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ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
LV3編 Act5 ダンジョン・スタンピード

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step.68「そして深き淵より出づる者……」

 みんなで笑いあい、肩を叩き合っていた。


 その笑いが、ぴたりと止んだ。


 誰かが迷宮の入口を見ていた。みんなが迷宮の入口を見るようになった。


「……おい? なにか出てくるぞ?」


 誰かがそう言った。


「……やめて。……もういや。……もうやだよう」


 誰かが掠れる声で、そう言った。


 みんなが見つめる中――。迷宮の中から姿を現したのは――。


 黒い翼を持ち――、巨大な角を持った――、とても大きな悪魔だった。


「グレーター……、デーモン……、迷宮主……」


 誰かがそう言った。絶望しきった声だった。


 そうだった。

 さっき戦って倒したキマイラは、第六層の〝階層主〟だった。

 そしてこの迷宮には、階層主とは別の、もっと強いモンスター。――〝迷宮主〟がいるのだった。


「行こう。剣ちゃん盾ちゃん鎧ちゃん」

《うん! 斬る斬る斬る!》

《お守りします! 最後まで!》

《貴方は私が守るわ》

「みんなは逃げて」


 ぼくはみんなにそう言った。


「レムルさん!」


 だからガイルさん。――なんで〝レムルさん〟なの?


 ぼくはグレーター・デーモンに向かって歩いた。すこしでも時間を稼ごうとして――。


 ……でも歩いているうちに、へんなことに気がついた。

 なんかグレーターデーモンの目に生気がない。あと、グレーターデーモンの頭のてっぺんから、体の下まで、なにか縦にまっすぐ、一本の線が見えている。


 ぼくはグレーターデーモンに、もっとずっと近づいていった。

 近づいても、ぜんぜん攻撃してこないグレーターデーモンに向けて、手を伸ばして、指先で、つんと、つついてみると――。


 グレーターデーモンの体は、その線のところからズレていって――。

 やがて左右にぱっくりと割れて、右半分と左半分とに、二つに分かれて、倒れていった。


「あーもー! やーっと追いついたー! こいつ! 弱っちいくせに逃げ足が速いんだからー! もー!」

「そんな程度の相手を逃がしているようじゃ、まだまだだな。――だからおまえは駄犬なんだ」

「また駄犬ゆったー!」


 迷宮から、女の人と男の人とが……。歩いて出てきた。


 片方は……。うん。知ってる。オレオレさん。

 もう片方の女の人は、はじめて見るけど……。でもオレオレさんがいま呼んでたから、噂の「だけんさん」なのだとわかる。


 わかるんだけど……。

 わかったんだけど……。


「オリオンさん! もう探したんですよ!? すっごい探したんですよ! いったいどこいってたんですか! 街が大変なんです! ダンジョン・スタンピードなんです! はやくやっつけてください! あなたならちょちょいと簡単にやっつけられますよね! 三秒ですよね! そうですよね!」


 オレオレさんに駆け寄るなり、物凄い剣幕でまくしたてているのは、ギルドの受付嬢のエリザさん。オレオレさんの担当の人だった。


「先輩、落ちついて……。もう片付いてます」


 ぼくたちの担当のエミリィさんは、その脇で、こめかみを揉みほぐしていた。


「それより、なんなんだ? なんで冒険者全員総出で、俺たちを出迎えている?」


 オレオレさんが、ぼくたちを見回して、そんなことを言っている。

 ぼくの顔を見ると、「よう」と、指を二本、ぴっと上げてみせた。


「今日はお祭りかなにかか?」

「ええと、それはですね。オリオンさん。……話すと長くなりそうなんですけど」


 ものすごくバツの悪そうな顔になっているエリザさんのかわりに、エミリィさんが説明しようとする。


「まて……? さっきダンジョン・スタンピードとか言ってたな? ……つまり? あー……!」


 オリオンさんも、なにかに気付いて、すごくバツが悪そうな顔になる。


「なになに? おまつり? どこどこ? オリオン、お小遣いくれる? それともアクセサリー買ってくれる?」


 だけんさんだけが、一人、オレオレさんに甘えた顔を向けている。

 しっぽがあったら、ぶんぶん振っていたんじゃないかと思う。


「俺らが、迷宮主を逃がしたおかげで……。迷宮中のモンスターが、上に……出口に押し寄せたわけだな」

「え? どうしたのよオリオン? なんの話?」

「おまえが駄犬だっつー話だ」

「また駄犬ゆったぁ!」


 そこでオレオレさんは、みんなの視線に気がついた。

 ぼく以外の人たちは――みんな、ものすっごい目になって、オレオレさんを見ている。


「い、いや……! 逃がしたのは俺じゃないぞ!? 逃がしたのはこいつで! この駄犬で……!」


 みんなが見ている。も~んのすっごい目になって、オレオレさんを見ている。


「……いや、まあ。……なんというか。……すまん」


 オレオレさんは、ぺこりと、頭を下げた。

次話、エピローグです。

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●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

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2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
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