マるオRTA
ぐぬぬ、この土管の修理工のおっさんめ。なかなか、なかなかに手強いじゃねーの。だが、ねじ伏せてやるよ。
と、意気込んでみるものの氷で滑って上手くいかない。制御不能。
はい、止まらず落ちたー。奈落の底へと。
「クッソ、やってられるかよ、こん畜生!」
と荒れてしまい、コントローラーを叩き付けそうになった。
そこでモニターに目をやると、「あれ、上杉様? そんなに憤るなんてらしくないですよ」とか「頑張ってー」とか「汚い言葉を使うのは嫌っ!」とかチャット欄に書かれている。
い、いかん。確かにオレは、小粋なギャグトークを信条としている。憤るとか、汚い言葉を使っては、上杉信玄のイメージが崩れてしまう。
クールに。もっとクールにいこうぜ、上杉信玄。――即ち、オレ。
「あ、興奮しちゃってつい。のめり込み過ぎるのも考えものだよねー。皆、これからはクールに、サクッとゴールしちゃうから。応援よろしくねー」
取り繕った笑顔を引きつらせ、マイクに向かって喋る。果たして、こんなんでリカバリー出来たか甚だ疑問ではあるが、ゲームを続けるしかなかろう。
なんたってライブ配信終了予定時間まで、あと30分もあるのだから。
しかし、やるんじゃなかったRTAなんて。しかも、スーファミ版のスーパーマるオでRTA。難易度高いよ。
まぁ、スーファミとか持ってないから、スイッチのスーファミ版でしているんだけどさ。
RTAと宣言してしまった。初見プレーでRTAなんて出来る訳ないじゃん!? 馬鹿なの、アホなの、死ぬの、オレ。
「うわ、うわ、うわわー。あー」
今度は水中の面でやられた。泳ぎに腐心してるのに、鉄球がぐるんぐるん回っているとか、そりゃねーよ。これのすり抜けは難しいだろ。心が……心が折れる……
精一杯頑張った。やった、やったよ。
けれども、ライブ配信終了予定時間になってしまった。
「どれだけ進んだかなぁ?」と視聴者に訊いてみると、「半分くらいですね」と返ってきた。駄目だー。ダメダメだー。
「最後まで見てくれてありがとう! この上杉、もっと精進しますので、お許しを。それじゃあ皆、またねー」
努めて明るく振る舞うと、「頑張ってください」と「駄目です」の大体2つの書き込みで覆われた。――いや、アカンだろ。これじゃあRTA詐欺もいいところ。
初見でRTAとか、やってるヤツいねーての。馬鹿なの? 死ぬの?
こんなアホな企画をした自分を殴りたい。
というか、こんなのやる前に、この動画サイトで予めRTAやっているゲーマーの動画を参考にすれば良かったじゃない。そうすれば良かったんだよ……
涙目になりつつ、マるオ RTAで検索。すると、自分がプレーしたスーファミ版のRTA動画があった。
うぇ、33分30秒でクリアだと!? どんだけなんだよ、この人。
観てみると、ノーミスは勿論のこと、つっかえることなど皆無で、ただひたすら超速で進んでいく。或いは、マントを駆使したりして。SUGEEE! この人、SUGEEE!
同じゲームをやっていると思えなかった。それほど速やかに次々とステージをクリアしていく。
RTA動画を見終え、なんともどんよりと気持ちになり、そのまま布団にダイビングした。
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