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ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act2 冒険者……になんて、なれっこない

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step.7「剣ちゃんの盾ちゃんの、そこはかとない不満」

《あたしのフォルムはね――〝鋭利〟っていうのよ。盾ちゃんみたいな駄肉とはちがうもーん》

《あら駄肉じゃないのよ。こういうのは〝重厚〟っていうの》


 二人とも額に青筋浮かべて、ぴきぴきやってる。


 今日の二人は、なんでか張りあっていた。なんではじまってしまったのか、いまとなってはよく覚えていない。

 二人とも、なにか最近、イライラしているような気がしていたから、そのせいかもしれない。


《あんただって、そうでしょ! こういうのがカッコいいって思うでしょ!》

「え? ぼく?」


 剣ちゃんは脚を伸ばして、すっくと立つ。

 ぴったりと体に張りつくような服は、胴体だけを覆う感じで、手足は肌が露出している。脚の付け根なんて鋭角にV字。


 人間の女の子が、もしこんな格好をして目の前に立っていたら、きっと、ドキドキしていたんじゃないかと思う。人間の女の子でドキドキしたことなんてないけど。別の意味で〝人〟にはどきどきするけど。いや。どきどきっていうか、びくびく、のほうだけど。


《いいえー、あるじさまー。あるじさまは、やっぱり大きいのがお好きなんですよねー?》


 こんどは盾ちゃんが競うように目の前にくる。


《オバさまが言うにはー、人間の殿方は大きいのがお好きであるとかー? ほら大きいですよー? どうですかー?》


 自分で言うように、盾ちゃんは、たしかに大きい。背が大きいという意味ではなくて……。背については剣ちゃんよりも、すこし大きいだけなんだけど。

 それよりも二つの……、その、あれが……。

 はっきりと言うのは恥ずかしいんだけど……。盾ちゃんのそこは、とにかく大きい。


《あるじさまもー、これ、お好きですかー?》


 自分の手で下側から捧げ持つ。ただでさえ大きいそこが、さらに量感を増す。


《オバちゃん知ってるのよ。人間さんって。特に男って。よくそこ見てるわよねー。なんで見てるのかまでは知らないんだけど》


 二人に変なことを吹きこんだのは、オバちゃんらしい。

 しかも中途半端で不完全。酒場で長いこと人間を見ているから知識は豊富なんだけど。やっぱりオバちゃんも人間を理解しているとは言いがたい。


 外見面の美しさとかの話は、〝アイテム〟たちには、やはりわからない話題であるらしい。

 剣ちゃんも盾ちゃんも、自分がどれだけ〝綺麗〟なのかということに、まるで無頓着。


 二人がわかる価値観は、機能的な美しさに関するもので……。

 そんなわけで今日の論戦は、スレンダーでシャープな剣ちゃんと、ふくよかで豊満な盾ちゃんの〝機能美〟の戦いとなっているのだった。


《なによそんなの。重たいだけじゃない。振り回すとき邪魔になるだけよ》

《受け止めるときには、これが、クッションになるんです》

《だめよ。受け止めたりしたら、刃こぼれしちゃうじゃない》

《もう剣ちゃん。自分のことばっかり。盾には盾の良さがあるんです》

《盾ちゃんだって自分のことばっか。剣には剣の良さがあるのよ》

《盾ならあるじさまをお守りすることができます》

《剣ならあるじの敵をやっつけることができるわよ》


《まあまあ。二人とも。二人でこの子を守ってやればいいさね》

《オバちゃんは黙ってて》

《オバさまは黙っててください》


「あのぼく。戦ったりしないんで……。どっちが役に立つ論争とか。いらないんじゃないかなー……って、あはははは」

《あるじは黙ってて》

《あるじさまは黙っててください》

「はい」


 ぼくは黙った。女の子って、たまに怖いところがある。〝人〟はもっと怖いけど。


《あたしはね! なんでもぶった斬れる、すっごい剣なの! ……たぶん》

《あら。わたしも。どんな攻撃だって絶対に防ぐ。すっごい盾よ。……たぶん》


 それ、矛盾してるよね。

 なんでも斬れる剣と、絶対に防ぐ盾と、両方がぶつかったら、どういうことになるんだろ?


《なによ盾ちゃん! 実戦なんてやったことないくせに!》

《それは剣ちゃんだって同じでしょう? 実戦なんてしたことないのは》

《それは、そう……なんだけど》


 剣ちゃんは、口ごもると……。ちら、と、ぼくのほうに目を向けた。


 ん?

 あれ? あれれっ?

 なんだろ? いまの目線って……?


 なんか言いたげな……? でも言うのをためらったような……?

 なんだろう? なにが言いたかったんだろう?


《………》

《………》


 剣ちゃん盾ちゃんは、なんか気まずそうに黙りこくってしまった。

 いつもはたくさんしゃべるオバちゃんも、ぜんぜんしゃべらなくなってしまった。

 そのうちに姿も消してしまう。

 彼女たちはいつでも姿を出しているわけではない。ずっと出ていると疲れるようで、おしゃべりするときだけだ。


 ぼくとしては、なにか残念なキモチだった。

 二人の口喧嘩を聞いているのも、楽しかったんだけど……。


 喧嘩が楽しいっていうのは、変かもしれない。

 だけど二人がどれだけ言い争っていても、それは本当にケンカしているわけではなくて、二人なりのコミュニケーションなのだということを……。

 ぼくはきちんと知っている。


 だから安心して見ていられるのだけど……。


 なんだか今日は、いつもと調子が違った。

 誰もしゃべらないので、ぼくはしかたなく、寝床に横たわった。

 まだ寝る気分じゃなかったんだけど。

 目を閉じていると、そのうち眠たくなってきて……。

 ぼくは眠りに落ちた。

1話だけだと、いいところまで行きませんので、本日は3話同時更新でーす。

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●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

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2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
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