表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
LV3編 Act5 ダンジョン・スタンピード

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/74

step.67「死闘」

「うわあぁぁぁ――っ!!」


 大きな大剣を振りあげて、やけくそのように突っこんでゆく男の人がいた。


 えっ? ――ちょっ!?


 キマイラはくるりと一回転した。蛇の尻尾がぶうんと振り回される。

 ばきゃっ、と、音がした。


 最前列にいたその人は、後衛のさらに後ろの後ろまで、一気に吹き飛んでいった。


「か、回復……!? 回復魔法っ!? だれか手伝ってくれえぇ!!」


 パーティメンバーの僧侶らしき人が駆けよって、回復魔法をかけているが、悲鳴をあげて応援を呼んでいる。


「解毒魔法も――!? 誰か!? 使えるやついないかあぁ!?」

「ちょっと行ってくる!」


 アルテミスが駆けだした。


《勝負すんのはこのオトコ!? こいつを落とせばいいのっ!?》


 勝負ちゃん。ぶれないね。


 あの戦士さん。うかつだったとは思うけど……。

 だけど一撃だった。


 第六階層の階層主――。攻撃力が高すぎる。

 これでは、キマイラが攻撃するたびに一人ずつ倒れてゆくことになる。

 いや――。

 キマイラには、二つの首と一つの尾があるのだから、一度に三人ずつ倒れてゆくことになる。


「うわぁあああぁ――っ!!」


 また一人が犠牲になった。

 ライオンのほうの首に肩を噛まれて――。ばきん、ぼきん、なんていう、骨の砕ける音が響いてくる。


 キマイラは首を振り回し――。ぺい、って吐き捨てるように、真っ赤になった冒険者さんを放り投げた。


「ぷ、プリーストおぉぉぉ!! 頼むうぅぅ――っ!!」


 悲鳴があがる。すぐに、二、三人の僧侶プリーストさんたちが駆けつける。


 だめだ。これじゃ。

 これじゃ倒せない。


 ぼくは一歩前に出た。二歩目も前に出した。三歩目も四歩目も前に出して、ついには駆け出した。


《あるじー! 斬るわよー!》

《あるじさま! お守りします!》

《貴方は私が守るから!》


「……!」


 うおおー、とか、言わない。叫んだりしない。

 ぼくは無口なまま、キマイラに斬りつけた。


 キマイラがぼくを敵と捉える。

 うん。それでいい。


 攻撃がぼくに向かってくる。ぼくだけに向かってくる。

 うん。それでいい。


 ぼくは巨大なライオンの顔が噛みついてくるのを、盾ちゃんで受け止めた。

 もう一つの首が噛みついてくるのは――!


虚像盾イリュージョン・シールドっ!」

《イリュージョンシールドですうぅぅ!!》


 空中に出した盾で受け止めた。

 そして打ち振るわれる蛇の尻尾は――!


「――風牙っ!」

《きゃあぁーっ! ふうがあぁぁぁ――っ! 呼んでくれたあぁ――っ!!》


 投げつけた風の刃で、すっぱりと断ち切った。

 これで攻撃は一度に二回に減った。


 ライオンの顔が迫る。もう一つの顔も迫る。


「大きくて硬いの――!!」

《大きくて硬いのです――!!》


 盾を大きく硬くする。ライオンの顔をしのぎ、同時に虚像の盾でもう一つの攻撃を受け止める。

 攻撃なんてしている暇はない。一度に二回の攻撃を、一人で受け止めるので精一杯だった。


 攻撃を受け止め続ける。

 猛烈な攻撃を止めきれずに、虚像の盾が砕けることもあった。盾の本体に比べると虚像のほうはだいぶ弱い。


《守……るっ!!》


 そんなときには鎧ちゃんが止めてくれていた。それでも全身に衝撃が走る。体力を持っていかれる。


「みんな――!! 戦って!!」


 アルテミスの声が響く。


「レムルが止める!! レムルが止めてるから!! だからみんなで攻撃して!! おねがい――!! おねがいします!!」

「シロちゃんたち(、、)――!! おねがいっ!!」


 ノノがシロちゃん召喚を八回続けて行った。八匹のシロちゃんが現れて、一声に飛びかかる。

 戦士も魔法使いも、盗賊シーフも弓使いも、みんながキマイラに総攻撃をはじめる。


 キマイラの攻撃は、すべてこちらにくる。

 耐えた。耐えた。耐え抜いた。


 だけど――。盾ちゃんのMPは無限ではなくて――。


《あるじさま――! もう虚像盾イリュージョン・シールドが出せな――ああっ!!》


 虚像の盾を出せなくなった。

 片方の攻撃は防いだけれど、もう片方の攻撃を防げなかった。

 巨大な顎に――、がふりと胴体に噛みつかれた。


《貴方は――! 私が守るっ!!》


 鎧ちゃんが光る。単なる胴当てでしかなかった鎧が、光とともに形を変えて成長して、胸と肩もカバーする。

 キマイラの大きな牙を、がっちりと受け止める。


「――げはっ!!」


 だけどぼくは血を吐いた。

 牙は刺さらなかったけれど、鎧に守ってもらえたけれど、噛みつかれた衝撃に体のほうが耐えられなかった。


 立たなきゃ。動かなきゃ。みんなを守らなきゃ。

 ぼくはなんとか立ち上がろうとした。

 つぎの攻撃がすぐにやってくる。


 ほかの戦士さんじゃ〝タンク〟をやれない。

 ぼくしか! ぼくしかできないんだ!


「オレが時間を稼ぐ! ――僧侶プリーストども! レムルを治せ!」


 ロウガがそう叫ぶと、キマイラの前に飛び出していった。


「やーい! ばかキマイラ! あほキマイラ! こっちみろ! こっちだこっち! おしりぺーんぺん!」


 ロウガがキマイラの前に飛び出して挑発をしている。お尻をぺろんと出して、ぺんぺんと叩いている。

 キマイラは怒り狂ってロウガに襲いかかってゆく。


 ロウガは爪の一撃を食らって――。


「ぐはーっ! やられたーっ!」


 びしゅううと、血がしぶいた。


 えっ……?


 いつもの死んだふりじゃなかった。真っ赤な血の海にロウガが倒れている。


 えっ? えっえっ……?


 ぼくは前に出ようとていた。

 でも足が言うことを聞いてくれない。

 だけど、すぐにふっと楽になって――。足が言うことをきいてくれるようになって――。

 体も動くようになって――。


 ぼくは前に飛び出した。

 そして次のキマイラの攻撃を受け止める。


 まわりじゅうの僧侶プリーストの人たちが、ぼくに向けて回復魔法を唱え続けていた。


「レムル! 戦って! みんなを守って! 貴方は私たちが癒やすから!」


 アルテミスも回復呪文を唱えてくれている。


「で――でもロウガが!! ぼくよりもロウガを――!?」

「ふははははーっ! ばかめーっ! 死んだふりだああぁ――っ!?」


 で、でも……? いま本当に死んで……? 死んだふりじゃなくって、本当にぐしゃぐしゃになって……?


「オレの流派の奥義はァ――ッ! 〝夢想転生〟はーッ! なかったこと(、、、、、、)にするって言ったろおお――ッ!!」


 無茶苦茶だーっ!!


《ロウガーっ!! カッコいーっ!!》

「そうか惚れたかーっ!! じゃああとでおっぱい揉ませろーっ!!」

《それはイヤーっ!!》


「ほらレムル! MPポーションだ!」


 ロウガがぼくにMPポーションを見せてくる。


「でもぼく! MPないよ!」

「ちがう! ――盾だ!」


 ロウガが投げつけてくるMPポーションを、ぼくは盾で受け止めた。

 盾の表面でガラスの小瓶が割れると――。


《ああ――っ! 漲りますわああぁぁ!》


 盾ちゃんが雄叫びを上げた。

 盾ちゃんにMPが戻った。これで虚像盾イリュージョン・シールドが、また使える。


 ぼくはキマイラの攻撃を受け止め続けた。

 ミスしたりMPを切らしたりすると、攻撃を受けてしまうこともあった。

 だけど一撃ならぼくは耐えられる。鎧ちゃんが守ってくれている。


 そして僧侶プリーストの人たちが、ぼくに回復魔法を集中して連打してくれる。

 がくりと減ったHPもすぐに戻る。


 そのあいだにも、戦士と盗賊と弓使いと魔法使いとが、攻撃を続けていた。キマイラにダメージを与え続けていた。


 だけど――。

 どんなに強いモンスターでも――。どんなに恐るべき階層主でも――。

 HPは無限じゃない。


 ぼくたちの攻撃は、徐々に――、だけど確実に、キマイラのHPを減らし続けていた。


 やがて、キマイラが倒れる時がやってきた。

 傷だらけで焼け焦げて、何十本もの矢が刺さったキマイラは――、ずずーんと、地響きを立てて、地面に横たわった。


 はじめ、みんな、きょとんとした顔をして、突っ立っていた。


 誰かが言った。


「……倒したのか?」


 誰かが、その問いに答える。


「……倒したんだよな」

「……これ。倒れてるよな」

「……倒れてるわよね? ねえ? これって倒したのよね?」


 ロウガが腕組みをして、みなに答える。


「死んだふりの第一人者のオレが断言する! これは死んだふりじゃねえ! 死んでるぞ!」


 一瞬のあと――。


「うわあああ――――っ!!」


 大歓声が湧き起こった。


 みんながみんな、近くの人に抱きついていた。


「すごいよ! あんた凄いやつだよ! 初めて会ったときから凄いやつだって! ずっと思ってたよ!」


 ぼくは隣で戦っていたビキニの女戦士さんに、ぎゅーっと抱きしめられていた。

 ようやく解放されたかと思うと、こんどは、ガイルさんに、ぎゅーっと抱きしめられる。


「やったなレムル! ――いやレムル|さん! これからはレムルさんって呼ばせてもらうからなっ!」


 ……なんで? ……さんづけ?

 レムルでいいよ。呼び捨てで。……ガイルさん?


 長いことあがっていた歓声が、ようやく落ちついてくる。

 歓声があがらなくなっても、みんなが笑顔でいた。疲れ果てて、傷だらけでボロボロなのに、みんなで笑いあっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

8tn33tr61r3l898af869heoclqwz_18ib_fh_m8_
2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ