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15.エピローグ ~そして始まる物語 ☆

挿絵(By みてみん)

 それがいつの頃からだったかは、はっきりとは覚えていない。


 僕は、(カフェ)の常連客らしいある人物(ひと)がなんとなく気になるようになり始めていた。

 かつての碧衣のように、一人読書に耽り、本の世界に身を置いている女性。

 年はそう若くはない。三十四歳の僕と同じくらいの、けれどとても品の良い美しい女性。

 彼女は紅茶が好きらしく、いつもプレーンのホットの紅茶かアイスレモンティーを飲んでいた。


 僕は、彼女の手元の本のタイトルをさりげなく盗み見るようになった。彼女は様々なジャンルの本の中でも特に恋愛小説が好きなようで、そしてなんと『白石雄』の愛読者であるらしかった。

 僕の著書をよく読んでいて、中でも『いつの日かのアラベスク』……ヒロインに碧衣をイメージして書いたその物語を繰り返し、それは熱心に読んでいた。


 天気のぐずつく梅雨明け直前の蒸し暑い午後。

 僕は彼女のいつもの席の隣に座って、ホットのラテを一人飲んでいた。

 彼女は僕の本……『いつの日かのアラベスク』を読み耽っている。切りの良いところまで読み終えたのだろうか。彼女がほおっと軽く溜息を吐いた。

 そして、彼女が席を立とうとしたその時。

 不意に本を床に落とした。


「落ちましたよ」


 僕は、本を拾おうとした彼女の手の下に自分の右の掌を滑り込ませ、僕の書いたその本を拾って言った。

 びっくりしたような大きな瞳で僕を見つめる。

 かつての碧衣のようにセミロングのボブカットをした可愛らしい女性(ひと)




 そしてそれは、新たな『アラベスク』を奏で始めるきっかけとなった碧衣とは違う恋物語のプロローグ……。




     了



挿絵(By みてみん)





本作は、


「ふたりのアラベスク  ──あなたに心、奪われていく」

( https://ncode.syosetu.com/n5917fw/ )


の、時間軸を遡った清志朗視点スピンオフでした。


このエピローグから繋がるアラベスク本編もお楽しみ頂ければ幸いです。



最後までお読み頂き本当にどうもありがとうございました!


尚、表紙は汐の音さま、作中挿絵は汐の音さま、砂臥環さまに描いて頂きました。

作品バナー及び巻末表紙は楠結衣さまに作成して頂きました。

作中コミカライズは遥彼方さまに描いて頂きました。


汐の音さま、砂臥環さま、楠結衣さま、遥彼方さま、どうもありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

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i795189 清志朗が出逢った女性・奏子の複雑な恋心を描いた「アラベスク」シリーズの本編です。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読了後、シャミナーデのアラベスクを動画で再視聴しました。最初曲名が出てきたときも視聴したのですが(すごく好みの曲でした)、再視聴したら、清志郎さんと碧衣ちゃんの情感が、情念が、情熱が押し寄…
[良い点] ∀・)ワンダフォー♪♪♪素晴らしい作品でありました♪♪♪大元になった作品を読んでからの本作の読了となりましたが、本作1作だけで1つの作品としての独立した存在感を充分に持つ傑作あるいは名作と…
[良い点] 1から9、13から15話はとても素晴らしい。最高です。 [気になる点] だからこそ、10から12話はちょっと言及したいです。これがアラベスクに繋がるので、アラベスクをも値下げしてしまってる…
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