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ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act5 迷宮第二層へ

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step.32「超大金」

「あ。いらっしゃい! レムルさんたちにー、報奨金が出てますよー」


 冒険者ギルドに顔を出すと、いつもニコニコ営業スマイルのエミリィさんが、手招きして、ぼくたちを呼んだ。


 冒険者ギルドに窓口は二つあって、なんでか、もう片方の窓口ばかり列が長く伸びている。混んでいるのはエリザさんっていうほうの窓口で、エミリィさんのほうはいつも空いている。

 いっぺん理由を聞いてみたら、なんか別人みたいな昏い顔になって、理由を話してくれた。なんでもエリザさんの担当のなかから、大御所の冒険者さんが出たらしく、それで験担ぎ? とかいう理由で、みんな、エリザさんに担当してもらいたがるのだそうだ。


 ぼくたちは、そんなのまったく気にしていないので、いつも窓口の空いてるほうのエミリィさんのとこに行く。

 そうするとエミリィさんはニコニコ笑顔で応対してくれる。


「おい報奨金だってよ」

「報奨金ですって」

「報奨金ですかー。楽しみですねー。いくらですかねー」

《ほうしょうきん? ……って、なに?》

《なにかいいことのようらしいですよ》


 ロウガには肘で小突かれ、アルテミスとノノには服の裾をつかまえられ、剣ちゃんと盾ちゃんには不思議がられつつ、ぼくたちは窓口に立った。


「まずはギルドから。1000Gほど」

「ちょ――ちょっ! ちょっと待ってください。そんな大金。なんでもらえるんですか? 私たち?」


 アルテミスが代表して、ぼくたちの気持ちを代弁する。


「ああ。言っていませんでしたね。先日の〝リセットボタン〟発見の功労に対する関する報奨金です」

「え? あのボタンの?」

「別のギルドの支部でも、とあるダンジョンの、とある階にて、似たようなボタンが発見されまして――。その効果はやはり〝リセット〟ということが確認されました」

「それで……、1000Gもの大金が……」


「ふふっ。1000Gなんて、ぜんぜん大金じゃないですよー。いえほんと。もっと出せって上に掛け合ったんですけどね。〝そのパーティは単に発見しただけじゃないか〟なんて、ふざけたことを言ってきましてね。上が。もし私がエリザ先輩も追い抜かして、偉くなってトップになったら、あんなセクハラするしか能のない連中、全員、床掃除をさせときますので――。今回は些少ですが、とりあえずお納めください」


 エミリィさんは笑顔でなんかコワいことを言っている。エミリィさん、たまに呪詛を吐いていてコワい。


 1000Gの詰まった大袋が出てくる。エミリィさんは大金じゃないと言っていたけど。

 ぼくらにとっては、1000Gは大金だ。

 ぼくたち4人は70Gあれば1日暮らしていける。つまり1000Gは、2週間くらい暮らしていけるぐらいの大金なわけだ。


 1000Gの大袋を、皆で順番に持つ。ぼくのところにも一瞬だけあったけど、かしてかして、と手が伸びてきて、いまは他の人のところにある。

 ずしりと重い。


 初日の冒険で一階のマップを全制覇したときの報酬も1000Gだった。

 こんな大金を手にしたのは、二度目だ。

 冒険者ってすごい。すごいすごい。


 大金の大袋を手にして、ニコニコまたは、ニマニマまたは、えへらえへらまたは、呆然としているぼくたちを、エミリィさんは微笑みを浮かべて見ている。


 ギルドの受付の人なら、きっと、何万Gっていうお金を扱い慣れているんだろうなー。

 1000Gくらいで騒いでいるぼくらが、おかしく見えているに違いない。


「おかしいだなんて、思っていませんよー。初々しいなぁ。って思って見ているだけです。愛でてます」


 愛でられてしまった。ていうか。ギルドのハイレベルな受付嬢には、考えていることまでお見通しのようだった。


「ところで1000Gで感動されているところ、恐縮なのですが……。あと報奨金はもう一つありまして」


「え?」

「へ?」

「ええっ?」

「……?」


 エミリィさんの言葉に、ぼくたちは首を傾げた。


「とある大物冒険者さんが、今回の発見に、たいへん喜ばれまして……。特別に個人的に報奨金を送ってくれています。……受け取られますか?」


 ぼくたちは顔を見合わせた。〝とある大物冒険者〟――というのは誰だかしらないけど。

 もらえるお金なら……、もらうよね?


 と、皆も同じ考えのようで、こくこく、こくこくと、3つのうなずきが返ってくる。


「ではこちら10000Gの受取証にサインをー。さすがにちょっと現金で渡す量でもないですから、銀行サービスのほうに入れることになります。取り出し時の10%の手数料は、特例で免除になりますからね」


 受取証、とかいう紙に書かれた数字を見る。「0」がたくさんついている。

 皆で一緒に指差しながら、ゼロの数を数えてゆく。

 最近、ぼくも数字は読めるようになった。皆と一緒に数えられる。


「いち、にい、さん、しい、……いちまん。……10000G!」


 みんなで数えて、みんなでびっくりする。


 数字だけだから、ぜんぜんピンとこないんだけど……。

 見たこともない大金だ。


 さっき、1000Gを手にして大喜びしていたぼくらは、急にその10倍もの大金を手にすることになったんだけど。


 受取証にサインをする。

 なんかみんなに押し出される形で、ぼくがサインすることになった。

 震える手で、名前を書きこむ。


 自分の名前だけは……、最近、なんとか書けるようになった。字を書いているというよりも、図形を丸ごと覚えただけだけど。


「はい。それでは10000Gは、レムルさんたちのものになりました。使い道は、よーく考えて、決めるといいですよ。……それでもし、使い道で悩むようなら、お姉さんが、いくらでも相談に乗りますよ?」


 にこっ。

 エミリィさんが「お姉さん」になった。


 ぼくたちは、ふらふらとする足取りで、ギルドをあとにした。

 窓口を立ち去るときに、ふと、エミリィさんのつぶやきが聞こえてきた。


「まったくオリオンさんたら……、こんな子たちにあんな大金……、金銭感覚麻痺してるのかしら……。頭涌いてるんじゃないの……」


 聞いたの、ぼくだけかもしれないけど、そんなふうに言っていた。

 うん。やっぱりちょっと、10000Gって、大金だよねえ。

 ……どうしよう。これ?

1G=100円くらい換算レートなので……。

彼らの手にした10000Gは、百万円です。


ちなみに物価は安めなので、冒険者4人が70G=7000円で、宿代+食費+晩酌、ぐらいは出て暮らせちゃいます。

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●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

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2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
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