表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act1 転生して人生リスタートですが、やっぱり引きニートやってます
5/74

step.4「剣ちゃんと盾ちゃんと暮らす」

《もう! いつまで寝てんのよ! この寝ぼすけ!》

《まあまあ。剣ちゃん。昨夜も遅くまで、わたしを磨いてくれていたんですからー、お疲れなんですよー、あるじさまはー》

《盾ちゃんだけずるい! あ、あたしだってねっ!》

《ふふふっ……。それは自分も磨いて欲しかったっていうこと?》

《べ――べつに! 手入れしてほしいだなんて、言ってないし!》

《しかしあんたたち、いつもいつも言い合いばかりで……飽きないねえ。まあ賑やかになったのは、オバちゃん、楽しいけどね》


 みんなの話し声が聞こえてきて、ぼくはむくりと起き上がった。

 石の床に、薄い寝床。

 起きたときに体は痛くなるけど、心のほうは、とても幸せだった。


 三人が話をしている。

 その話し声で目が覚めるなんて……、最高!


 さっそく、ぼろ切れを取り出した。

 昨日、寝落ちするまでにやっていた作業の続きにとりかかる。


 磨き砂と水を、布にちょっと付けて――それで盾ちゃんの表面をごしごしと擦る。

 磨いてゆく。

 ずっと放置されていた盾ちゃんは、ところどころサビが浮いている。ごしごし磨くとちょっとずつ消えてゆく。


《あーっ! また盾ちゃんのほう! 盾ちゃんばかり! あんた! なんなの! なんで盾ちゃんばっかひいきすんの! 盾ちゃんのこと好きなの!?》


 壁に立てかけた剣ちゃんが騒いでいる。


「うん。好きだよ」

《あらあら、まあまあ――どうしましょう》

《えーっ!? ちょ――!? それ本気でっ――》

「剣ちゃんも好きだよ」

《ばっ――ばかっ! そんなこと言えなんて、言ってなーい!》

「オバちゃんも大好きだよ」

《はいはい。オバちゃんもぼうやのこと、大好きだよ》


《あ――あたしだってね? 手入れしてもらいたいんだからね。――いえべつに! あたしがしてもらいたいってわけじゃなくって! あんたがどうしても手入れしたいっていうなら、させてあげてもいいって思ってんの!》

「でも剣ちゃん。磨くのは違うって、この前怒って――」

《当然でしょ。剣を磨いて、どーすんのよ。剣の手入れはね――研ぐの!》

「研ぐには、砥石? とかいうのが、いるんだよね?」

《そうよ》

「あれ、けっこう高いんだ」

《高いって、なんのこと? そんなの、どっかから持ってきなさいよ。あるところには置いてあるでしょ?》

「何日か待ってくれないかな……。そしたら葡萄酒を売って、砥石も手に入るから……」


 オバちゃんもそうなんだけど、〝アイテム〟たちは、「お金」というものを一向に理解してくれないのだった。

 いくら説明してもダメ。

 なんか根本的に考えかたが違っていて、わかんないっぽい。


《うん? なんかオバちゃん、期待されているのかい? でもさすがにオバちゃん疲れちゃったよ。いきなりたくさんは出せないよ》


 剣ちゃんのほうの手入れは、砥石が手に入るまではできないので、ぼくは盾ちゃんをせっせと磨いた。

 酒場に葡萄酒を届ける日課をやる以外の時間は、ずっと磨き続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

8tn33tr61r3l898af869heoclqwz_18ib_fh_m8_
2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ