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プロローグ

登場人物紹介

小野(おの)勇士(ゆうじ)

 :今回の主人公。刀剣研究部に所属する一年生男子。生き返るために一週間苦労することに。

小野(おの)明日菜(あすな)

 :勇士の妹。お兄ちゃんへの愛が大きい清隆学園中等部所属の元気娘。

吉田(よしだ)恭子(きょうこ)

 :勇士の幼馴染。中学の時に起きた事件で高校へは進学していない。

飯塚(いいづか)咲弥(さくや)

 :刀剣研究部部長。とあるゲームから刀剣女子になる。意外とオタク。

猪熊(いのくま)修也(しゅうや)

 :勇士のクラスメイト。クォーターなため外見がかわいい。実家はロボット製作工場。

神谷(かみや)月子(つきこ)

 :恭子の伯母で、保護者。

キララ

 :小野家の飼い犬。勇士が拾って来た雑種犬。


藤原(ふじわら)由美子(ゆみこ)

 :高等部図書委員会副委員長にして『拳の魔王』今回は端役。

郷見(さとみ)弘志(ひろし)

 :『正義の三戦士』の頭脳労働担当。だが上に同じく今回は端役。

不破(ふわ)空楽(うつら)

 :『正義の三戦士』の肉体労働担当。今回は隠れキャラ。

権藤(ごんどう)正美(まさよし)

 :『正義の三戦士』の三人目。今回は顔出し程度。

佐々木(ささき)恵美子(えみこ)

 :『学園のマドンナ』に選ばれる程の美少女。今回は出番なし。

(おか)花子(はなこ)

 :由美子と同じく図書委員会副委員長。今回は出番なし。

御門(みかど)明実(あきざね)

 :『スロバキアと道産子の混血でチャキチャキな江戸っ子』の科学部総帥。

十塚(とつか)圭太郎(けいたろう)

 :図書室常連の監査委員。今回は隠れキャラ。

松田(まつだ)有紀(ありよし)

 :図書室常連で怪しい方言を使う男子寮寮生。今回出番なし。

左右田(そうだ)(まさる)

 :図書室常連で『ブラック・プリースト』の呼び名を持つ、勇士のクラスメイト。今回の陰の主人公。敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げの大活躍。と嘘を書いておく。

海城(かいじょう)アキラ:御門明実の幼馴染にして実験体。今回は彼の秘書役。

新命(しんめい)ヒカル:御門明実の護衛役だが、今回は彼の秘書役。

霧の中の老人:若くして死んでしまった勇士を生き返らせるために、何度も力を貸してくれる存在。


●世界の狭間

 小野(おの)勇士(ゆうじ)は気が付くと、一面の霧の世界に立っていた。

「ここは?」

 あたりを見回すが、まったく見通しが利かなかった。

 そんな一面の霧でも、前方だけは暖かな光が溢れており、白い世界はほのかな温もりに包まれているようだった。

「?」

 勇士は光に誘われるように歩を進めた。

 霧が、彼の行く先から左右に分かれて道を作った。

 二〇歩ほど行ったところだろうか、前方に大きな岩が見えてきた。

 なにかの石碑ではないかと思われるような岩である。ただそれは人の手が入っていないことは一目瞭然で、表面はゴツゴツとしており、ほのかに金色の鱗粉のような光を纏っていた。

 高さ三メートルほどの岩の前に、見慣れない白い服を着た老人が立っていた。

 彼を見つめる目はどこまでも優しくて、微笑みを含んだ口元には立派な髭が生えていた。

 その髭も、長い髪も、それはもう立派な銀色であり、その老人が高齢であることはまちがいないようだ。ただ鋭く険しい目元や赤い瞳など、只者ではない雰囲気を纏っていた。

 穏やかに見つめてくる視線に、どこか慣れ親しんだような感情が混じっている気がしたが、勇士には間違いなく初対面の人物である。が、その視線に導かれるままに、彼は老人の前に立った。

 日本の高校生として平均的な身長を持つ勇士と、老人の背丈はほぼ変わらなかった。腰も曲がっておらず、杖などにも頼らず、すっくと立って彼を見つめていた。

 長い髭に包まれた口元が開いた。

「おお勇士よ、死んでしまうとは情けない」

「ええーと」

 情けないと断言される心当たりがなくて、勇士は戸惑った。

「すいません。ここはドコなんでしょうか?」

 とりあえず質問してみた。

「覚えていないのか…」

 あくまでも優しい態度で老人。

「ここは生と死の狭間の世界。オヌシは死んだのじゃよ」

「死んだ? オレが?」

 戸惑いは大きくなるばかりである。

「そうじゃ。覚えておらんのは、そうじゃのう…」

 老人は遠い目をしてしばし考え込んだ。

「頭をやられたからかの?」

「あたま?」

「そうじゃ」

 老人の左手が動いた。霧の表面を撫でるような仕草をすると、霧が粘土のように均され、そこが鏡のように変化した。

「見るがいい。死んだ直後のオヌシじゃ」

 言われてその鏡面を振り向くと、ぼんやりと映像が浮かび上がってきた。

 映し出されたのは、アスファルトに横たわる自分と同じような背格好をした人物であった。ただし首から上はほとんど存在していなかった。

 頭蓋骨は見事なまでにつぶされており、完熟トマトを床に落としたような惨状になっていた。

 アスファルトに残っているブレーキ痕といい、体にも残っているタイヤの跡といい、相当大きな車に轢かれたことが想像ついた。

「ウソ…」

 もしかしたら他人の死体かもしれないと考えてもみた。しかし、力なくのびた足が履いている靴は、いつも自分が愛用しているスニーカだった。着ているTシャツだって、クローゼットに心当たりがあった。ただし妹が千葉県ネズミーランドで冗談として買って来た、黒地に灰色抜きで描かれたホック艦長の悪役面という、普段は身に着けないものではあったが。

「なんでこんなダサいシャツ着て死んでんだよ…」

 勇士は自分の死体に絶句した。ちなみに今は一糸纏わぬ格好である。

「頭をやられたから、そのせいで記憶がないのであろうな」

 老人が慈しむような声で慰めてくれた。

「そうか、オレ…。死んじまったのか…」

 なにか大事なことがあったような気もするが、それも頭を轢かれたことによる記憶の混乱からなのかもしれない。

「さて、勇士よ」

 老人は手の一振りで映像を消した。

「若くして死んでしまったオヌシであるが、やり直したいとは思わんかね?」

「やりなおす?」

 涙を直前で押しとどめて勇士は訊き返した。

「そうじゃ」

 老人の手が再び動いた。鏡面に別の映像が浮かび上がった。

「ああ! キララ!」

 映し出されたのは小さな雑種の犬であった。礼儀正しく四角くお座りをして、こちらを見上げているような映像であった。左耳にある特徴的な白ブチで間違いなく小野家の飼い犬のキララとわかった。

「オヌシは捨て犬だったこのコを助け、世話をしてやるほど優しい者だ。よって、この車に轢かれて死んだ日から、一週間だけ時間を巻き戻してやろうと思っているのじゃが」

「それって、つまり?」

「生き返れるということじゃ」

「いや、そうじゃなくて…」

 口の中が乾いてしまった勇士は、何度も唾を飲み込もうとしたができなかった。

「アンタは…、いやアナタは神さまなんですか?」

「もし、オヌシがそう思うのなら、わしゃ神さまなんじゃろうなあ」

 それが何でもないことのように、老人は自分の髭をしごいてみせた。

「それで?」

 あくまで優しい態度のままで、老人は勇士に訊いた。

「どうする? 一週間やりなおしてみるかね?」

「はい! よろしくおねがいします」

「よろしい。いい返事だ」

 老人の微笑みが大きくなると同時に、再び勇士の視界は霧に包まれた。

 どこからか彼の言葉が聞こえてきたのが最後だった。

「今度は、一週間の間、死なないように努力するのじゃぞ」




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