step.49「救援」
ぼくたちが到着したとき、そこではゴブリンと冒険者たちとが戦っていた。
大部屋の中で奇襲を受けたらしく、部屋の隅に固まって、壁を背負うかたちで応戦している。
ゴブリンの数は10匹。でも部屋の隅で二方向が壁となっているために、一度に戦うのはせいぜい一匹か二匹。
「なんであいつら逃げないんだ?」
「後衛の子が怪我してる。突破できなかったら、あの子が助からない」
ロウガとアルテミスがそう言った。後衛の子の怪我とか、ぼくは気がつかなかった。
アルテミスすごい。
後衛の子は足に怪我をしているようだった。治療魔法を使える職の人がいないか、MP切れで魔法が使えないか、ポーションが切れたか、もともと持っていないかの、どれかなのだろう。
ポーションなんて高価なもの、ぼくらも以前は買えなかった。
そしてぼくらにはたまたまアルテミスがいて、彼女の職は賢者で――。攻撃魔法と治療魔法と、両方使える珍しい職だった。
ぼくたちは、かなり恵まれていたのだ。
「前衛の人たち! がんばって! ――いま助けるから!」
アルテミスが叫ぶ。
その声に気がついて、剣を振っていた赤い髪の女の子が、ゴブリンのたちの合間から、ぼくらに視線を向けて、うなずいてきた。
これでゴブリンに気づかれてしまった。でもこっちに注意が向かせることが狙いだ。
ゴブリンの数は十匹。でも普通のゴブリンだけで、メイジやシャーマンはいないみたい。
だったらなんとかなる。
「炎熱の魔神アーネストよ、灼熱の王姫よ――」
呪文の詠唱だ。これは大きい魔法のほう。
ぼくとロウガはその詠唱を背中で聞きながら、もう飛び出していた。
「――ギギッ!?」
ゴブリンの背中から斬りつける。
ロウガのキックが決まる。さすがに一撃とはいかない。だがゴブリンを怯ませることには成功した。
ぼくたちの周囲をゴブリンが取り囲む。
後ろで魔法詠唱をしているアルテミスを守るのが、ぼくら前衛の役目なんだけど――。
指揮をするシャーマンもメイジもいないから、頭の悪いゴブリンは目の前にいるぼくたちを闇雲に攻撃してくるだけ。
引きつけておくために、なにもしなくていい。ある意味、楽だ。
「アルテミスが魔法撃つまで! ふんばれ! レムル!」
「ロウガ……、も! 死んだりふり、なしで――ね」
ぼくが三匹。ロウガも三匹。いっぱいいっぱいだ。
《なに言ってんのふたりとも! 倒しちゃっても構わないのよねーっ!》
剣ちゃんの身に、光がはしる。
あれっ? と思ったときには、ぼくの振るった剣ちゃんは、ゴブリンの体を真っ二つにしていた。
えっえっ? あれれっ? なんでいま――? 一撃で――?
《ほら! あるじ! つぎがくる! 構える!》
べつなゴブリンが喚きながら突撃してくる。
ぼくは盾ちゃんを構えた。
《おまもりします! あるじさま!》
盾ちゃんを構えて体ごとぶつかっていくと――。
ゴブリンが馬車に撥ねられたみたいに、吹っ飛んだ。そしてやっぱり盾ちゃんも光ってる。
「シロちゃん! がんばって!」
一匹、二匹が、ノノたちのほうに向かっていた。
シロちゃんが応戦している。ノノも弓矢で攻撃している。ノノの弓は、最近は結構あたるようになってきた。
「――其は赤熱よりも赤きもの、其は白熱よりも猛きもの、いざ、業火ですべてを焼き尽くさん――!」
アルテミスの呪文が完成する。
ぼくたちは、ぱっと周囲に散った。
取り残されたゴブリンが、ぽかんと立ち尽くしている。
そこへ――。
「――ファイアボールっっっ!!」
アルテミスの魔法が放たれる。
ゴブリンたちのちょうど真ん中に命中して――爆発する。
「やったか!?」
ロウガが叫ぶ。
《――三匹残ってる!! あるじ!! ロウガ!!》
「おう!」
「うん!」
ぼくとロウガは、一匹ずつ、仕留めた。
生き残ったゴブリンも、無傷ではなくて、ファイアボールの爆発を食らってダメージを受けていたので、すぐに倒すことができた。
残ったもう一匹は、アルテミスの「炎弾! 炎弾! 炎弾っ! 炎弾っ!」っていう、連打で倒れた。
炎弾を撃てる杖は、普段はあんまり役に立たないんだけど――。連発すると、さすがに効く。
残ったゴブリンは、あっちのパーティと戦っている二匹だけだったけど――。
こちらが全滅したことで動揺したのか、逃げるのか戦うのか、はっきりしないでどっちつかずにしているうちに、あちらの前衛さん二人に倒されてしまった。
よし――! 片付いた!
よかった。誰も怪我してない。
――っと! いけない!
あっちには怪我をしている子がいるんだっけ。早く治療をしてあげないと――。
レムル君たち、無双してます。





