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ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双  作者: 新木伸
Lv1編 Act5 迷宮第二層へ

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step.28「冒険にむけての作戦会議」

新章スタートです。迷宮二階に向かいます。

 いつもの昼すぎ。いつもの酒場。


 いつもこのぐらいの時間にここに集まるのがぼくらの日課となっていた。


「お。来た来た。ようやく来た。どうだったー」


 信じられないぐらいおいしいご飯にパクついていたぼくは、ロウガの声に顔を上げた。

 アルテミスとノノの二人が店に入ってきた。


「それAランチ? マスター。私にも同じものを」

「わたしもわたしもー」


 二人はぼくらの向かいに座ると、マスターにそう注文を出した。

 昼間のこの時間から店に詰めているのは、ぼくらみたいな冒険者ぐらいなものだろう。常連のお客さんたちも、みんな昼間は仕事がある。


 ぼくらも仕事といえば仕事だけど。

 いま次の冒険に向けての情報収集中。

 このあいだのことがあってから、みんな、前向きに冒険に取り組んでくれるようになった。

 皆と冒険が続けられて、ぼくはとても嬉しい。


 店は半分開いているような閉まっているような、そんな状態。

 店はいまマスター一人。看板娘の女の子も、夜にならないと店に出てこない。

 マスターは夜の営業のための料理の準備――〝仕込み〟をやりながら、ぼくらのご飯をついでに作ってくれている。


「ギルドに寄ってきたんだろ? どうだった?」


 ロウガが聞く。

 アルテミスとノノの二人は、今日はギルドに寄ってくると言っていた。だからすこし遅くなったわけだ。


「混んでたわよ」

「そーゆー意味ではなくてだな」

「ああ。……ほら。レムルさん。口許にパンくず、ついてますよー」


 ノノの手が伸びてきて、パンくずを取っていって――ぱくっと食べちゃった。


「俺も俺も、ほら、ここんとこにパンくず」

「自分で取ってくださいねー」


 ロウガがアピールしているが、ノノは取ってあげない。


「新しいしおりはまだ印刷されてなかったけど。地図の写しはもらってきたわよ。――はい。これがいまの地下二階」

「お」


 テーブルの皿を動かして、まんなかにスペースを作る。

 そこに一枚のマップが置かれる。


「半分ぐらいしかねえぞ」

「半分くらいしかないのよ」

「半分くらいしかないんですよー」

「はんぶん……だ」


《半分だけですわねえ》

《なんで半分だけなの?》


 ロウガ、アルテミス、ノノ、ぼく。そして盾ちゃん剣ちゃんの順で、同じようなコメントをする。


 ぼくはギルドでもらえる地図が半分だけの理由を考えてみた。


「まだ……、みんな……、行って、ない?」


 考えた理由を言ってみた。


「はい。正解」


 アルテミスがそう言ってくれた。

 やった。正解だった。


《あるじ、すごーい!》

《さすがです。あるじさま》


「俺だってわかってたもんなー! そんなのわかるぜ。当然だろ?」


 ぼくはマップを手に持った。

 これ、盾ちゃんに書き写しておいたほうが、いいかな?


 と思って、盾ちゃんの裏側に地図を置いてみたら――。


《こうですか? あるじさま?》


 盾ちゃんの裏側に、地図と同じ図が浮かんだ。

 あー。盾ちゃん。すごーい。書き写さなくてもよくなった。


「あれ? もう写しちゃったんですか? 早いですねー」


 ノノが盾ちゃんを覗きこんできて、そう言う。

 ぼくは慌てて、こくこくこく、とうなずいた。


 剣ちゃんや盾ちゃんたちが、不思議な剣と盾だということは、みんなにはまだ話していない。盾ちゃんの裏に書いたマップが、スクロールと拡縮が自在――なんてことも、話していない。

 べつに秘密にしているわけじゃないけれど。

 ぼくの場合、話して伝えることが、まず大変だし。あと〝アイテム〟と話せるっていうことは……。言っても信じてもらえないんじゃないだろうか。


「エミリィさんが言うには、私たちみたいなLv1の新米パーティは、一階を回るのがセオリーだって。モンスターが大絶滅しちゃっているけど。すこしずつはリポップしているから、運が良ければ出会えるので、そういうのを狩る組が多いみたい。一度に何匹もと戦うこともないし。安全第一なら、そうするのが賢明だって」

「でもよ? 部屋の宝箱は、ぜんぶ開けられちまっているわけだろ? ここの二階の、マップにない地域。ここはまだ誰も行っていないわけだから、お宝、たくさんあるんじゃねえの?」


「それはそうなのよねぇ……。ああ。まだ見ぬ巻物スクロール……。新しい呪文スペル……」

「普通には生えていないすごい薬草とか……」

「拳士用の武器とか防具とか……。鉄のツメとか、鉢金だとか……」


 みんな。宝箱が大好きっぽい。

 ぼくも宝箱さんは好きだけど。

 のんびりとした、あの感じがいいんだよねー。


《みんなの〝好き〟は、それ、あるじの〝好き〟とは違うと思うわよ》


 剣ちゃん姿を現して、女の子の姿でテーブルの横に立つ。

 うん。剣ちゃんも好きだよ。


《ありがとー。でもあたしがあるじのことが好きかどうかは、教えたげなーい》

《わたしは大好きですよー。あるじさまのこと》


 盾ちゃんも出てくる。


《ああっ! ずるい! 盾ちゃん! ひとりだけ!》


「二階に行くなら、ポーションを一人二つずつは持っておきたいのよね。念のため」


 ポーションは薬草の成分を濃縮したもの。

 戦闘が終わってからなら、薬草でゆっくり治せばいいのだけど、戦闘中の短い時間に治すならポーションが必要だ。フラスコの栓を抜いてぐびって飲んでもいいし、傷に直接かけてもいい。

 Lvの高い冒険者さんたちが、効果の高いポーションの小瓶を、ベルトの周囲にいくつもくくりつけているのを見たことがある。


 冒険に向けての相談が進む。

 今日はポーションの用意をして、そして明日、朝早くからダンジョンに潜るという話でまとまった。


 目指すは――、二階!

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●書籍情報!

「ぼくは人間嫌いのままでいい。剣ちゃん盾ちゃんに助けられて異世界無双」 2巻

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2019/03/25 2巻発売です! 完結できました!
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