序章
【序章】
仮にあなたが、別の誰かの秘密を知ってしまったとしよう。
その二人は今まで大した関わりもなかった他人同士で、何も起きなければこれからも稀にすれ違う程度の関係で居続けるはずだったとしよう。
また、問題の秘密とは信じられないほどに深刻で重要で、もし白日の下に曝されるようなことがあれば秘密の主は破滅するしかなくなってしまうほどに致命的なものだったとしよう。
そしてさらに、あなたがその秘密を知ってしまったということを秘密の主がすでに嗅ぎつけてしまっているものとしよう。
秘密の主はどうするだろうか。
あなたを黙らせるために、必死で頼み込むだろうか。
同等の重要性を持つ秘密を探すだろうか。
それとも、もっと別の方法をとるだろうか。
あなたなら秘密の主はどう動くと考えるだろう。
そして──それに対してどう応えるだろう。
「拝啓
お久しぶりです。
そちらの生活はどうでしょうか。
雑誌やニュースで時たま報じられる君の評判を見るたび、僕は誇らしく、また元気そうで良かったと嬉しい気持ちになります。
突然のことですみませんが、暇があれば近いうちに一度こっちに帰って来てくれませんか?
是非、君に相談したいことがあるのです。
僕はいま非常に厳しい状況にあります。
詳しいことは二枚目以降に記載しますので、御一読下さい。
僕の通う高校には、怪物がいるのです」




