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ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act5 迷宮第二層へ

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step.29「さっそく宝箱」

「さあ。ここから先が未踏破領域よ」


 ぼくたちは迷宮第二層にいた。

 ここまで通ってきた道が、マップのあるところ。ここから先はマップのないところ。


 マップにもある通り、下に下りる階段が、通路の脇に見えている。


「ここに階段があったせいで、誰もこの先に行かなかったわけね」


 多くの冒険者は、三階に直行してゆくみたい。

 冒険者のしおりにマップが載っているのがその階まで。宝箱の中身は階が増えてゆくしたがって良くなってゆく。だから初級冒険者は三階を目指す。

 でもぼくらは初級者でない初心者だから、この先に広がる二階の未踏破領域に用がある。


「二階の地図は、一階よりも高く売れるらしいわよ」


 アルテミスが言う。


 ぼくはマッパー。ていうか、盾ちゃんがマッパー。

 このあいだマップを転写したときに気づいたんだけど。それができるなら、べつにぼくが書かなくてもいいんだよね。盾ちゃんに書いてもらえばよかったわけだ。


 ぼくたちは初級者でさえない初心者なので、地図だって、大事な収入源。


「マップおねがいね。レムル」

「おねがいしまーす」

「たのんだぞー」


《頼まれましたわ》


 盾ちゃんが答える。でもみんなには聞こえていない。ちょっとおかしい。

 盾ちゃんとみんなが話せたらいいのに。


「笑ってる? レムル」

「ここから先って。入るの。わたしたちがはじめてなんですよね……」

「おまえ。肝っ玉、太てえなぁ。俺なんか怖いぞー」

「死んだふりしていてもいいわよ。置いてくから」

「うちのパーティの女がいちばん怖ええー」


 みんなも笑った。

 ぼくが笑っていたのは違う理由だったけど。

 みんなも緊張が解けてくれてよかった。


《なんか斬っていいやつ出てくるかしら? 楽しみねっ! あるじ!》


 剣ちゃんは楽しみにしている。

 このあいだ盗賊の人の腕を斬っちゃったときも上機嫌だったけど。今日も上機嫌。


 剣ちゃんはたぶん、斬れればなんでもいい感じ。

 たとえばぼくが人殺しの殺人鬼とかでも、ニコニコしているんじゃないかと思う。

 そうならないように、剣ちゃんが斬っちゃいけないものを斬らないように、ぼくがしっかりしていないとならないと思う。


《さあ行きましょう。あるじさま。お守りします》


「……行く、よ」

「行きましょう!」

「はーい!」

「おー!」


 ぼくたちは、二階の未踏破領域に踏みこんだ。


    ◇


「うおーっ! 宝箱ーっ! はっけーん!」

「あっばか! ロウガ! いきなり入ったら!」


 最初に見つけた部屋には、開けられていない宝箱があった。

 ロウガが飛びこんじゃって、そしたら床から、じゃきーん! と、何本もの槍が飛び出してきて――。


「ぐああああぁ!」


 ロウガがばたりと倒れた。


「ロウガ!」

「ロウガさん!」


 アルテミスとノノが駆け寄る。

 ぼくはドアを閉じてから、近づいた。部屋の中に注意を向けて、皆の後ろを守っている。


「ロウガ! しっかりして! ちょっと! どこやられたの!? ケガはどこ!?」「ロウガさん! 死んじゃだめです! 死んじゃやだ! うわあぁ――ん!」


 アルテミスとノノは、ロウガを助け起こしている。


《あたった? あたった?》《くしざしー?》《ぷすってなったー?》《なった? なったー?》

《だめよー。ロウガを突き刺しちゃー》


 床の仕掛け罠さんたちを、剣ちゃんがたしなめている。罠さんたちは、とても楽しそう。

 このあいだも思ったけど、罠さんたちって、すごく楽しそうだよねー。


「ロウガ! ロウガ! ケガはどこ!? ナナ! ポーション! ポーション!」

「はっ――はいっ!」

「あ。ポーションいらないから」


 アルテミスの膝の上で揺すられていたロウガは、ぱっちりと目を開いた。


「俺。感激だぜ。俺って人気者だったんだな。おまえらそんなに俺が好きなら、俺のカノジョにしてやってもいい――痛っ! 痛てええええっ!! なにすんだーっ!」


 最後の悲鳴は、ロウガの頭をアルテミスが叩いたからだ。


「ケガしてないなら倒れんなーっ!!」

「ロウガさん! ロウガさん生きてた!! よかった! うわ~あぁぁん!」


「奥義・死んだふり回避だ!」

「そこ! 死んだふり必要!? いらないよね!? 普通に避ければいいだけだよね!?」

「ばか。必要だ。うちの師匠ぐらいになるとな、本当に当たったのを〝なかったこと〟にできるんだぞ? すげえんだぞ?」


 へー。そんなことできるんだー。すごいなー。


「すごくもないロウガは、いまのべつに当たってもいなかったわよね?」

「おまえさ。心配したなら心配したって言っていいんだぞ? そしたら俺、おまえの胸で、その巨乳で泣いてやるから」

「なに言ってるのかまるで意味わかんない」


《ざんねーん》《ざんねんだねー》《つぎをまとうー》《まとうねー》


 床の槍が、出てきたときと同じ速度で、しゃきん、と引っこんだ。

 槍が引っこんだ床は、他の床とあまり違いがあるように見えない。小さな穴が並んでいるが、遠くて薄暗かったら、見分けられるかどうか……。


 でも串刺し床は、どんなものかわかったから、次からは気をつけよう。


 ちなみにぼくは、槍がロウガに刺さっていないことに、最初から気がついていた。

 だからアルテミスやノノみたいに慌てたりしなかった。

 彼女たちに言えばよかったんだけど……。言うの、苦手だから……。


 部屋にあるのは、宝箱とテーブルと燭台。

 壁に額縁はかかっているけど、絵は入っていなくて、キャンバス? とかいう布地が張られているだけ。


 この部屋はおそらくここ一週間かそこらで新しく生まれたもので、部屋に置かれているものは、誰かが置いたわけではなく、発生したときからこの形であったんだ――とか思うと、なんだか不思議な感じがする。


「さーて♪ 宝箱っ♪ 宝箱っ♪」


 ロウガが歌ってる。スキップしてる。


「そうやって宝箱に駆け寄って串刺しになっちゃえばいいのよ」

「ばーか。この俺様が二度同じ手に引っかかるかよ。――レムル。他に罠はないのか?」


 一回引っかかれば充分だと思うんだけど。


「ほかに罠のひとー、いますかー?」


 ぼくは聞いてみた。

 そして待つ。待ってみる……。待ってみた……。


《どくばりー》


 宝箱のところから、返事が返ってきた。


「罠……、宝箱の、ところまで……、ない。宝箱の罠……、は、どくばり……」


 ぼくはみんなにそう報告した。


「すげえ!? 手も触れずに調べやがった!?」

「なんか……、いつ見てもすごいわよね。レムルのそれ……。どうやっているのか、わからないけど……」

「レムルさんすごーい! すごいすごーい!」


 みんなから褒められる。


「レムルは手を触れずに宝箱を調べる技を覚えた! レムルはレベルがあがった!」


 いや。あがってないから。

 遠くの宝箱さんから、たまたま返事が返ってきただけだから。


 宝箱の罠は毒針だったので、例によって、あの方法で開ける。

 皆で宝箱の後ろ側に回って、箱を開ける。


《びよ~ん!》


 飛び出していった毒針は、空中をぴょーんと飛んでいって……。

 串刺し床の上に、ぽとりと落ちた。

 じゃっきん! と、また槍が飛び出してくる。


《なったー?》《くしざしー?》《なったなったー?》

《はずれだよー。ぼく。どくばりー》

《どくばりをー》《くしざしー》

《くしざしにー、されたー》


 罠さんたちは、楽しそう。


 さて。宝箱の中身は……。


「あっ――!? これってもしかして!?」


 宝箱に入っていたのは、紙をくるくると丸めたもの。

 蝋で封印してあった巻物を、アルテミスは広げて――。


「やっぱり! 魔法のスクロールだったーっ!?」

「スクロール? それ魔法のなにかか?」

「ねー、なにー? なにー?」

「………」


 アルテミスの返事はない。ただの夢中の魔法使いのようだ。

 魔法少女は、ぺたんと床の上に座りこんで、巻物を読みふけっている。


「毒の霧……? 取得Lv1。必要(ジョブ):元素系魔法または生成系魔法。必要ステータス、知性:17。……ふむふむ」


 皆で横から覗きこんでいるが、ぼくらにはなんて書いてあるのかわからない。

 そもそもぼくは文字が読めないわけだけど。普通の街で見かける文字とは、違う文字で書かれていることだけはわかる。

 きっと魔法使いだけが読める特別な文字なんだろう。


「私……、これ、覚えられるかも……?」

「え? そうなん?」

「よかったねー! アルテミスちゃん!」

「ありがとう! ……はぁ。〝賢者〟って、覚えられる呪文は多いんだけど。でもかわりに自動で覚えられる呪文は少なくて……。助かったわー」

「おまえのそれ、ほんと、〝賢者〟でなくて〝プチ賢者〟だなー」

「……やめてくれない? ……やわらか拳士」

「おまえその〝やわらか拳士〟っていうのやめろよなー。俺だってすこしは傷つくんだぜ?」

「〝プチ賢者〟って言って私が傷つくことをあんたが理解したなら、やめてあげてもいい。――やわらか拳士」


「ところでよ? そのスクロール? とかゆーの? 使っちまうのもったいなくね? ――それって、売ったらすげえ高いんじゃねえの?」


 ロウガの言葉に、アルテミスが、ぎろり、と目を向ける。


「じゃあロウガ。拳士用の武器とか防具とか出たら、あなた、売るわけね?」

「ばかを言えー。俺が使うに決まってんだろ」

「じゃあ、決まりよね」

「あー、そっかー……。そうなるのか」


 わかってなかったんだね。ロウガ。

 自分の言ってることが、自分の身に返ってきたら、どうなるのかって、ロウガはいつも考えてないっぽい。

 そのへんがすごくロウガっぽい。


「ずっりー、ずっりー。おまえだけ、ずるいなぁ」

「ロウガさん。おめでとー、って言ってあげなきゃだめですよぅ」


 これがロウガとノノの違うところ。

 ノノは人の幸運を素直に「よかったですぅ」と喜べる娘。

 ロウガは「ずっりー」と言うほう。ただし心の中で思うだけでなくて、口に出して言ってしまえる漢のほう。


「ぜんぜんずるくなんてないわよ。運よ。運よ」

「じゃあ、おまえだけ運がよくて、ずっりー」

「なら日頃の行いで」

「??? 日頃の行いだったら、俺が当たってるはずだろ?」

「忘れてたわ……。あんたはそういうやつだったわよね」

「はっはっは。ようやくわかったか」

「ちがう。あんたの日頃の行いが良いっていう都市伝説じゃなくて……。まあいいわ」


 アルテミスは眉間を揉んでいる。眉間に寄ったしわしわを伸ばしている。

 ロウガは「勝ぁーちぃー」っていう顔をしている。ロウガは幸せそうでいいなぁ。


「レムルはどう思う?」

「レムルさんはどう思います?」


 アルテミスとノノの二人に聞かれた。

 ぼくはいきなり巻きこまれてしまった。


「えと……、その……、ぼくは……」


 しろどもどろになっていても、みんなは僕の答えを待ってくれている。トモダチっていいなぁ。


「アルテミス……、おめでと」

「ありがとう」


 アルテミスは、にっこりと笑った。


    ◇


 たらりらったー♪ らったー♪


 ぼくたちは宝箱から「魔法のスクロール」を手に入れた!

 アルテミスがあたらしい呪文を覚えた!

次の更新は5/27。

これから3日ごとの更新となりまーす。

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●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

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2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
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