step.65「戦いのなかでのレベルアップ」
斬った。斬った。斬った。
防いだ。防いだ。防いだ。
ぼくたちはつぎつぎと迷宮から出てくるモンスターと戦った。
まわりでも、他のパーティのみんなが戦っている。
「剣ちゃん! 炎!」
《もうだめMP足りない!》
「た、盾ちゃん――硬くなって!」
《だめですあるじさま!》
ロック・ゴーレムの強烈な一撃を、ぼくは受け止め損ねた。盾が弾かれて、攻撃を体に食らってしまう。
めしゃっ、とか音がして、ぼくは吹き飛ばされた。
「レムル――!」
アルテミスが叫ぶ。もうしばらく前から、彼女はMP切れになっていて、「炎弾、炎弾」と、唱え続けている。
でも炎弾なんか、このあたりの階層のモンスター相手には、ほとんどなんの役にも立っていない。
吹き飛ばされたぼくは、起きあがろうとした。
すぐに起きあがれた。
――あれれ?
派手に吹き飛ばされた割には、ぜんぜんダメージがきてない? なんで?
《大丈夫。貴方は私が守るから》
革チョッキの下につけた胴当てから、そんな声がした。
《鎧ちゃん! ありがとう! ありがとう! あるじさまを守ってくれて!》
《……》
盾ちゃんが言う。
鎧ちゃんの声って……、はじめて聞いた。鎧ちゃんは喋れる子のはずなのに、これまでぜんぜんその声を聞いたことはなかった。
ロック・ゴーレムは、ぼくのほうに歩いてくる。
ぼくは瀕死のふりをして、わざとよろよろと後ろに下がった。
ていうか。本当にだいぶ瀕死に近いんだけど。
もう本当にだめな感じで、わざと、ロック・ゴーレムを引きつけた。
なぜなら、ロック・ゴーレムの後ろからは――。
「俺の必殺技はなぁ――! MPつかわねえんだ! こんちくしょーっ!」
ロウガが両手を突き出す。組み合わせた両手が、大きな顎のように、ゴーレムの背中に噛みついた。
ゴーレムはがらがらと、岩に戻っていった。
ようやく倒した。
だけど一息つく暇もない。あちこちで戦いは続いている。
第五層のモンスターが溢れ出してくるようになってから、これまでのように簡単には倒せなくなってきている。
みんな苦戦しはじめていた。
「……お?」
ロウガがふと足を止めて、音でも聞くように、きょろきょろと頭をめぐらす。
「……あっ?」
アルテミスも同じ仕草をする。
「わぁっ……!」
暗かったノノの顔が、急に明るくなった。
ぼくは〝音〟が聞こえてくるよりも先に、体の痛みが急に引いていったことで、〝それ〟に気がついた。
レベルアップの「たらりらった、たったー♪」という音が、頭の中に鳴り響く。
「MPが戻った!」
アルテミスがさっそく近くの戦士さんに回復魔法を飛ばす。
「助かる!」
戦士さんは剣を振ると、またモンスターに飛びかかっていった。
「シロちゃん! おねがい! ――また助けて!」
ノノがシロちゃんを喚び直す。
ノノはレベル回数分、ノノはシロちゃんを喚ぶことができる。シロちゃんは倒されると消えてしまう。でも喚び直せばまたやってきてくれる。
迷宮前の戦いがはじまったときには、二回分あった残り回数だけど、厳しい戦いのなかで使い切ってしまっていた。ちょっと前からシロちゃんは消えたままになっていた。
「――ワオーン!」
「――って! シロちゃん大きくなってない!?」
シロちゃんの大きさが、ダイアウルフぐらいある。前のレベルのときよりも、急に大きくなった。
「がるがるがる!」
シロちゃんはノノの近くの空間に、突然、襲いかかった。
ケイブ・カメレオンが保護色を使って身を潜めていたのだ。カメレオンの首に噛みついて、ぼきん、とかいう音が響いてきたら、カメレオンがぐんにゃりと体をまっすぐにした。
「スゲエ!? 一撃で仕留めちまったよ!?」
「し、シロちゃん強い!」
「シロちゃん……だよね?」
「くうーん……?」
飼い主から疑問形で聞かれてしまうぐらい、シロちゃんは見た目も強さも変わった。
「ちょっとみんな! 私、しばらく突っ立ってるけど、守ってくれる?」
「どうした?」
「私――!? 新しい呪文覚えるから!」
アルテミスは懐から手帳を取り出すと、真剣な顔で読みはじめた。
「シロちゃん! アルテミスちゃんを守ろう!」
「ワウッ!」
《あるじさま》
《あるじ、あたしたちもレベルアップできそうなんだけど……、しちゃっていい?》
《……》
剣ちゃんと盾ちゃん……、あと、鎧ちゃんが、そう聞いてくる。
「もちろん」
ぼくはそう答えた。
剣と盾と鎧が、ぽうっと輝く。
「お? なんだなんだ? ひっさつくんが光ってるぞ? タートル師も?」
「アルテミスちゃんの腰のとこでもなんか光って……あっ! 下着! 勝負ちゃん!」
「わう?」
みんなのアイテムも光っている。
《あるじー! レベルアップしたわよー!》
《おまたせしました》
《……》
《ご主人、待たせたね》
《共に参らん》
《あたいと勝負すんのだれ? ごっつい斧男が、いっぱいいるけど。――どいつ!?》
「よし。呪文いくつも覚えたっ! ――って、どうしたの? みんな?」
アルテミスが、きょとんとしている。
アイテムたちが話していたことは、まるで聞こえていなかったようだ。
すごい集中力だね。
HPとMPが満タン。呪文も覚えた。スキルもまだ試してないけど、なにか身についたっぽい。そしてアイテムたちもレベルアップした。
さあ、やるぞー!
ぼくたちは、迷宮から溢れ出るモンスターに向かっていった。





