表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

飴を選ぶ。

作者: ぽち


目の前には何百種類もの飴が散乱してる。

生きていくために私達は、ことある事にこの中から一つ選んで食べなくてはいけない。

たくさんの飴が用意されていながら、実は選ぶべき飴は決まっている。

それは私の好きな甘くて丸くて可愛らしい飴ではなく、私の嫌いな苦くてざらざらした飴だ。

甘い飴を選んで食べ続ければ、口に広がる甘さに酔ったまま、いつか糖分に内臓を侵されて緩やかに死んでいく。

でも苦い飴を我慢して食べていれば、いつまでも長く健康に生きていける。

だから誰も彼もが「好きな飴を選びな」と言いながら「苦い飴を食べるべきだ」と目で訴えかけてくる。

それが正しいことは分かっている。

だって甘さを求めて死んでいった人達のことも知っているから。

それが惨めで無様なことも知っているから。


苦い飴を我慢して食べ続けている人に「なんでそんな酷な事を続けられるのか。甘さに目がくらむことはないのか」と聞けば「甘さが欲しいなら飴以外の他のものを食べてればいいじゃない」と言う。あるいは「甘い物はそんなに魅力的なのかね。私は食べたことがないから分からない。」と言う。


だけど私は幸せな方らしい。

「俺の目の前には苦くて臭い毒入りの飴しか用意されてないよ」そう答えた人もいた。そういう人達はこの話をすると決まって不機嫌になり、場合によっては私を責め立ててくる。そのうち私は他人にこの質問をしなくなっていった。


今日も今日とて目の前には無数に飴が散らばっている。

この中から一つ選ばなくてはいけない。周りには人も沢山いる。こっそり食べたふりもできない。

重たい手をなんとか動かし、右手が苦い飴を、左手が甘い飴を掴んだところで動きが止まってしまう。

「早くどっちか食べなさい」と周りの人間は口からそんなに言葉を出しながら、目は右手を口に運ぶようにしきりに目配せしている。

その目に催促されるまま、右手を口元へ近づけようとした瞬間、あの苦味と苦しみを思い出して吐き気と涙が止まらなくなる。

結局耐えきれずに左手に握っていた甘い飴を口に放り込んだ。

幸せな甘みがすぐに苦味を忘れさせてくれる。


あぁ。これで甘さに縋るのは何回目だ。

一人心の中で懺悔する。

そろそろ私の内臓は溶けきるのだろうか。それとももう少し生きていられるのだろうか。

何も分からない。分からなくてもいいか。もう考えることすら億劫だ。


ただ今は、この甘さに浸っていたい。


ただ私の心の内を書いただけですが、もし共感してくださる方がいましたら、コメントをくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ