幼馴染とクレープと猫
その日の帰り道。胡桃は寄り道をしたいと言って、ショッピングモールに連れてこられた。何の用があって来たのかと思ったら、真っ先にクレープ屋さんに並んだ。
「クレープ食べたかったの?」
「そうだよ! ここのクレープ凄い美味しいって評判だから食べたかったの!」
嬉しそうにしながら喋っていると、あっという間に順番がきた。
注文しようとメニュー表を見ると、三十種類以上あり迷ってしまう。今はクレープだけでもこんなに種類があるのか。迷っている俺を見て胡桃は先に注文した。
「じゃあ私は生クリームチョコストロベリースペシャルで! 一也はどうする?」
「俺は、えっと……じゃあ生クリームチョコバナナでお願いします」
無事に注文ができて、店の前で数分待っていると店員さんに呼ばれる。二人でそれぞれのクレープを受けとり、近くのベンチに座って食べる事にした。
「んー美味しい!」
「美味しいね!」
「あっ私にも一也のクレープちょっとちょうだい」
「あげるのはいいけど、スプーンとか貰ってくる?」
「そのままでいいよ、あむっ美味しいっ!」
俺が食べていたクレープを迷うことなく食べている。これじゃあデートみたいだな。そんなふうに思っていると、胡桃が言った。
「私のもいる?」
「じゃあ少し貰おうかな」
「はい、あーん」
「えっ、あむ……美味しい」
「でしょ? イチゴもバナナもどっちも美味しいね」
「う、うん」
あーんされたけど、こんな事されたの小さい時以来だぞ。どうしたんだろう、やっぱり何か嫌な事でもあったのかな。心配になった俺は、その場で聞くことにした。
「あのさ、もしかして何かあった?」
「ん? 何もないけど」
「でも今日は何だかいつもと違う気がして……一緒にお昼食べたり、あーんしたり」
「べ、別にいいでしょ! 私がしたかったからしただけなの、何かあったわけじゃないもん」
「それならいいんだけど」
顔を赤らめた胡桃はそう言った。ここまで聞いて何も言わないって事は、何かあったわけじゃないみたいだな。
クレープを食べ終わった後、今度はペットショップに向かうことになった。
「あー猫ちゃんがいっぱいいるよ!」
「おー本当だ」
「どの猫ちゃんが可愛いかなー! うーん、みんな可愛い」
子猫が並んでいるのを見て、胡桃も猫になりきって喋り始める。
「どうしたにゃ? お腹空いたのかにゃ?」
「おー、この猫もふもふで可愛いな」
「うん可愛いの! かわいいのにゃ」
「何だよその猫語」
「こうやって喋れば私の言葉が通じるかと思ったのにゃ……あっ」
「俺に話しかけるときは、猫にならなくていいよ」
こうして猫も見終わり帰る事になった。
帰り道、名残惜しそうにしながら胡桃が言ってくる。
「また明日も一緒に猫、見に行く?」
「そんな毎日見なくても逃げないだろ。また今度な」
「えーわかった。じゃあ、ぎゅーして」
「うん……って、えっ、今なんて言った!」
「な、何でもない! それじゃあ、また明日ね」
「うん、じゃあな!」
ぎゅーしてって言ったよな。いやでも、そんな事言うはずないか。聞き間違いだと自分に言い聞かせて、帰るのであった。
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