表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act1 転生して人生リスタートですが、やっぱり引きニートやってます
6/74

step.5「盾ちゃん、女の子にかわる」

 何日か磨き続けた、その甲斐あって――。

 ついに盾ちゃんが、ぴかぴかとなる日がきた。

 すべての部分のサビと曇りと、汚れが全部取れて――。

 一点の曇りもない、新品みたいな、きれいな盾として生まれ変わった。


「よし! できた!」

《ありがとうございますー》

《つ、つぎは、ぜ、絶対、あたしの番なんだかんね! ねえちょっと! わかってんの!》


 剣ちゃんが騒ぐ。でもぼくは聞いていなかった。

 なぜなら、磨き終えたばかりの盾ちゃんが、不思議な光に包まれていたからだ。

 全体がほんのりと暖かく光っている。


《あら~、なんだか~、わたしぃ~、生まれ変わったみたいな気分でぇ――》

「……盾ちゃん?」

《ちょっと! 盾ちゃん! どうしちゃったの! ねえしっかりして!》


 ぼくは盾ちゃんをしっかりと手に持った。

 光はますます強くなってゆく。そして盾ちゃんを覆い尽くして、はっきりと見えなくなるくらいに、強くなって――。

 唐突に、消えた。


「盾ちゃん? ……だいじょうぶ?」

《盾ちゃん! 盾ちゃん! しっかりして! 返事してーっ!》

《………》


 盾ちゃんは、返事をしない。

 ぼくの手の中にある盾ちゃんは……、なんだか、形が変わっていた。

 なんというか……。光に包まれる前よりも、〝高そう〟な感じの盾になっていた。でも前の面影デザインもきちんと残っていて……。同じ盾ちゃんなのだとわかる。


《心配いらないんじゃないかしら? オバちゃんのときにも、そーゆーの、あったような気がするねえ》

「え? そうなの?」


《あの。えっと。あるじさま? ……ちょっとわたしを、そこに置いていただけますか?》

「そこ? どこ? このへん?」


 ぼくは言われるまま、盾ちゃんをすこし離れた床に置いた。寝転んだらいっぱいになるような狭い部屋のなかだから、離すっていっても、すぐそこだけど。


《えーっと……、こうかな……、うん。たぶん。こう。……えいっ》


 その時、びっくりとすることが起こった。

 なんと、盾ちゃんの上に――女の子が現れたのだ。


 女の子は、ぷかぷかと空中に浮かんでいる。


《あらいやだー、やっぱり、できちゃったー》

《えっえっ!? なに!? なんなの!? なんで盾ちゃん、人間みたいになってるの!?》

「えっ!? なに!? 誰っ!?」


 ぼくは突然現れた女の子に、びっくりとしていた。〝人〟に対する苦手意識が急にわきあがってくる。

 だけど空中にぷかぷかと浮かぶその女の子は、ぼくに向かって、優しく微笑んでくるばかりで……ちっとも嫌な感じがしない。

 それどころか、ずっと前から知っているような感じさえするのだった。


「盾ちゃん……、なの?」

《はい。あるじさまー、盾、ですよー》


 空中に浮かぶ少女と、床に置いた盾の〝本体〟と、どちらも盾ちゃんなのだと、ぼくはようやく理解した。


 盾ちゃんは手を差し伸べてきた。ぼくの頬に触れにきたその手は、そのまま、すっとぼくの体を素通りしていってしまった。


《あら。触れないのですねー。残念っ》

《なんだか知らないけど。よかったじゃないかい。姿を出せると、なにがいいのか、オバちゃんにはわかんないけど。――でもこの子は、喜んでいるみたいだしねえ》

《ええ。わたしも。姿があったら、あるじさまに喜んでいただけるかなー、と思っていたんです。そしたら、なにか、できるようになって。……これって、ずっと手入れしていただいていたおかげでしょうか?》


 そうなんだろうか? そんなことって、あるものなんだろうか?


《そうじゃないかね。大事に使われた道具はレベルが上がるっていうしね。ほら。肉屋さんところの包丁。ちびっこくなるまで、何代も使われていて、だからたくさんレベル上がっているっていうよ》


 そうなんだ。そんなことあるんだ。

 ぼくはまだちょっと事態についていけてなかった。

 ひとつわかっているのは、目の前にいる綺麗な……、金色の髪をして……、そして恵まれた体つきの彼女が、盾ちゃんだということだ。

 だからなんの心配もいらないのだった。


《ちょっとちょっと! あたし! 置いてけぼりなんですけど! ひどいんですけど!》

「あ。ごめん」


 壁に立てかけられた剣ちゃんが、騒いでいる。


《こんどこそ本当に! あたしの番ですから! いっぱい研いでもらうんですから! そしたらあたしもレベルア――じゃなくて! もし! あんたがどううしても、あたしの姿を見たいって言うなら! レベルアップして見せてあげないこともないんだから!》

「うん見たい」

《ちょ――即答っ!?》


 ぼくは砥石を取り出した。

 〝研ぐ〟っていう方法は、よくわかんないけど。剣ちゃんの刃のところにあてて動かした。


《あっ――こら! 乱暴なのだめ! もっと優しく丁寧に扱いなさい! あっ――そこは! あっあっ!》


 剣ちゃんから扱いかたをレクチャーされて、ぼくは研いだ。

 また何日もかけて、入念に剣ちゃんを研いだ。


 そのあいだ盾ちゃんはずっと側にいてくれた。人間の姿を出しているのは、ずっとやっていると疲れてしまうそうなので、盾に戻ったり、また綺麗な女の子の姿になったり。


 ぼくはずっと剣ちゃんを研いでいたけど……。

 その盾ちゃんの胸元あたりに、目がいってしまって、剣ちゃんに怒られたりもした。

 だって仕方がないんだ。すごく大きいんだから。盾ちゃんのそこって。


 ちなみに剣ちゃんが怒っていたのは、そういうことではなくて、「もっと集中しろ!」というほう。

 ぼくが目をさまよわせていたのが、いけないらしかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

8tn33tr61r3l898af869heoclqwz_18ib_fh_m8_
2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ