バレるとヤバい
「皆、今日も見てくれてどうもありがとうー」
ふぅ、どうにか配信を終えたな。
今日はゲーム実況しなくて、鬼を滅する映画を観てきたので、それの感想を語ったが、スパチャの反応と同時接続数を見るに、そこそこ好評だったようだ。
特に、メロンパンさんとモモさんにからは、いつも大量の投げ銭をしてもらい、感謝感謝である。
まぁ、モモさんイコール花園チョコライコール石田美鈴だったりするんだけどさ。ややこしいこと火の如し。
翌日になり、登校した。朝も早くから、オレの後ろの席で石田と派手目な女子達がわいわいと喋っている。
「でさ、昨日の『上杉信玄様』の配信観た?」
なにやら突然、石田がオレの分身であるVTuberの上杉信玄を語り始めたので、心臓が高鳴った。おい、バレるとヤバいから、ヤメロ。
「みたみた。それ、もうマストでしょ」
「うんうん、上杉信玄ってイケボだよねー。チョーイケてるー」
「だよねー。話題も豊富で面白いしさー」
「それなー」
会話中、なにを思ったのか知らないが、ギャルの米沢さんがいきなり振ってくる。
「なぁ、そこの地味メガネ。お前、どう思う?」
「え? な、なにが?」
「お前、上杉信玄って知ってる?」
「い、いや、全然。なにそれ、戦国武将なの?」
「カー、駄目だこりゃ。地味男にふったあたしが馬鹿だったわー」
米沢さんはやれやれと首を振り、また石田との話に興じた。
上杉信玄の話をしている間、動悸が苦しいほど速くなったが、そのうちに話題が逸れたので、ほっと一息つく。
にしても、石田の奴。学校で上杉信玄の話題に触れるんじゃねーっての。
軽く舌打ちし、スマホを取り出し、小説を読むことにした。投稿サイトの小説、なかなか面白い作品あるからな。いい時間潰しになる。
「ねぇ、山田さぁ」
お、おい、石田。折角鎮火したのに、またコッチに振るな。
「な、なにかな、石田さん?」
「そのスマホ、随分前の機種じゃない?」
「あ、ああ……中学の入学祝いに親父が買ってくれたヤツなんだ」
「中学生1年に買って貰った……ゲッ、それじゃあ6年間も機種変してないじゃん?」
「わ、悪いかよ……」
「良くはないでしょ。OSもアップデートされないだろうし、そんなに古いと性能が悪くて、スマホゲー出来ないじゃん」
「それはまぁ、ね」
オレは視線を落とした。正直、スマホを買い換えるくらいなら、母さんと遥にもっとお金をあげたいと考えている。
人に家の事情も知らんと、コイツは……
けどまぁ、致し方ないだろう。天然のお嬢様に、生活苦など分かるものか。それに、悪気があって言った感じではないみたいだし。
オレは黙したまま石田の方から前を向き、スマホに視線を落とした。
そして、今日も大過なく――いや、昼休みに石田から要らぬツッコミされたけど、まぁ、それを除けば、無難に過ごした。
まずは、ウチのクラスの女子にオレが上杉信玄だとバレなくて良かったよ。
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