口から泡を吹いてぶっ倒れそうになる。
「あれあれー。マるオRTA、思ったより早くクリアしちゃった。じゃあ、余った時間で皆お待ちかねのマイクラやりますねー」
チョコラは画面の中でニコニコ顔。チャット欄には、沢山の投げ銭ともに「チョコラちゃん、神プレイ連発」とか「痺れた」とかの文字が躍っていた。
く、悔しくなんかないんだからね! と一人ツンデレってみるも、虚しいばかりである。
おまけにマイクラでは、とんでもなく精緻な馬鹿でかい城とか建てているしさ。ねぇ、なんなのコイツ。ねぇ。
頭に血をのぼってきたので、とっととタブレットの電源を切り、机に向かって日本史の参考書を広げた。
ゲームがナンボのもんじゃ。学生の本分は、勉学じゃないか。この前の中間試験の成績は、石田より上だったしな。別に悔しくもなんともねーっての。
と、半泣きしながら勉強に打ち込んだ。
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